震撼覚ホラー漫画賞 結果発表

震撼覚ホラー漫画賞
最優秀賞 賞金100万円
ジャンプSQ.8月号に(7月4日発売予定)掲載決定!!

ヨシダ宇宙人説 55P

町田ジョウ(26)福岡

あらすじ
花火大会の夜、花火の見える穴場スポットにいたホシノとマツシマは、クラスメイトのヨシダが謎の生命体へと姿を変えるところを目撃。2人はヨシダの正体を暴くことを決意し奔走するが、決定的な瞬間を捉えることができず…!?

講  評
■素朴な疑問がやがて破滅へと向かう凄惨な結末かと思いきや、何と終らない終りに驚愕しました。ヨシダは何人もいる宇宙人かも。<稲川>
■ブラックな笑いを誘いつつ、ある意味一番怖いのではないかと思うと同時に、ヨシダという未知のキャラクターに可能性を感じました。<小畑>
■画が素晴らしい。話も作り方を心得ていると思いました。画面的に恐怖を丁寧に描写することを意識して、頑張ってください。<平山>
■“コワかわいい”と申しましょうか、そこがとても良かったです。展開にも迫力がありました。<藤崎>
■キャラクターの顔の描き分け、表情の変化は見事。殺人シーンもデザインチックにしているのがいい。精神を錯乱させていくホシノ。それにラスト、、怖かったです。<矢作>

優秀賞 賞金50万円
ジャンプSQ.RISEに(7月下旬発売予定)掲載決定!!

0.9999999 50P

hiro(22)東京

あらすじ
両親を事故で亡くし、姉と二人で生活を送る寧々。ある日、寧々がお祭りに行くと告げると、姉から「金魚」は駄目だと忠告を受ける。その言いつけを気に留めなかった寧々だが、生活を送るうち持ち帰った金魚を食べたいという欲求に駆られて…!?

講  評
■独自の世界を紡いでいくような幻想的な作風で、作家性を強く感じました。変貌していく主人公のおぞましさの中に、心地よさをも感じさせる部分が独特で、面白かったです。<小畑>
■絵に華があります。すでにとても上手ですが、もっと凄くなる可能性も感じます。ストートーリーもよくて、センスの良さがとびぬけていると思いました。<藤崎>
■アクションの描き方、演出が上手いです。また、描線がとても綺麗で、ストーリーもしっかりと練られており、「なるほど」という読後感がありました。賞の名に相応しい、新感覚のホラー漫画だと思います。<矢作>

奨励賞 賞金30万円
ジャンプSQ.RISEに(7月下旬発売予定)掲載決定!!

ドロカブト 53P

えなか映日(24)東京

あらすじ
神隠し伝説「ドロカブト」が伝わる町に暮らす高校生・ミハネ。ある日の放課後、一緒に帰宅中だった幼馴染のけいが突如消失。だがそれ以降、周囲の人間はけいの存在を忘れてしまっており…!?

講  評
■冒頭からベクシンスキーを彷彿と させる巨像の存在に加え、異界の 浸食を丁寧に行き届いた形で表現して 見せています。キャラも怪異の展開も 発展させていて、とても好感を持てました。<平山>
■誰もが土地神様に畏敬の念を持ち、崇め感謝すると同時に恐れも抱いていた。昔からの因縁が、見えない力で村人たちを操っている。ゆったりと包み込むような恐怖がいいですね。<稲川>
■キャラクターが良いので、ついつい応援したくなる魅力があります。ストーリーを組み立てる力がある方だなと感じました。<藤崎>

奨励賞 賞金30万円
ジャンプSQ.RISEに(7月下旬発売予定)掲載決定!!

RYU-JI 53P

脇山樹人(32)千葉

あらすじ
表情も感情も乏しいリュウジは、双子の 兄・リュウイチの指示で“ペーチューバー” に。視聴者からの企画リクエスト応えていくキャラクター「ウロちゃん」だったが、徐々に企画はエスカレートしていき…!?

講  評
■ストーリーに現実味があり、まるで邦画を見ているかのような気分を味わえました。全体的にクオリティーが高く、ずっしりと読みごたえのある作品だと感じました。<藤崎>
■正気から逸脱していく怖さを、リアルですさまじく描写しており、ファンタジーでもなんでもない“おそろしさ”そのものが伝わってきました。<小畑>
■兄弟の関係性、ネット配信内の悪意など、今っぽい題材を用いながら、一人の怪物が生まれ育て上げられてしまう過程がリアルに描かれていました。演出力も素晴らしい。<矢作>

特別賞 賞金10万円

一時の中のディザイア 40P

岩本空洋(31)神奈川

あらすじ
人気のアプリゲームに熱中し、昼食を抜いても課金する陽太は、ある日時間 を止められる能力を手に入れる。徐々に彼はその能力におぼれていき…!?

講  評
■時間が止まった世界で恐怖を描くことに新鮮さを感じました。理由が分からない事に怖さがありますが、主人公がもっと追い込まれる様子を見てみたかったです。<小畑>
■悪事を重ねるにつれて主人公が自己崩壊していくという展開はややありがちですが、巧みな構成で読まされました。謎の多いエンディングもアリですが、少し尻切れトンボ感がありました。<矢作>

特別賞 賞金10万円

キセイ 16P

和泉かざり(28)香川

あらすじ
毎年夏休みには、祖父母の暮らす岐阜へと帰省するあさひ。彼女はその家で寝ると必ず夢の中に現れる少年と年を重ねるごとに関係を深めていくが…!?

講  評
■母親という故郷の体内に帰りたいという潜在的な欲求が男にはあるといいます。少年は少女の成長をずーっと待って、遂に【帰省】し【寄生】するんですね…。蝉時雨の中、足元に血の滴るラストに戦慄を覚えました。<稲川>
■前半の不思議さが期待を膨らませます。それを後半でさらにパンクするまで膨らませられたら、もっと素晴らしい作品になったと思います。<藤崎>

最終候補

おやしらず 52P

原作・そん(21)東京 漫画・welve(21)東京

講  評
謎解きの部分は巧くまとまっていましたが、最初の怪異が終わりまで劇的な変化を見せず、やや意外性に欠けた印象がありました。<平山>

最終候補

STRaNGE:REPORT 37P

森田滉介(19)奈良

講  評
実話であるという前提だとしても、よくある怪談で終わるのではなく、読者の想像を上回るアイディアを出してきてほしかったです。<小畑>

最終候補まであと一歩の作品

秘密ボックス 37P 伊井勇人(21)兵庫

BoM 35P 赤乃とんぼ(21)福岡

無題 26P 江井口阿加音(21)東京

スキマ 2P 平野陽大(21)福岡

HEY 8P poru(23)大阪

明日のゴミ 23P 竹内走馬燈(28)東京

大神家の一族 45P 日暮直樹(29)千葉

ぬきうち 12P 坂入かいり(37)東京

ジョッピン 22P ニシワタル(40)北海道

震撼覚ホラー漫画賞
  • 稲川淳二さん
    いやいや、力作揃いで大いに楽しませていただきました。其々が感覚・感性の全く異なった傑作ホラーというのが見事ですね。色合いの違う、不思議や恐怖がいろいろあって、目移りしました。選考に当たっては、感情が豊かな表現力や、記憶に残るシーンなどと、漫画はいうまでもなく、語りであっても映像であっても十分に通用すると思える作品に重点を置きました。怖いけれど楽しい、コワタノシイがいいですね。

  • 小畑 健先生
    個人的には、『0.9999999』と『ヨシダ宇宙人説』が特に面白かったです。ホラー漫画は読者が怖がりたいと思って読むのでハードルが高く、その予想を上回るのはやはり難しいです。まずは、読者の興味をそそらせる進め方、いかに予想を裏切るか、どう着地させるかを考えてください。恐怖は人間の根源的な感情なので、読者はゆさぶられやすいです。上の2作品は、そのバランスの良さと作者のカラー が感じられました。

  • 平山夢明先生
    画がしっかりしている作品が多かったです。ただ、己の二本の腕だけで世の中を喰っていこうという突破者であるなら、常識や固定概念は破壊して掛からなければいけません。ホラーとは読者〈勿論、作者〉が感じている閉塞感をぶち破り、日常の全てをスクラップ&ビルドして見せるジャンルです。すじ・ぬけ・どうさの全てに行き届いている作品を創り上げれば、今の目の肥えた読者からも必ず支持を得、望みのモノが手に入るだろうと思います。

  • 藤崎 竜先生
    出来のいいホラーにはある種の美しさがあると思っています。その美しさは、文字や絵の美であったり、死生観であったりフェティシズムの形をとったりと、種類はさまざまですが…。今回私がホラー漫画賞の審査をさせていただくにあたって、そこに作家自身の個性が見られるかどうかで点数をつけさせてもらいました。幸いなことに、いくつかすばらしい作品に出会うことができたので、感激しております。

  • 矢作康介編集長
    最終選考では想像を遥かに超える力作が出揃い、またバラエティーに富んでいて楽しかったです。個人的に『ヨシダ宇宙人説』には、ストーリーとしての完成度の高さを、『0.9999999』には売れるホラー漫画の可能性を、『RYU−JI』には時代性を感じながら読みました。 ホラーは百物語形式で怪談を集め一冊にするのも楽しいですが、受賞者の皆さんにはぜひ毎月連載していける作品作りを目指して欲しい。そのためには、やはり読者が興味を惹かれて追いかけていくキャラクターが重要です。皆さんの今後の作品に期待しています。頑張って下さい。