ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」許斐剛 先生 & 入尾前 先生

《3》プロの漫画家を目指す人へ向けたアドバイス

入尾:頑張ります!というわけで、漫画家を目指す人や新人作家に、「これだけはやっておくと良いぞ!」といったアドバイスはありますか?

許斐:新人の時に学んだことですが、担当さんへの持込はすごく良いですよ。自分一人で作っていると、悩みすぎてあらぬ方向へ進んでしまいますので。私が新人の時は担当さんに見せられるものがなくても、編集部に行ってご馳走してもらっていました(笑)。一見、無駄かもしれないんですけど、そんなことはなくて。食事の席で、担当さんに出したアイデアが好感触だったりすると、「あ、この路線で間違ってないんだ」って確認にもなるんですよ。やる気もわくし、担当さんの迷惑にならない程度だったらオススメです。

入尾:他に今の時点で、練習しておいた方が良いことはありますか?

許斐:あとはやはり「読者の目を意識すること」と「キャラクター性にこだわること」ですね。特に「読者の目」は新人さんが見落としがちですので。

入尾:キャラクター性に関して言うなら?

許斐:これは連載を目指す人に向けてのアドバイスですけど、キャラクターさえしっかりできていれば、どんな漫画も面白くなるというのが私の長年の持論です。デビューの頃から言っています。

入尾:なぜ物語の展開よりも、キャラが大切なのでしょうか?

許斐:例えばですが、読切で感動的な物語が描けたとするじゃないですか。ただそれはあくまでも、その読切がうまくいっただけのお話なんですよね。次の読切でも同じように感動的な物語が描けるとも限らないし、ましてや連載なんて言ったら、なおさら難しくなりますよね。だからこそ、連載を目指すなら、連載にも耐えうるような魅力的なキャラを作った方が何倍も良いと、私は思うんです。良いキャラは作家から誕生したあと、一人歩きしてどんどん魅力的になってくれます。そしてそんなキャラさえいれば、何話でも続けられるので連載に向いている気がします。ただ、これはあくまで私のやり方なので、参考程度に聞いて頂ければありがたいです。

入尾:自分にとって最適な漫画の作り方を模索したいと思います。それに新人は連載作家さんとは違って、キャラにしろ展開にしろ、ネタを練るための時間が膨大なので、担当さんの目に留まるような作品を作りたいです。

許斐:連載作家はどうしても締め切りがあるので、妥協したくなくてもせざるを得ない時がありますからね。新人は特に時間をかけて描けますから、連載陣よりも面白い作品を描いて欲しいと思います。

入尾:連載作家さんを引きずり落とすくらいの意気込みが大事なんですね。

許斐:厳しい言い方になってしまいますが、漫画家は結局のところ、描いた原稿でしか評価されないですからね…。自分の能力を信じるのは自分だけです。自信がないというのなら、自信が生まれるまで頑張って欲しいです。そして「絶対に連載を獲得してやる!」という想いを、原稿に最大限に凝縮して下さい。そんな熱い想いで描かれた作品は、絶対に審査員をする私たち連載陣や、編集部に伝わります。連載を力ずくでもぎ取ることが、大切なんです。

入尾:ただ、もぎ取ったあと、それはそれで大変そうですね…。

許斐:もちろん大変です(笑)。ただ連載になってしまえば、いやがおうでも成長できますよ。毎日のように描いて、たくさん考えてたくさん仕事をしないといけなくなりますから。

入尾:先生の話を聞いて、やる気が湧いてきました!私も頑張ります!最後に漫画を目指す人、新人作家にメッセージをお願いします!

許斐:ここまでの話で完全に言い尽くしてしまいました…(笑)。漫画家になることはすごく大変なことだと思います。ただ絶対になれないという仕事ではありません。さっき言ったような血のにじむような努力が、必ずや、実を結ぶと思いますので、新人の方、漫画家を今から目指す方は強い心をもって、夢に向かって欲しいと思います。頑張って下さい!

入尾:本日は貴重なお話をありがとうございました!!

取材&マンガ 廣瀬ゆい
ジャンプSQ.19に『最弱なボクと最強な彼女』掲載の期待の若手ギャグ漫画家!!