――有隣堂・西口コミック王国さんオススメの『月光条例』ですが…「おとぎばなしが現実にフシギに入り組む、今までになかったタイプのマンガです!」とのことですが、こうした物語を描こうと思われたきっかけは?
新連載をやらせていただくにあたって、幾つかネタ出しをしていたんですよ。その中には、週刊少年ジャンプの『封神演義』じゃないけれど、仙人同士が闘うような話…っていう案もあったんですけどね。自分は昔からおとぎばなしが大好きでしたし、なんだコレ納得できねーぞ!と憤慨している話もたくさんありましたので、こりゃ大ノリでできると思ったんです。ノートに、おかしくなった赤ずきんが月の下を歩いてるイラストを走り描きして、そこにポエム…『月光条例』のコミックスのカバーにあるような文章をつけてって見せたら、担当さんも「それだ!」って面白がってくれたんですよ。「月光」の相棒も赤ずきん、ラプンツェル、鉢かづき…といろいろアイデアが出たんですが、やっぱり、鉢かづき姫だ!って最終的に自分の直感で決めました。
――そういえば『うしおととら』のコミックスのカバーのソデに、「―――『マッチ売りの少女』の結末が気に入らなかった。なんでかわいそうな女の子が、かわいそうなコトになっちまうんだよ!!」と書いていらっしゃいましたね。オレはこういう事を救いたいからマンガを描いてるんだ! という。何十巻にも渡る長期連載作品もおもちですが、そうした熱い想いや意図は、スタート時からラストまで変化しないんですか?
最初からスミズミまで考えて始めるわけではありませんが、描き手のアタマが単純なせいか、好み、展開、言いたいことはほぼ一直線ですね。何せいまだにマッチ売りの少女に怒ってたり、20年以上前に見たジョン・カーペンター監督の『ニューヨーク1997』に夢中なんですぜ。物持ちイイ(笑)。『月光条例』は、もっかハイライトへ向けて考え中です。
――作者的に『月光条例』の見どころは?
登場人物がおかしくなった時と、元に戻った時の顔を見比べて、面白がってもらいたいなあ。「成長」なんてものはキャラクター達自身に任せるとして、楽しく、笑って読んでもらえるといいな。
――1巻刊行後まもなく、有隣堂さんでのサイン会で、ファンの良い手ごたえを感じられたとおっしゃっていましたが、具体的にはどんな感触が?
「月光」も、「エンゲキブ」も、ちゃんとキャラクターとして面白がってもらえてるなァというのは感じました。無視されるのが一番困りますもんね。
――「楽しく笑って読んでもらえるマンガ」をめざして20年近く、週刊少年サンデーの第一線で描き続けられていますが、続けるための力の源、ポリシーってありますか?
少年マンガ家は「おだんご屋さん」だと思います。おいしいとお客さんが思ってくれるから、次も買ってくれるわけで、「味のわからねえヤツは食うな」という姿勢とか、「今までにない芸術的な味を追求する」とかいうのは違うと思って、今まで描いて来ました。ぶっちゃけたおハナシ、読者のみんなが喜んでくれないんなら、こぉぉんな手間のかかるコト、20年近くもできませんや! これからもおいしいおだんご、作り続けたいと思います!
――では、ふだんのおだんご作り=作画体制については、どんな感じですか。
ネームは、その週の原稿が上がった後、一度寝てからとりかかります。ファミリーレストランでやっていた時もありましたが、今は仕事場で4〜5時間、その時描いているマンガに合ったBGMをかけてますよ。『からくりサーカス』のときはヒーリング系とかキーボード系(『ヤニー』『タンジェリンドリーム』とか)が多かったのですが、『月光条例』では、『うしおととら』のときみたいに、またヘヴィメタルや力強い曲が多くなりました。中村由利子さんのピアノ曲や、映画サントラ、アニメソングも変わらず聴きます。イメージが湧きやすい良い音楽を聴かずにネームはできませんね!! …作画は4〜5日かかります。遅いんです。月産でだいたい18ページ×4週かな。ちなみに仕事の日は午後2〜3時から、朝4〜5時ぐらいまで描いてます。休みは週1日で、家族と遊んでから、リュックしょって資料を買いにゆきます。
――仕事場の雰囲気も楽しそうですね!
3〜4人のアシスタントが頑張ってくれてますよ。「うちは絵なんぞ描けなくていいから、会話を楽しくしてくれないとオレがイヤ」っていうふうですから、みんなはコミュニケーションとらないといけません。それが一番キツイかもね(笑)。
――近年、スピリッツやモーニングなど、青年漫画誌へも活躍の場を広げられましたが、その経緯や、心境の変化などがあれば教えてください。
ガンガン・バキバキが大好きな少年マンガ家に居場所なんて…と思った青年誌ですが、それをやってもダメじゃないんだと思えたし、受け入れてくれた編集長や担当さんの柔らかさを肌身で感じることができて、嬉しかったです。そうして青年誌で描かせていただいてるうちに、少年漫画もまた描きたくなってきて、こりゃ精神にも健康的だなァと思いましたね。 |