ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」和月伸宏 先生 & 中田貴大 先生

《7》理論で構築した『るろうに剣心』

中田 ところで『剣心』の持つ刀・逆刃刀は、先ほどあった「閃き」で生まれたものですか?

和月 いえ、あれは実はロジックで作ったものです。侍を描こうとして、でも人殺しにはしたくない。だったら竹刀?木刀?竹光?…どれもしっくりこなくて。「だったら最初から峰打ちになる刀にしよう」と出てきたものです。

中田 では『剣心』は、緋村剣心というキャラクターがあって生まれたものでしょうか?

和月 いえ、最初はキャラもいなくて、まずは舞台設定から。『剣心』を描く前の読切『三日月』が掲載された時、少年漫画で難しいとされていた歴史ものにも関わらずアンケートが良かったんですよ。で、担当に「もう1本、歴史ものを描いてみないか」と言われて。戦国時代は連載にするには大変だし、ちょんまげのキャラもカッコ悪い気がしたので、幕末・明治くらい?…と。そして、その時代で描きたい「殺さない剣客」というアイデアを詰め始めました。『三日月』の長身・黒髪の主人公と正反対に、小柄で髪も赤くして、そして女顔っぽいから十字傷をつけて…と、剣心はロジックで生まれたキャラクターなんです。

中田 僕らの世代はみんな『剣心』を読んでいるのですが、和もののキャラクターのカッコよさはそこで教わりました!

和月 そう言って頂けると嬉しい(笑)。自分の中でも、漫画・アニメ・ゲームに登場する武器は『ドラゴンクエスト』の影響で西洋剣が中心だったのが、『剣心』以降は日本刀がよく出るようになった気がしていて。もしこの傾向に自分が少しでも関係していたら…と思うと嬉しいんです。もちろんあの頃は「流行らせよう!」なんて考えはなく、ただ自分な好きなものを描いていただけですが。

中田 近年、映画とともに『剣心』が時を経て再開されましたが、その時はどのようなお気持ちでしたか?

和月 時間を置いてキャラクターを描くことは面白かったし、勉強になりました。あと、結論が出せないと思っていたテーマに回答が見えたり、分からなかったキャラクターの行く末とか、年を取ったからこそ見えるものもありました。連載当時は二十代の若造ですから、あの時は描けなかったものも多かった(笑)。もっとも、若造だからこそ描けるものもありましたが。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!