ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」地獄のミサワ 先生 & 左藤真大 先生

《1》ストーリーの極意「人の力を借りる」!

左藤真大先生(以下、左藤):ミサワ先生には日頃からお世話になっておりますが、改めて宜しくお願いします。最初に、ミサワ先生が漫画家になったきっかけをお聞かせ下さい。

地獄のミサワ先生(以下、ミサワ):奥さん(小説家・松原真琴)に言われたのがきっかけです。元々、知り合いのツテでTV番組のイラストを描いていたのですが「お前の絵、ちょっとひどい。TVのクオリティじゃない」と言われて。特に色が薄くて、TVだと白っぽくて何が何だか分からなかったそうで…。それで、白黒で描ける漫画を勧められたんです。

左藤:では次に、ミサワ先生の漫画の作り方を教えて下さい。

ミサワ:うーん、描き方は特に決まっていない。毎回違うんですよね。話から決めることもあれば、オチだけ決まっていたりとか。スケジュールの方も、思いついたら描くという感じかなぁ。

左藤:『いいよね!米澤先生』(以下、『米澤先生』)と『カッコカワイイ宣言!』(以下、『カコカワ』)で、作り方が変わった部分はありますか?

ミサワ:特にないですけど、『米澤先生』は奥さんがストーリーの大部分を考えていますね。

左藤:そうだったんですか!?ちなみに大部分とはどれくらいですか?

ミサワ:大体全部です。「こういうキャラがいて、こういう台詞を言わせたい」…みたいに描きたいシーンを奥さんに発注すると、うまく繋いで一本の話にしてくれるんです。一回、全部作ってもらったこともあります。

左藤:ミサワ先生の作品は「金持ちは悩むの禁止!」とか、いつも台詞の使い方が独特ですよね。あれは普段からご自分の中にある言葉なのですか?

ミサワ:全然ないです。ただ米澤はそれを言うキャラなので。言わせたいというより「滅茶苦茶言ってんなー」みたいな感覚ですね。

左藤:では『カコカワ』はいかがですか?あちらはお一人で考えていらっしゃいましたよね。

ミサワ:『カコカワ』も基本的に描きたいシーンから考えていました。だから人に助けてもらうかどうかの違いくらい。『米澤先生』は担当さんから「ちゃんとキャラを育てた地続きの作品」という要望が最初にあって、それで描こうとしたら全くできなくて、そこで「人の力を借りる」という極意に気づいたんです。

左藤:確かにそれも「マンガの極意!」ですよね。実際に担当編集やアドバイザーがいたり、あるいは原作者と組んだりとか…。

ミサワ:全く同じですね。

左藤:では、毎回のネームの作り方について教えて下さい。

ミサワ:まず、メモ帳に脚本のような台詞を書いていきます。その際、原稿時のページごとに分けて書いているので、その段階でテンポやコマ割りも大体決まっていく感じです。

左藤:その脚本スタイルはデビュー当初からですか?

ミサワ:最初はコマ割りのネームから描いていましたが、とにかく面倒くさくて。

左藤:そしてネームの後ですが、原稿はデジタルで描かれていますよね。デジタルにした理由はありますか?

ミサワ:スクリーントーンがとにかく面倒くさかったから。線画は途中までアナログでしたが、時間短縮のためと奥さんに言われて、フルデジタルに切り替えました。最初の頃は「アナログの味というものがある!」とこだわって、まずブログで試してみたんですよ。線画がデジタルだと「絵が変わった!」と大騒ぎになると思ったら…誰も気づかない。担当さんですら。それはショックでしたね。

取材&マンガ 左藤真大
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