ハレンチ漫画賞 結果発表

ハレンチ漫画賞

優秀賞 賞金50万円

『鼓動』25P

atu 21歳 岐阜

漫画カット

【あらすじ】
夜の学校で飛び降り自殺を図ろうとした少年は、教室の人影に気付き思いとどまる。教室に向かうとそこには一糸まとわぬ姿の女子生徒・夜空がいた。夜空と“ドキドキ”する時間を過ごすうちに少年は生きることに価値を見出すようになる。

【講  評】
夜の学校で「死にたい少年」と「刺激を求める少女」の秘め事。このエモい設定から二人がどう変化しどんな結末を迎えるのか楽しみに読んでたら途中で終わってしまったという印象で残念です。絵は上手いし読ませる力もあるので物語を学んでください。【古屋】

一番ハレンチでした。それも単純な絵的なハレンチではなく、主人公とヒロインのキャラクター性、シチュエーションなど、いろいろな要素が禁断の雰囲気を創り出している感じ。画力は荒けずりですが、構図やキャラクターの仕草、ポーズなど工夫が感じられるのも良いですね。【矢吹】

個人的には一番好きでした。描きたいものが伝わってきてよかったです。エロってやはり、大衆的なものもいいのですが、個人個人のフェチズムを追求したものがより深度の深いエロになると思ってます。一案ではありますが、第三者視点による二人の邂逅、というふうにも見えたので、没入感を出すためにどちら視点のモノローグが あっても良いのではと思いました。【横槍】

自殺願望を持つ主人公の前に突然現れる美女、彼女のミステリアスな振る舞い、そして唐突ながらも明確な自分への好意…都合がよくて最高ですね。やっぱこうでなくっちゃ!と思わされます。女性の肉体の描き方にも情熱を感じました。ヒロインに救われて立ち直る主人公という展開も王道でよいと思うのですが、ラストで(苦手な人に正面から立ち向かうとか)主人公が変化したことをはっきり示すエピソードや演出があれば完璧だったと思います。【LINK】

優秀賞 賞金50万円

『ばぶばぶパニック!』 18P

永谷えんがわ 24歳 東京

漫画カット

【あらすじ】
ブラック企業に勤め、疲れ切ったサラリーマン・黒社 畜男がある朝目覚めると、乳児である息子と入れ替わっていた。最愛の妻とイチャイチャして赤ちゃん生活を満喫する畜男だったが、妻にもある秘密があり…?

【講  評】
もしも自分が赤ん坊になっておっぱいを飲めたら…そんな願望を上手くまとめててエロティックながらもほっこりとする良作。「ハレンチ」というお題から青年誌に載っても大丈夫な内容へと導くバランス感の優れてる方だと思います。【古屋】

短いページ数で見開きを工夫しつつ、ハレンチ展開もしっかり描写していて完成度が高いです。ギャグのはさみ方や大ゴマの使い方も自然で読みやすい。画力をもっとつけてシリアスとギャグの絵柄の使い分けがよりはっきりするとさらに満足度が上がると思います。【矢吹】

スピード感がよくて引き込まれました。面白かったです。お母さんにもまさにバブみを感じました。思い切って赤ちゃんプレイに絞っているのが斬新です。結構マニアックな内容のはずなんですが、絵が万人受けしそう&やわらかいのですんなり読んでもらえそうなところもいいです。絵的な見せ場は完全にこの「お母さん」だと思うので、表情にもう少し変化が欲しかったです。【横槍】

「赤ちゃんプレイ」という性癖一点突破、唐突ながらも妙に説得力のある展開とかずくん=神のキャラクター、そしてラストの心地よいどんでん返し…素晴らしいの一言です。高い構成力もお持ちなので、今後はより画力を上げて女性のビジュアル面の魅力を強化すると共に、連載に耐えうるキャラや企画を考えるとよいでしょう。【LINK】

特別賞 賞金10万円

『小鳥川は破廉恥』21P

矢野悠太 26歳 大阪

漫画カット

【あらすじ】
思春期真っ只中の冬馬は、中学に入ってから“破廉恥”になってしまった幼馴染の小鳥川のことが気になって仕方がない。一緒に映画を観に行くことになった二人であったが、小鳥川の無防備な振る舞いに冬馬はたじたじになってしまい…?。

【講  評】
ひたすら可愛くほっこりする作品。「ハレンチ」を思春期男子の妄想に置き換えて描く発想が面白い。絵柄はそのままで画力がつけば作品の幅が広がると思います。【古屋】

ほほえましい内容で毒もなく優しい気持ちで読める。ベタベタではあるのですが、会話劇だけでこのページ数を読みやすく作れているのは良いと思います。しかし読者をひきつけるにはもっと絵柄を洗練し、コマ割りにメリハリ、展開にもうひと工夫のアイデアが欲しいかなと。【矢吹】

所謂「破廉恥」なことは一切ないのがテーマを逆手に取っていて面白かったです。絵柄は独特ですが、作風に合ってると思うのでこの方向で精度を上げて欲しいです。表情が記号的なのも作風的にはアリなのですが…やはり女の子を魅せる漫画の場合はもうちょっとバリエーションがあったほうがいいかもしれません。【横槍】

ウブな主人公冬馬と純粋な小鳥川さんの二人は、絵柄も含めて好感度が高かったです。エッチな絵や展開がほとんど出てこないのは「そういう作品」ということで構わないと思いますが、コメディとして描くなら冬馬の「何でもかんでも破廉恥なことに思えてしまう」性格やリアクションをより極端に見せて欲しいです。たとえば冬馬の反応に小鳥川さんがドン引きしたり、二人を客観的に観て冷静にツッコむ友人などを近くに置くとよりおかしみが増すのではないでしょうか。【LINK】

特別賞 賞金10万円

『偽装プリティ』32P

寺澤箱吉 33歳 大阪

漫画カット

【あらすじ】
女装が趣味の主人公は、妹の制服を着て電車に乗り、出没する痴漢を捕まえなければならなくなった。最初は乗り気でなかったが、実際に痴漢に遭遇するとその快感の虜になってしまう。毎日痴漢されていくうちにその正体を暴きたくなり…? 

【講  評】
一生懸命描いてるのは評価できるけど漫画歴が浅いのか漫画の「てにおは」ができていなく内容がすっと入ってこない。発想自体は面白いので沢山描いて読ませる技術を身に着けてほしいと思います。【古屋】

ぶっとんだ話ですが、ハレンチ漫画賞なのでアリかと思う。絵が上手く、丁寧に描かれていて演出も良い。しかし、導入の人間関係が少しわかりにくいのと登場人物のことが説明不足のまま本題に入ってしまい連載マンガの途中のエピソードを見たような感覚になったのが惜しいですね。【矢吹】

まず絵が良いです。可愛く、エロく描こうという拘りを1コマ1コマに感じました。ハレンチ漫画の基本はすべて抑えていると思います。ストーリーマンガとしては後半に「転」がきていて読みやすいのですが、ハレンチ漫画としてはあっさり前半に正体を出してしまって、二人の関係性が発展してゆくのもみてみたいなと思いました。キャラの特殊性プラス、キャラ自身の性格ももう少し見えるといいかなと思いました。【横槍】

ヒロインの高峰さんも、主人公の女装姿も変態…じゃなくて大変可愛かったです。妹含めてそれぞれを大切に思っている人間関係も心地よかったですが、「女装」「被痴漢による快感」と、マニアックな性癖が重なっているのが気になります。一つずつ丁寧に見せていかないと共感を得にくいテーマなので、話が進むにつれてやや置いてけぼり感が強かったです。読切の場合、ひとつの性癖に絞った方がいいかも知れません。【LINK】

特別賞 賞金10万円

『見えるから見えてきた』9P

村瀬ゆりこ 24歳 愛知

漫画カット

【あらすじ】
七夕の短冊に“クラスの女子の裸が見たい”と書いた主人公が翌日学校に行くと、本当にクラスの女子が裸になっていた!?初めのうちは良かったものの、丸見えであることに嫌気がさした主人公は、ついに“ハレンチ”の心理にたどり着く!? 

【講  評】
お題に答える大喜利のようで「ハレンチ」というテーマに引っ張られすぎだと思います。当たり前のことを当たり前に描いただけという印象です。作者個人の体験やフェティズムが見えないと読者は引き付けられません。【古屋】

まずつかみが良いのと、少ないページ数でやりたい事がまとまっているのは良いと思います。ただちょっと肩の力が抜けすぎというか、見せるべきポイントが画面の中心に無く、余白が多かったり、絵はかわいいのに描きこみや仕上げがあっさりなのがもったいない。大ゴマも多用しすぎているので少し内容を増やしてメリハリつけると満足度は上がると思います。【矢吹】

よくある展開を逆の切り口で…面白かったです。内容はリアルなのですが、絵柄がほんわかしているので軽い読み口で楽しめました。テンポもよかったです。画面の密度は処理や効果を足すだけでかなりよくなると思いますのでやってみてほしいです。こういう女性目線の細かい気づきみたいなのは、破廉恥のいいスパイスになると思います。【横槍】

主人公の「(いつでも誰でも素っ裸より)服を着ているからこそエロさが増す」という気付きは、三平方の定理と同じぐらい偉大な発見だと思います。ただし、ピタゴラスが発見したそれと同じく、これは既に世の中の多くの人が知っている法則でもあります。作品の核に据えるにはちょっと物足りないので、この気付きに至るまでの主人公の葛藤や女性キャラクターをより魅力的に描いて欲しいです。【LINK】

特別賞 賞金10万円

『私のルームメイト』8P

Noda 23歳 東京

漫画カット

【あらすじ】
現役大学生でありながら成人向けの漫画家である七月杏には口数が少なく表情の読めないルームメイトがいた。原稿執筆中にムラムラしてしまった杏だったが、絶対に見られたくない姿を見られてしまい…!?

【講  評】
物語の序章かと思いきやもう終わったの?という印象。この二人の関係性を掘り下げるところから物語は始まると思います。面白くなりそうな設定なのにもったいない。【古屋】

ハレンチ漫画賞らしくハレンチでした。キャラクターの描写がしっかりしているだけにもう少しページの長い話として読みたかった印象。この続きがどう展開するのか気にったままブツ切りになる感じでした。ルームメイトがかわいいだけにもったいないかなー。【矢吹】

エロシーンがちゃんとエロくて良いです。きちんとキャラクターを描こうという姿勢も伝わってきます。それだけに、続きがもう少し読みたくなってしまうのですが…。このPでもしインパクトを残すとしたら、さらに予想外のことが起こった方がいいと思いました。いっそこのオチから始めてしまってもよいかも。【横槍】

主人公の自慰行為が生々しく描けていて良かったです。ルームメイトの女の子もせっかく可愛い見た目をしているので、後半で何らかの二人のカラミが見たかったなと感じてしまいました。【LINK】

審査員総評
  • 古屋先生
    「ハレンチ」というお題を上手く消化できていなかったというか無理してエロを描こうとしてる方が多いかなという印象でした。それだけこのお題は難しいし漫画家でも構えてしまうものなのです。エロいシーンや言葉なんてひとつもなくてもなんかにエロがにじみ出てる。そんな作品でもいいのではないでしょうか。

  • 矢吹先生
    ハレンチ漫画賞、もっとストレートな作品ばかりと思っていたら、みんなそれぞれ工夫していて様々なハレンチの解釈があり、楽しく審査させて頂きました。読んでいて感じたのはハレンチ漫画におけるキャラクター設定、人間関係、シチュエーションの重要さです。「鼓動」はシリアス寄りのハレンチ漫画としてそれらが高いレベルで表現されていて惹きこまれました。少年誌としてどこまでOKかはともかく「ハレンチ」という題材にはまだまだ無限の可能性があると思いますね!

  • 横槍先生
    人の数だけハレンチ有り…様々な解釈で楽しませていただきました。オープンでも秘め事でもエロには「爆発力」が重要で、その点において自分的にはバトル漫画と同列なのですが、そういう意味でのパッションは正直ちょっとだけ物足りなかったかも…。エロとは即ち生命力なので、もっと切実で、攻めたものも読んでみたいです。テクニカルなことは上限のない世界というか、正直もう業界的にもかなり成熟しきっているので、歪でもその人だけの願望や欲望が迸るものを、世間も渇望している気がします。とかなんとか言いましたが、要ははじめてドキッとしたときの初期衝動なんかを思い出して落とし込んでみるところからはじめてみてください。本当に表現したいものが見つかれば、技術は自然についてくると思います。

  • LINK先生
    様々な性癖を扱った作品があって楽しく読ませて頂きました。漫画はある程度の数の読者に応援される必要のあるメディアです。「ハレンチ漫画」では作り手自身の強い欲望と、読者からの共感度のバランスを常に意識する必要があります。その点で候補作の中では『ばぶばぶパニック』に優れたバランス感覚を感じました。

  • 矢作編集長
    前回「ホラー漫画賞」ほどの秀作が無かったのが残念でした。“破廉恥”というお題がキャッチー、かつ分かりづらかったためか“破廉恥”というワードにこだわり過ぎてしまった作品が多かった。“破廉恥”をそれぞれがどう解釈して何を描くか、という自由さを希求した賞だったのですが。個人的なフェチの告白でもいいので、読者の十人に一人がイイ!と言ってくれる作品を読みたかったです。全体的に画力が足りなかったのも残念でした。