ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」星野 桂 先生 & 肘原えるぼ 先生

《2》デジタル作業の利点

肘原 先ほど伺いましたが、現在はネームからフルデジタル作業なんですよね。

星野 そうです。でも、1年前までは紙にも描いていましたよ。CROWN創刊号に載った『D.Gray-man』第219夜の初稿ネームは、アナログとデジタル半々だったと思います。その頃は紙とデータがまざったネームを担当編集さんに見せていましたね。その後、次第に慣れていき、ネーム作業をデジタルに完全移行していった感じです。現在はWACOMの「Cintiq Companion」や最近発売されたVAIOの「Z Canvas」のタブレットを使用してやっています。「Z Canvas」はグラフィックや動画など大量のメモリを使う重たい作業もフリーズせず、スイスイと処理できる優れものなんです。私は『聖☆おにいさん』の作者・中村光先生が使用されている公式動画を見て買っちゃいました。実は私と中村先生は誕生日が同じで以前から勝手に親近感を持っていたので、「コレだ!」と即決でした。

肘原 原稿作業は「CLIP STUDIO PAINT」で作業をされているそうですが、アナログからデジタルへ移行したきっかけを教えていただけますか。

星野 元々アナログ推奨派ではあったんですが、作業環境の問題にぶち当たって切り替えました。アナログで作業していた当時は、原稿への光の入り方や机の傾斜など、自分が一番描きやすい環境を仕事場で作り上げていたんです。でもある時、自分の仕事場以外で原稿を進めなければいけない事態に陥ってしまって…。いつもと違う環境の中で原稿を描くことは想像以上に大変で、それを機に「場所を選ばないデジタルに切り替えよう」と決断しました。私は決めたら即行動するタイプなので、すぐに液晶タブレットを購入し、練習もせずにいきなり連載原稿を描き始めました。デジタルは一度挫折した経験があり、二度とPCで絵を描くことはないと思っていたくらい機械に疎いんですが、締切が迫っていたので、何の知識もなく無我夢中で入稿した思い出があります。連載中だったので、練習する時間が全くとれなかったんです(苦笑)。

肘原 デジタルへの切り替えに抵抗はありませんでしたか?

星野 移行を決断した後は、全く迷いはなかったです。デジタル作業の環境を整えるために思い切って高価な機材やソフトを購入したので、この投資したお金を無駄にしてなるものか!という気持ちがあったので(笑)。

肘原 アナログで描いていた線をデジタルで再現することに苦労はありましたか?

星野 その点は感覚がつかめず苦労しました。紙と違ってデジタルでは原稿用紙をいくらでも拡大できるじゃないですか。最初はその拡大率を考慮してなかったので、主線が想像以上に細くなってしまったりと上手くいきませんでした。いつも通りにペン入れをしていただけなのに「どうして!?」と(笑)。

肘原 ちなみに現在は何人態勢で『D.Gray-man』を作られているのですか?

星野 追込みの時などは人を増やすこともありますが、現在は私も含めて3人態勢です。季刊誌に移籍してからは時間に余裕ができたので、アシスタントは、それぞれの家からデータでやり取りするフル在宅でお願いしています。在宅の良いところは、通勤の時間を作業に充てられるという面ですね。週刊時代はアシスタントさんの交通の便を考慮して、都心に住んでいたのですが、在宅だとその必要がないのでとてもありがたいなと思います。ただ、互いに意思疎通を図るにはやはり顔を合わせた方がスムーズです。アシスタントさんとはスカイプで連絡を取り合っているのですが、こちらの意図が上手く伝わらないことも多くて、お互いに歯がゆくなることもあります。