★――どなたかのアシスタントに入られたことはありますか?
小林:レディコミ時代、1年だけコージィ城倉先生の事務所に入っていました。少女漫画で悩んでいた頃に、周りの人たちが「青年誌のほうが向いてるんじゃないか」って言ってくれたので、投稿作を描いてヤングサンデー編集部に持っていったんです。…当時、城倉先生は『砂漠の野球部』を描かれていたんですけど、「一人アシスタントが辞めるので困っている」というお話で。最初は、「アシスタントはやる気ないんです」ってお断りしたんです。自分自身のことで手いっぱいでしたから、これ以上、人の流儀まで身につけて、いっぱいいっぱいになりたくないと思って。
SQ:どうしてもアシスタントに入ったら、その先生のシャワーを浴びちゃいますからね。
小林:でも、「絵だけでも先生に見せてもいいか」と言われたんで、「それはどうぞ」って。そしたら、自宅に帰ったとたん、城倉先生から電話があって、「明日か明後日、とりあえず1日でも入ってくれ」って言われて(笑)。その時も、「アシスタントはやる気がないんです」とお伝えしましたが、「それでも、とりあえず来てみて。実際に、現場でどれくらいのスピードでできるかも見たい。僕にだって、断る権利はあるでしょ?」って言われて。「それはそうだな!」と思ったんです。それで翌日に行って、城倉先生から色々お話を聞くうち、「もう、私、絶対ここでやりたい!」と思ってしまったんです。
SQ:なんていいエピソード。城倉先生の人柄ですか?
小林:初日に、先生が私の投稿作品についてコメントしてくれたんですが、「面白く読めるけれど、演出的に、僕だったらこうしたんだけど」と言われた時に、目からウロコが1000枚くらいボロボロボロッと落ちまして(笑)。今までは編集さんに「ココをこうして」と言われても、「あ、なるほどね〜」くらいの感じだったんですけど。城倉先生の仕事のスタンスを聞いてもボロボロ落ちて、その日の帰りには、もう、「この人が首を吊っても、絶対この人のアシをやる!」って思いました。城倉先生も「じゃあ次の日程だけどさあ〜」とかおっしゃって(笑)。
SQ:それで、当時連載されていた『砂漠の野球部』のレギュラーになったと。具体的には、城倉先生のどういったスタンスに感銘を受けたんですか?
小林:ネーム作りです。その当時、私の勝手な思い込みで、少年サンデーの作家さんって、やたら絵に対するこだわりが強くてオタク気質で…っていうイメージだったんですよ。でも、城倉先生は絵に対する過剰なこだわりがなく、ネームやキャラ立てを重視される方で。私はそれまで、漫画って「テーマは何か」を定めて、起承転結をちゃんとつけなくちゃって、難しく思い込んでいたんです。
SQ:そんなふうに教えられる部分も、ありますからね。
小林:新人のころ、編集さんにそんなふうに言われるじゃないですか。でも城倉先生は、私の従来の考え方とは真逆で。例えば――私が売れないエロ漫画家(♂)の恋愛模様を描こうとしていたんです。その主人公はイケメンという設定だったので、エロ漫画家という素性は、デートシーンでは隠したかった。だから、最初にモノローグで説明して、やがて漫画の道具やスキルで、デートのピンチを乗り越えて……と。ところが、城倉先生は、「最初からきたな〜い仕事場を見せておいて、デートシーンでバッと変身するほうが面白いじゃない!」って(笑)。
SQ:最初のストーリー性はなくなるけど(笑)、オモシロイですね。
小林:自分が教わってきた漫画の考え方とは真逆で、コンセプトもないし、オチも起承転結なくていいんです。でもそれが、面白い! 「今まですごい難しく考えすぎてたんだなー」と思いました。城倉先生の所に通い始めて、「ただ、エロいものを描けばいいんだ」と思いました(笑)。
SQ:そう、直感だったり欲望だったり、それだけでいいんですよね…実は。そこらへんを城倉先生に指導いただいたんですね。
小林:そうですね。難しく考えることはなくて、ワンエピソードでもどう描くか、だけなんだなーって。「テーマはエロ」、それだけでいいんだって。
SQ:城倉先生、今『おれはキャプテン』っていうのをマガジンSPECIALでやってらっしゃいますけど、そこの感情はね、「あいつらムカつくからブッ倒そうぜ」って。それだけですからね(笑)。ちなみに城倉先生の当時のアシスタントさんで、いま活躍してらっしゃる方は?
小林:そうですね、『エリートヤンキー三郎』の阿部秀司さんとか…私と同期だったのは、ヤングチャンピオンで原作をやってる石渡洋司さんとか、『ぎゃるかん』とか描いてる倉上敦士さん。私は『はるか17』などを描いてる山崎紗也夏さんの後に入ったんです。私以降も、かなりの人材が出てらっしゃるようです。
SQ:なるほどー!! その方々の作品を思い浮かべると、確かに城倉先生の影響がある。すべて感情が直結している。「私立城倉学校」ですね!!
YJ担:いいねー。うらやましいですね、ああいう漫画は。編集者が何かプロデュースしようと思って作れるような漫画じゃないもんね。
★――そういった経緯があって、青年誌でのご活躍につながっていったわけですね。小林拓己先生、どうもありがとうございました。これからも我々の妄想を刺激して、元気付けてくださる作品を楽しみにしています!
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