ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」星野 桂 先生 & 肘原えるぼ 先生

《10》健康体でないと漫画は描けない

肘原 星野先生はクラウン新人漫画賞の審査員もされていますが、どのような視点で投稿作を読まれているんですか?

星野 いち読者として「楽しませて欲しい」という気持ちで読んでいます。今回読ませて頂いて感じたのは、あまり読み手のことを考えられていない作品が多いかなという印象でした。

肘原 具体的にはどんなことが気になられたんですか?

星野 例えば主人公が持つ特殊能力をタイトルにされている作品が多かったんですが、いざページをめくったら、その能力と物語が全然かみ合っていなかったんです。面白い題材を選ばれている方もいたので、その設定でどんな物語を展開してくれるのか期待したんですが、残念ながらどれも先が読めてしまいました。

肘原 物語に深みがなかったということでしょうか?

星野 そうですね。苦労して作品の題材を選んでいると思うので、もっと肝となる設定を大事に描いて欲しかったです。自分が「コレだ!」と、ときめいた設定であるならば、辛くなるくらい突きつめる必要があると思います。二転三転して他人が思いもよらないところまで考え抜いた時に得たアイデアは、その方の個性に繋がるんじゃないでしょうか。

肘原 新人の時にやっておいたほうが良いことはありますか?

星野 「体力作り」と「規則正しい生活環境作り」ですね!連載をこなす漫画家はアスリートと同じくらい体力が重要になります。私も夢中になるとつい机にかぶりついてしまうんですが、1日中、座り仕事をしていると突然ガタがくるんです。若い肘原さんにはだいぶ先のお話だとは思うんですが、徹夜をしたり、無理をして仕事ができる期間はそう長くはありません。運動が苦手でも朝起きてラジオ体操やウォーキングで体を動かし、栄養バランスのとれた食生活を送って健康な体をキープすること。特にエナジードリンクを飲むのはやめましょう!健康でないと大好きな漫画が描けません。私は身を持って知りましたから(苦笑)。

肘原 まずは私も今日から健康管理を始めようと思います!それでは最後に、漫画家を目指している新人にメッセージをお願いします。

星野 とにかく言えることは、自分の漫画を描き続けて欲しいです。いまは読切や連載を掲載する場所を勝ち取れない新人さんたちが多くいらっしゃると思います。そういう状況が続いてしまうと、将来に不安を覚えて自信を失ってしまいがちなんですが、そこで逃げず踏ん張って下さい。新人の時はプロや編集さんから「読み手のことを考えて漫画を描いて」と頻繁に言われると思いますが、私の経験上、最初は漫画を描く際に「楽しい」という気持ちが先走って、その感覚はよくわからないと思うんです。でもそこから「漫画はもう描きたくない」と思うくらい辛くても描き続けていたら、自然と読者のために漫画を描けるようになるんじゃないかなと思います。その時にきっと良い作品が描けますよ。あと連載を勝ち取るには自分を信じる強い気持ちもとても重要です。例え担当編集さんからネームを「つまらない」と言われてもへこたれず、そこで「なにくそ!」と反発して頑張らなければ、絶対に後から後悔します。何事も描き続けた先にありますので、頑張って下さい!

肘原 内容の濃いお話を伺えてとても勉強になりました。今日はありがとうございました!