障りになる疵は直す、残していい疵は手当てして残す、それが営繕屋の仕事。営繕かるかやの尾端は、今日も住居の疵に宿った怪異を相手に、仕事に励む――。
DIYに目覚めた夫・和志が誰も祀っていなかった祠を壊し、井戸から庭の水撒き用の水を汲み上げるためのポンプを付けてから、時々腥(なまぐさ)い匂いが鼻につき、魚らしき影を見かけるようになった麻理子。庭の植物が思うように育たないことを不気味に思い、業者の堂原(どうばる)に庭を見てもらうことに。すると植物を見た彼は井戸水が「キスイ」だと言い残し、逃げるように帰ってしまった。麻理子はモヤモヤしながら入浴するも、そこへ腥い匂いと窓にビタビタと何かがぶつかるような音が。外から見てみると手探りで井戸から風呂場を通り家に入ろうとしている跡を発見し、隙間だらけの古い家、夜一人家にいるのを不安に思うようになった麻理子。そこへ営繕屋の尾端が声をかけてきて…。
堂原の紹介でやってきた尾端に、「キスイ」とは淡水と海水が混じった水で塩害に弱い柑橘類や梅は枯れる可能性があること、海では無数の死が沈殿していて生きていないものが上げ潮に交じってやってくることを教えてもらった麻理子。井戸を埋めて代わりに雨水を溜める配管工事を依頼してはどうか、と言う尾端の提案に乗ることに。そのまま尾端は帰宅しようとするも麻理子の表情を見て、戸締りの不安なところを見て回ってくれることになり!?