――上京されて、あっという間に週刊連載作家になられたんですね。
●矢吹 そうですね。結局『ヒカルの碁』のアシスタントも2か月くらいだったので基本的なことを身につける時間がほとんどないまま連載が始まって。新しいやり方を見つけては取り入れていく、という感じの試行錯誤でやってきました。
――何となく「こう描けばいいんだ」という手応えを感じたのはいつごろからですか。
●矢吹 『To LOVEる-とらぶる-』ぐらいですかね。
――えっ、そんなに経ってからですか。
●矢吹 『邪馬台幻想記』のときも『BLACK CAT』のときも連載中は、その週の原稿を上げることにいっぱいいっぱいで。『To LOVEる-とらぶる-』で、ちょっと冷静になれたというか、自分のものになったという感じです。やっと自分のそれまでのことを振り返る余裕も出てきたし。
――読者としては初期の頃からすでに出来上がっていたイメージだったので驚きました。デビューから振り返ってみて、一番大変だった時期というのはいつですか?
●矢吹 『BLACK CAT』の連載2、3年目がきつかった気がしますね。
――なぜですか?
●矢吹 長期連載というのを経験したことがなかったので……。アシスタントをやりながら読み切りをたくさん発表してきたとか、作品の作り方を学んでから始めていたらまた違っていたとは思うんですが。もう毎週ライブ的なノリでやっていましたね。
――その大変な時期というのは、どうやって乗り越えていらっしゃったんですか。
●矢吹 どうやってたんだろう。そのときは、何も考えてなかったですね。原稿を上げることしか。でもファンレターとかキャラへのプレゼントとかが届くことがすごくうれしかったです。そういうことに支えられつつ、たまに新年会でほかの作家さんに会ったりして、自分が業界にいることを認識しつつ頑張んなきゃみたいな。ふだんはずっと家にいるので、本当に自分の作品が世の中に出ているんだろうかと思いながら描いてましたから(笑)。
締め切り日にはスピードのある曲をかける!
――趣味についても伺いたいのですが。伊集院光さんの写真が飾ってありますね。
●矢吹 アシスタントさんたちもみんな好きなんです。作画中は伊集院さんのラジオをよく聞いてますね。やっぱり話の組み立て方とか、すごくうまいですよね。
――お仕事中は、ラジオをつけていらっしゃるんですか。
●矢吹 最近は音楽も多いです。ゲームのサントラとか、アニメのサントラとか。サントラ系は、仕事がはかどるんですよ。
――どうしてですかね。
●矢吹 何ででしょうね。歌詞がない分、リズムにのってやれるというか。テンションの高いやつは、特にはかどります。スピード感のある曲は作画のスピードも上がります。締め切り日とか追い込みのときは、あんまりのんびりした曲は流さないようにしています(笑)。
――自分を奮い立たせるような曲を。
●矢吹 そうそう。アシスタントにも「もっと元気出る曲を流してください!」って言われます(笑)。
――アニメや特撮のフィギュアも、たくさん飾ってありますね。
●矢吹 最近『ガンダム00』にはまり出しまして。あと『ゴジラ』『ガメラ』は好きですね。
でも一番は『ドラゴンボール』かな。やっぱりずっと好きですね。
――どういうところがお好きなんですか。
●矢吹 ”少年漫画“って感じなんですよね、自分の中の。それに今観たり読んだりすると子供心に戻れるんです。わりと『ゴジラ』もそれに近いような感じです。子供のころ好きだったものを今見ると、あのころの気分に戻って癒されるというのがある気がします。
――『ゴジラ』は映像を主に観られるんですか。
●矢吹 そうですね。あとはフィギュアをいろんな角度から見たり、光にかざしてみたり、夜景をバックにしてみたり(笑)。
――休憩時間に。
●矢吹 仕事の合間とか、ちょっと息抜きのときとかにいじってますね。あと僕の机にあるガンダムのフィギュアは、アシスタントが原稿を持ってくるたびに、ポーズとか武装が変わってるという(笑)。
――みなさん、「先生、また変えてる……」って思っているんでしょうか(笑)。
さりげなく、あのキャラが出ちゃうかもしれない!?
――『To LOVEる-とらぶる-』のときは漫画用に作られた脚本を元に描かれていましたが、『迷い猫オーバーラン!』は小説が原作ですよね。どんなやり方をされているのですか。
●矢吹 原作の松さんが原作ともアニメとも違う、漫画用に、僕のやりたいことも含めたオリジナルの脚本を作ってくださるんですよ。
――それはすごいですね。小説をなぞるというよりは、同じ世界観とキャラクターで、漫画ではまた違うお話が楽しめるという。
●矢吹 そうですね。小説のエピソードも使ったり、オリジナルだったり。それに松さんには、色々好きにやっても構わないと言われているので、そこは僕も楽しんで、いろいろ試していこうかなと思っているんですけど。ネームにするときに自分の演出も入れていこうかと思っています。
――どんなアレンジを考えていらっしゃいますか?
●矢吹 もしかすると、あのキャラとかが……出てくる可能性はありますね。
――ええっ!もしかしてあの作品の「あの子」が『迷い猫』にも出ちゃうかもしれないということですか?
●矢吹 藤子・F・不二雄先生の作品で、全部がつながっている、というああいう路線が好きなんですよ。『ドラえもん』の空にオバQが飛んでいる、とか。
――パー子が『ドラえもん』の星野スミレだったり。
●矢吹 そうそう!そういう微妙にリンクする感じというのが大好きなので、機会があればやってみたいです。もちろん原作の世界を壊さない程度にですが。
――気づく人は気づいちゃう、というような。
●矢吹 そうそう、さりげなく。
――最後に「SQ.」読者に、メッセージをお願いします。
●矢吹 『迷い猫』の小説のファンの方もいると思うし、『To LOVEる-とらぶる-』からのファンの方もいると思うし、「SQ.」を読んでて初めて僕の漫画を見る方もいると思うんですけど、みんなに満足してもらえるような作品にしていこうと思うので、よろしくお願いします!あとやっぱり漫画を描くからには楽しめるものを、という思いはずっとあるので、そこは今後も意識してやっていこうと思います。
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