ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」増田こうすけ 先生×左藤真大 先生

《2》漫画執筆について

左藤:次は漫画の執筆について質問させて下さい。現在、どのような流れで執筆されていますか?

増田:ぼんやりと全体の方向性が決まったら、とりあえずネームを描き始めて、その都度、浮かんだネタを盛り込んで完成していきます。なので、いつもネームをやっている最中は、良いギャグが思いつくことに期待しています(笑)。

左藤:描き始めた時点ではオチを決めていないということですか?

増田:話の内容によりけりですね。最初から考えていたオチを、最終的に少し変えることもありますから。

左藤:そのやり方で詰まることはないんですか!?僕はその方法で失敗しました…。

増田:いやいや、僕ももちろん詰まりますよ(笑)。

左藤:そんな時はどうしていますか?

増田:考えるのをやめて、普段の生活をします。僕はネームを考えていない時間が気分転換になるので。気持ちを切り替えるという意味で、最近はゲームを利用していますね。

左藤:どんなゲームですか?

増田:アプリのパズルゲームが多いですね。1回のプレイが短いので、切り替えるのに丁度良いんですよ。「これをやったらネームにとりかかろう!」って、自分に対しての制約が作りやすい。

左藤:確かにテレビとかだと、ダラダラ観てしまいますもんね。僕もそうなりやすいので、参考にしたいです。

増田:左藤さんに効果があるかは分からないですけど、切りのいいゲームは僕のオススメです。あとは音楽を聴きながら作業すると捗りますよ。

左藤:どんな音楽ですか?

増田:僕の場合はメタルとかハードロックとか、好きなものを聴きながら仕事するとうまくいきます。ただ何事もやりすぎるとサボっていることになっちゃうから、ほどほどにね?(笑)

左藤:気をつけます(笑)。ちなみに先ほどネームで詰まるとのお話でしたが、他に作品を作る上で苦労なさっていることはありますか?

増田:セリフ選びは原稿を送るギリギリのタイミングまで悩みますかね。

左藤:そんな時はどうするんですか…?

増田:さっきのネームと同じですが、考えるのをやめます(笑)。煮詰まっている時はいくら考えても無駄なので。直感で「良いかも?」と思えるセリフが浮かぶのを待ちますね。

左藤:そのこだわりがあるからこそ、印象的なセリフが多いんですね。クマ吉の「変態という名の紳士だよ」は名言と言っても過言では…。

増田:名言というより迷言ですけどね(笑)。

左藤:セリフまわしで、他にこだわりはありますか?

増田:なるべくセリフは省くよう、心掛けています。セリフを削ると残されたセリフがより浮き立ち、作品そのものが洗練された感じになるので。

左藤:その他に工夫されていることは?

増田:今の自分に不足している物を意識して、漫画に反映しています。例えば「最近楽しく描けていないな」と思ったら、楽しくネームを考えようと努め、コマ割が単調になりがちになっている時は、内容に関わらず工夫したコマ割に挑戦します。またツッコミなしの漫画が続いているようだったら、ボケとツッコミがあるベタなものにしていますね。

左藤:個人的にコミックス11巻に収録されているイケメン軍団の話が印象に残っていて、あの話もかなり工夫されていますよね。登場人物全員が笑いを取りにいってるようには見えないところが、今までになく斬新というか。

増田:あの話は、描いてる僕も楽しかったですね。登場人物の中で好きなキャラと嫌いなキャラもいましたし、顔のパターンもたくさん描いた記憶があります。

左藤:ほとんど喋っていないキャラもいるんですよね(笑)。お気に入りです。あと、一番すごい!と思ったのは、コミックスの14巻に入っている、友達がアメコミのヒーローになる話です。あのお話はどうやって作られたんですか?

増田:あの作品は左藤さんが思っている以上に、そんなに難しくない作りですよ。日本の漫画は右から読むのに対し、アメコミは左から読み始めますよね?その読み方の違いをひとつに収めてみたらどうなるかなと思って。という理由で、最後のページから読んでも漫画になってるんです。

左藤:そんなアイデアが浮かぶこと自体が驚きです。先生のそういった作品アイデアって、どこから生まれてくるんですか?

増田:テレビのバラエティー番組などを見ている時に、「自分だったらこうする」とツッコミを入れるのが好きなんです。それが作品作りの役に立っているのかなと思います。

左藤:現在、お気に入りのテレビ番組はありますか?

増田:俳句番組が好きですね。アマチュアの俳人と先生がいて、俳句を詠ませて採点するといった内容なんですけどハマってます。

左藤:それを見ながら、先生自身も一句読んでいるということですか?

増田:「テレビの人よりうまい句を読んでやろう!」と思いながら見ています。そういった「自分だったらどうするか」という考え方が根底にあるせいか、僕の作品はパロディが多い傾向にあるのだと思います。

左藤:では、10巻のエイリアンに食べられるけれど、なかなか死なない男・根岸の話とかも…。

増田:子供の時に観た『エイリアン』をパロディにしたものですね。

左藤:普段から自然とネタをインプットしているから、あんなに豊富なアイデアが浮かぶんですね。

増田:うーん、特に意識はしていないんですけどね…。

左藤:ちなみに「これは良いアイデアだぞ!」と自画自賛したお話はありますか?

増田:14巻のさるかに合戦の話です。今まで何度もネタにしようとするも、結局何も浮かばず、棚上げしていた題材だったので、満足のいく内容になって良かったです。

左藤:具体的に言うと、どのあたりが良いアイデアだと思いましたか?

増田:本来の話の序盤を省いて、いきなりサルを倒すところから物語を考えたことですかね。そうすることで、すらすらネームが上がったので自分でも驚きました。「焦点を絞る」ことは大切なことです。

左藤:今までお話された作品のいくつかはアニメ化もされていますけれど、アニメ化を聞いた時、先生はどんなお気持ちでしたか?

増田:あの時は本当に嬉しかったです。テレビで僕の漫画のキャラたちが動いてるし、単行本は増刷される。グッズもたくさん作られて、漫画家として夢のようでした。というかあれは夢だったのかも…。

左藤:先生、現実です(笑)。アニメ化で気づいた作品の新たな面はありましたか?

増田:削れるセリフは削ったつもりだったんですけど、アニメだとより削られていて驚きましたね。「こんなに削っても話が伝わるんだなぁ」と感動しました。

左藤:ギャグ漫画でアニメ化になる作品があまりないことを考えると、やっぱり先生はすごいなぁと思います。

増田:いや…もう本当にそんなんじゃないんです…(笑)。

左藤:これは余談ですけれど、今、先生が一番興味あるものはなんですか?先生は独特な視点を持ってらっしゃるので気になります。

増田:住宅のデザインを見るのが最近のマイブームです。すごくオシャレな家や、昭和の豪邸みたいな家を見かけると、思わずうっとりしますね。ただ最近の住宅デザインはあまり好みではないので残念です。

左藤:どういったところが、お好きではないのですか?

増田:所詮はデザインの素人なので、はっきり「ここ!」とは言えないんですけど…。ただ家というものは一度建てられてしまうと、40年~50年はそこにあり続けるので、もっと外観が素敵な家が建って欲しいと思っていますね。

左藤:先生が住宅好きとは!今日は先生の知らなかった面が、次々に明らかになりますね。

取材&マンガ 左藤真大
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