有限世界のアインソフ 日高十三男

前回までのあらすじ

ストーリー

 【吸血鬼】呪いを受けて復活した死者にして人の生き血を糧にする怪物。呪いの起源は、未だ解明されていない―――。
吸血鬼と人類の大戦乱が終結した世界。それでも各地では吸血鬼による大小様々な事件が起こっていた。
狩人協会の調査員であり、吸血鬼の父を持つアイン・ソフは人間と吸血鬼の両方を救うため、それらの事件解決にあたっている。


 帝国が毎年作成する暦の印刷を入札したクレイトン社。しかしそこへ吸血鬼の違法労働の疑いが入り、労働基準監督局の監査が入る。その現場にアインとバンも同行することに。そこにはクレイトン社の社長・ジャックと、人間の姿をした吸血鬼・モルドがいた。


 吸血鬼が人家に棲みつくと通常、住人は体調を崩したり命を落としたりするが、稀に「幸運」をもたらす。家事が片付いていたり人の精神に作用し、場に活力を与えたりすることもある。しかし「幸運」をもたらす吸血鬼の存在が人間を堕落させ、依存させてしまうという。       吸血鬼の雇用禁止の表向きの理由は「人を害する存在だから」だが、人の精気しか必要としない吸血鬼は経営者にとって「無料で無限に近い労働力を得られる理想の従業員」となってしまう。「理想の従業員」となった吸血鬼がもたらす利益に、人の倫理は簡単に崩れてしまうため吸血鬼の雇用は禁止されているのだ。


 ジャックの妻・アリシアが書いた『ポポルの冒険』を売るために起業したクレイトン社。しかし本は思うように売れず、借金返済のための下請け仕事に追われていた時『ポポルの冒険』を読んだ吸血鬼・モルドが仕事を手伝ってくれたのだった。
 ジャック達の為にもモルドは自ら自分を殺すようアインに頼む。そしてクレイトン社は暦の発注を取り消され、数週間の営業停止が決定する。しかし『ポポルの冒険』の推薦文をアインが書くことに。クレイトン社はアインによって救われたのだった。
 そして実は死んでいなかった吸血鬼・モルドはアインに誘われアイン邸に住むことになり…!?

キャラクター紹介
  • アイン・ソフ
    狩人協会の調査員の少年。父親が吸血鬼の為、普通の人間として育てられず、吸血鬼たちに育ててもらう。人と吸血鬼を救うために活動している。学術書とノンフィクション専門の出版社「記憶の記録社」のオーナー。
  • ユラ
    アインに助けられた吸血鬼の少女。弟の生きた意味を見つけるためにアインの家で生活をしながら、メイの私塾に通う。
  • ユーリ
    ユラの弟。吸血鬼となったユラを人間に戻すために戦うが寿命を迎え死んでしまう。「放浪医者ユリアス」と呼ばれていた
  • クロ
    アイン邸で働く使用人の吸血鬼。
  • バン
    狩人の青年。吸血鬼を瞬時に見抜くことができ、吸血鬼を全員殺すという野望を持っている。妹のモモの目を治すために狩人として働き始めた。
  • ユーゴ
    狩人の青年。実家が織物商を営んでおり裕福。吸血鬼に対して寛容な視点を持っている。
  • メイ・クリストフ・ラーデン
    「記憶の記録社」創業家の一人娘で父親が「記憶の記録社」の社長をしている。従業員向けの託児所を兼ねた私塾を運営しており、そこにはユラも通っている。
  • ダリル
    メイの私塾に通っている少年でメイのことが好き。頭の良さはアインにも認められている。