クリエイターズSQ.【インタビュー 第2回】伊藤智彦×凸ノ高秀

第1回【アニメ業界編】
アニメ監督
伊藤智彦
『ソードアート・オンライン』『僕だけがいない街』
このコーナーは
我々の興味の中心でありながら、意外と実態を知らないエンタテインメント業界。本コーナーでは業界で活躍するクリエイターたちを取材し、その仕事の実情を探って行く!今号では、現在最も勢いのあるアニメ監督の一人・伊藤智彦監督が登場! 全三回に渡って「アニメ監督の仕事」についてご教示頂く!
これまで知らなかった監督の苦悩!
今度は自分が「まぁまぁ」宥める側か…

――伊藤監督は『世紀末オカルト学院』(以下『オカルト学院』)で監督デビューされましたが、演出・助監督時代に比べていかがでしたか?

伊藤 完全に五里霧中をさ迷っていた感じです。各話演出と監督の違いはいくつかあるのですが、まず各話演出は本読み(脚本の打ち合わせ)に出ることがないんです。本読みで監督がいかに立ち回るか、完全に未知の領域でした。シリーズ構成、各話ライターと脚本を精査するのですが、ついつい今までの感覚で細かいことばかり言ってしまうんですよ。すると「監督はもっと全体的なジャッジをしてくれ。あとは俺たち脚本陣が何とかするから。でも、どうせコンテで変えるんだろ?」とかフォローをいただいたりして(笑)、割と皆さん優しかったですね。それから、音響現場での仕切りも大きかったです。監督として入り、音響監督というプロフェッショナルとどう作っていくか。各話演出の時は「ここ違いますよ!」とか好き勝手言っては監督に「まぁまぁ」と宥められていたのですが、今度は自分が「まぁまぁ」と言う側なのかと(笑)。あとは音楽の付け方も意識が変わりましたね。「1話だけに使うならこの曲がベストだけれど、シリーズ全体を考えると今回は外そう」とか。これは監督をやらないと分からなかった感覚です。

――監督の皆さんは、デビュー作からそういった経験を積まれていくのですね。

伊藤 そうですね。絵コンテから完成までの筋道は各話演出の頃から知っていたのですが、やったことのない領分については、誰も教えてくれない。監督になって、自分で考えて探していくことになります。

――それは助監督でも分からないことでしょうか?

伊藤 そうですね。助監督時代も本読みには出ていなかったし、若干、監督より責任感が薄いところもあったんですよ。「監督がいるから自分は無茶を言おう」「監督はそれをまぁまぁと宥める係」とか勝手に思ったりして。

――そこから監督としてのキャリアを積まれ、今現在の最新監督作は『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』(以下『劇場版SAO』)ですが、『オカルト学院』から変わったものはありますか?

伊藤 できるだけ早い内から作品のビジョンを周囲に提示して、皆に理解してもらうことが企画の肝だと思うようになりました。『オカルト学院』の頃は自分が面白いと思っていたことを、なかなか皆に伝え切れなかった。「俺は超面白いと思うのに、何で皆、不思議な顔をするんだろう」と。その時『オカルト学院』のシリーズ構成・水上清資さんが「やりたいことを3つだけ教えて欲しい。3つ以上は言うな」と助言して下さったんです。そこから監督の際は「この作品は、これを実現できれば勝ちである」ということを、いかに明確に共有するか戦略を考えるようになりましたね。

――ちなみに『劇場版SAO』で挙げた3つは何でしたか?

伊藤 TVシリーズから引き続きの部分が多いのですが、「主人公とヒロインの恋愛」「主人公は超強い」「ARの新しいゲーム感」ですね。

<次号へ続く>

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