ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」星野 桂 先生 & 肘原えるぼ 先生

《5》設定は全て頭の中!キャラクター制作手法

肘原 いま私はキャラクター作りに一番悩まされているんですが、星野先生はキャラクターをどのように作られていますか?

星野 まずは漫画では絶対描かないであろう部分までキャラクターの人生を考えるんですよ。そのキャラクターがどういう親から生まれ、どう育ち、どうやって死ぬのか…それぞれの人生の大枠を最初に粗方固めていきます。家族構成や嫌いなものなど、考えた95%は漫画には出せないんですけどね。そこまで考えないと、私はキャラクターを作れないんです。

肘原 漫画で使うのは5%だけですか!? 連載を始められる前にそれは決まっていたんですか?

星野 そうです。『D.Gray-man』は連載前にアレン、リナリー、コムイ、千年伯爵、ノアの一族などレギュラー格のキャラクターはどういう運命を歩むのかまで決めていました。

肘原 途中でアレンのイノセンスが「神の道化(クラウン・クラウン)」になるところも?

星野 途中で特別なイノセンスを身に着けるという設定はありました。自分で言うのも何ですが、登場時のアレンの対AKUMA武器は見た目も能力もカッコよくなかったですよね。それとは一線を画したスマートでカッコいいものに進化させようと決めていたんです。ただ「神の道化(クラウン・クラウン)」のデザインまでは決めておらず、物語の展開上、アレンが進化できるタイミングが来た時に必死で考えた記憶があります (苦笑)。

肘原 作られたキャラクター設定は年表みたいな形で管理されているんですか?

星野 物語の設定は紙に書きますが、キャラクターの設定は全部、私の頭の中にあります。常に頭の中でアレンたちの人生を考えていて、物語の展開に沿って基本の設定に新たなエピソードを付け足しています。私は紙に書くとダメなんですよ。一度どこかに書いてしてしまうと、それが決定事項になった感覚に陥って囚われてしまうんです。それに紙って一度書くと、後からスペースを空けられないじゃないですか(笑)。今はパソコンだとできますが、当時の私はパソコンを持っていなかったので、頭の中でやっていました。

肘原 頭の中で管理されているんですか!? それは忘れることはないのでしょうか?

星野 毎日それらの設定を反復しているので忘れはしません。常にアップデートしている状態ですね。誰かの人生を変更すると、それに影響されて他のキャラクター設定も動いてくることがあるので、そういう時は頭で管理していた方が便利だなと。

肘原  『D.Gray-man』は登場人物が多いですが、一覧表や相関図も作られていないのですか?

星野 キャラクターに関してはそういった資料はないです。ただ、キャラクターの一覧表は作らなくてはいけないとずっと思っているんですよ。頭の中で管理する方法は決して良い方法ではないと思うので…。自分の頭も痛くなりますしね(苦笑)。紙などにアウトプットした方が健康にも良いとわかってはいるんですが、私の場合、この方法が合っているみたいです。

肘原 キャラクターの性格や特徴を自然に引き出にはどうしたら良いと思いますか?

星野 先ほど言ったようにキャラクターの人生を最初に構築してみてはどうでしょうか。その作業をすると自然と性格や特徴が出てきます。こういう人生を歩んできた人だから、こんな歩き方で、食べ方はこうで、口調はこんな感じだろうと、どんどん連想していくと考えやすいと思います。