ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」許斐剛 先生 & 入尾前 先生

《1》許斐剛先生が語る漫画論

入尾前先生(以下、入尾):許斐先生、本日はよろしくお願いします!

許斐剛先生(以下、許斐):こちらこそよろしくお願いします。……もしかして、緊張しています?(笑)

入尾:アシスタントでお手伝いしておりますが、こういう場で改めてお話をうかがうのは…(笑)。

許斐:聞きたいことがあれば、何でも聞いて下さい。日頃の不満や、愚痴も全力で受け止めます(笑)。

入尾:そんなものは全くないです!いつも勉強させて頂いております。では早速ですが、先生はどのような経緯で漫画家になられたのですか?

許斐:本格的に漫画家を目指したのは、大学の就活中の時期でした。当時、色々な会社を回っていたのですが、その時に「何か違う」と思ってしまったんです。

入尾:それで「週刊少年ジャンプ」に投稿を?

許斐:そうですね。投稿を始めてからはトントン拍子でした。『鉄人~世界一硬い男~(以下略、鉄人)』という作品でデビューをして、そこから4年後くらいに『COOL RENTAL BODYGUARD(以下略、COOL)』で初連載。

入尾:そして、そのあとの作品が『テニスの王子様(以下略。『テニス』)』ですよね。1999年に始まって、今もなお読者から絶大な支持が…。

許斐:ファンの皆さんが支えてくれたことが、すごく大きいですね。本当にありがたい限りです。

入尾:そんな先生の執筆人生の中で、絶対に変わらないポリシーはありますか?

許斐:「読者を第一に!」と考えて描くことだけは、昔から変わらないですね。特に『COOL』の連載をこぎつけるまでに「読者を手玉にとってやろう!」と思うようになったんです。それは悪い意味ではなく「読者の方々に驚いたり、楽しんでもらいたい」という想いから始まったものでした。

入尾:その心の変化は、結果的に先生に何をもたらしたのでしょうか?

許斐:あらゆることを、読者の目線で見られるようになりました。主人公のセリフひとつでも、このセリフを言うことで読者はどう感じるのか。例えば主人公の決めゼリフを少し変えるだけで、かっこよくもなるし、ちょっと嫌なやつにもなってしまうんですよ。

入尾:確かに『テニス』のリョーマの決めゼリフ「まだまだだね」が、「まだまだだぜ」だったら、かなり印象が変わりますね。

許斐:たった一文字だけ変えるだけなんですけどね。だから常に自分の中にもう一人の自分がいる感覚がします。プロデューサー・許斐剛がいて、彼が漫画家・許斐剛に「それは独りよがりじゃないか?」とか、「それをやったら、読者は悲しむよ」と、上から指示を出している感じがします。

入尾:漫画を執筆する上で、客観的な視点はとても大切なんですね。

許斐:客観的な視点は漫画に限らず、あらゆる仕事に求められるものだと思いますよ。私の場合はたまたまそれが漫画だった。そして読者のために描き続けていたら、18年くらい経ってしまっていました(笑)。

取材&マンガ 廣瀬ゆい
ジャンプSQ.19に『最弱なボクと最強な彼女』掲載の期待の若手ギャグ漫画家!!