ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」内藤泰弘 先生 & 川崎 宙 先生

《1》理想は漫画の形で直接出力!

川崎宙先生(以下、川崎) 新人の川崎です。今日は宜しくお願いします。

内藤泰弘先生(以下、内藤) 読切『林檎飴騒動』(「SQ.19 Vol.18」掲載)読みましたよ。終盤の盛り上がりでアクションに入るところが、特に良かったです!

川崎 おお…内藤先生にアクションを褒められるなんて!凄く嬉しいです。私は戦闘シーンが初めてだったので。

内藤 僕が最初に読んだ川崎さんの『ジプシーダンス』(SC大賞SeasonⅡ第7回佳作)も、フラメンコの躍動する感じがすごく出ていて驚きました。カメラワークも面白かった。

川崎 うわー、ありがとうございます!そんな前の作品まで覚えて下さっているなんて!!…それでは早速、質問に入らせて頂きます。まず内藤先生の漫画の作り方を教えて下さい。プロット、ネーム、作画などのスケジュールなどを…。

内藤 うわぁ…!いやいやいや!!ちょっと口外するには大変はばかられるスケジュールでして…(笑)。本当によくないのですが、ネームに苦戦して「そろそろ取り掛からないとまずい!」となって、見切り発車で作画を始めることが多いんです。できていないネームは作画と並行して作ったりして。なので、具体的なスケジュールはちょっとご勘弁を(笑)。

川崎 なるほど、いつもギリギリまで攻めているのですね。では、内藤先生のネームの作り方を教えて下さい。文字プロットを作ったり、脚本を作ったりとか色々な手順があると思いますが。

内藤 最初、デジタルの白いページに、見開き単位で台詞をバーっと配置していきます。その後微調整しながらコマを割り絵を入れる順番ですね。OKが出ればそのネームに直で描き込んで下書きにしていきます。脚本というわけではなく、なるべく「漫画の形」で出したいと考えています。ネーム前にプロット起こしなどの手順を踏むと、話の勢いがどんどん削がれていく気がして。

川崎 内藤先生の作品はいずれも構築された内容なので、プロットを練って、ネームも組んで…と、かなり手順を踏んでいるものと思っていました。確かに私も先日プロットなしで描き始めたネームが、いつもより勢いがあると担当さんに褒められました。

内藤 直しが出た時に全部描き直す時間と気力があるのなら、最初から漫画の形のネームでもいいんじゃないでしょうか(笑)。なのでネームは、ほぼ完成形のつもりで描いています。

川崎 ネームの段階で作画の絵は想定されていますか?

内藤 最初に台詞を打ち込む時から段階を追って、コマの大きさや人物の顔、向き、全体の比率は決め込んでいきます。担当さんに見せる時はある程度漫画の形になっています。アクション部分はいきなり浮かぶこともあれば、頭の中でカメラを回して構図を探したりと色々ですね。

川崎 あの迫力の大ゴマが、いきなり頭に浮かぶだなんて…!大ゴマとは対照的に、ギャグコマの顔はかなり崩されて面白いですよね。シリアスとのふり幅が大きいというか。

内藤 ユルいもののユルいなりの良さは漫画の魅力なので、貪欲に取り込んでいきたいです。そういえばこの前、アニメ版『血界戦線』キャラデザの川元利浩さんと話したのですが、アニメーターさんって、カッコよく描く訓練はバッチリな反面、ギャグ絵はどこまで崩したらいいのか困ることが多いそうです。あるいは崩すことに罪悪感があるのかも知れない。この「自分のさじ加減で自由にユルく描く」ことは、もしかしたら原作者本人ならではの特権なのかも。

川崎 その崩し絵もネームで決め込まれているのですか?

内藤 ネーム段階で既にシリアスと崩し絵の緩急は付いていますので、その呼吸は完成原稿まで持って行きます。崩し絵の時の線は意識的にヨレた感じで引きますね。

取材&マンガ 川崎宙
『強欲家の天職』『林檎飴騒動』でSQ.19に掲載の俊英!