ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」許斐剛 先生 & 入尾前 先生

《2》漫画の執筆方法
今後の展望

入尾:逆に描きづらいキャラはいますか?

許斐:私自身が極悪非道なことを考えられる人間ではないので、本当に悪い人を描くのは難しいです。例えばですが、人にひどい暴力を振るったり、あるいは主人公の精神が闇に染まりきったりする話は、描けそうにないなぁと…。それに、泣ける類の話もあまり得意ではないです。微妙な情緒とか、感情のちょっとした機微とか、そこは鈍いのかもしれないです。

入尾:それと前に、先生は思い悩んでいる主人公を描くのが嫌いとおっしゃっていましたよね?

許斐:嫌いというか苦手ですね。今の世の中、多くの人が自分の人生にすら悩んでいるのに、漫画を読んでも悩んでいる人を見るなんて…と悲しくなっちゃうんです(笑)。漫画の中でだけは、せめて「面白かった!」と、読者の方々に気分転換をしてもらいたいじゃないですか。

入尾:先生の読者を想う気持ちは、いつも感嘆します…。そこまで考えておられたのですね…。

許斐:でも、悩みを突き詰めた作品が好きな方がいらっしゃることは承知です。また、そういった作品を描くのが上手な漫画家さんがいるのも知っていて、本当に尊敬しています。 ですので、私も漫画家としてもう一段階、高いステージに上るためには、自分が苦手とする話にも挑戦しないといけませんね。作品の幅を広げたり、作品に深みを持たせるためには、悩みは大切なことだと思いますので。『テニス』では難しいかもしれないですけれど、新しい作品などで出せていけたらと思っています。

入尾:他にさらなる高みへ上るためにされていることはありますか?

許斐:時代ごとに流行の絵柄があるので、そういったものはどんどん吸収していきたいと思っていますね。手癖があるので、なかなか難しいとは思いますけれど。

入尾:先生がこれ以上、成長してしまったら大変なことになりそうなのですが…(笑)。

許斐:「若いものにはまだまだ負けないぞ!」という気持ちで(笑)。でも漫画家を目指す人には頑張って欲しいと、心の底から思っています。

取材&マンガ 廣瀬ゆい
ジャンプSQ.19に『最弱なボクと最強な彼女』掲載の期待の若手ギャグ漫画家!!