ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」八木教広 先生 & 賀来ゆうじ 先生

《1》長期連載の『エンジェル伝説』『CLAYMORE』

賀来ゆうじ先生(以下、賀来):今日は宜しくお願いします!それではまず最初に、『CLAYMORE』という本当に長い連載を終えて、現在どのように感じられているのでしょうか?

八木教広先生(以下、八木):とにかくほっとしています。連載中は「物語をきちんと締めくくらないと」という思いが常に頭にあって。それを自分が望む形で実現することができたので、とにかく安心しました。

賀来:全てを描き切った!という感じでしょうか?

八木:そうですね。だからよく「次に何を描きますか?」と聞かれますが、何も出てこない(笑)。本当に出し切ってしまいました。

賀来:八木先生は前作の『エンジェル伝説』がコメディで『CLAYMORE』が重厚なファンタジーという、全く異なる作品を描かれました。しかも両方とも長期連載で。やはりそれぞれ描かれている時の感覚は違いますか?

八木:感覚が違うというよりは、意図して変えていたところが強いですね。まず『エンジェル伝説』がギャグで和める雰囲気の作品…というのは半ば意識していました。そして『CLAYMORE』では全く逆方向の、『エンジェル伝説』の執筆で出せずに自分の中に溜まっていたダークな要素を出して行こう、と思ったんです。そういう意味では『CLAYMORE』はひたすら出力作業というか、自分を出し切って読者に見せるという、どこか楽な部分もありました。それに連載を長く続けるつもりはなかったんですよ。コミックスで5、6巻くらいで終える予定でした。

賀来:それがここまでの長期連載に…!ちなみに「5、6巻では終わらない」と自覚されたのはいつ頃ですか?

八木:『エンジェル伝説』もそうですが、大体5巻の近辺で「ああ、これは10巻まではいくなぁ」と感じて、そして10巻付近になると「やっぱり15巻はいくなぁ」と、段々と延び延びになっていくんです(笑)。来年には終わらないけれど、次の年は分からない…みたいな漠然とした見通しです。

賀来:『エンジェル伝説』の作者コメントを読むと、各巻で八木先生は「まだ見ぬどこかを目指して頑張ります!」的なコメントをよく描かれていましたが、最終回の予定は立てられていなかったのでしょうか?

八木:そもそも『エンジェル伝説』は読切の感覚で描いてきたんです。元々が出オチみたいな作品で、パターンを工夫して数話描いていたら「連載決まったよ」って当時の担当さんが言ってきたという(笑)。

賀来:その「出オチ」とおっしゃる作品を、あれだけ長く続けるにはどんな工夫があったのですか?

八木:工夫という程でもありませんが、『エンジェル伝説』はギャグ作品ながらもストーリー寄りという側面もあったので、一旦一つのシリーズに突入すると物語が展開していけるんです。

賀来:そうなると、さらに物語が長い『CLAYMORE』は…。

八木:その理由から言うと、あくまでネームに関してはさらに楽でしたね。もちろん苦労する時もありますが。それにギャグ作品の『エンジェル伝説』の場合だと、ネームの途中で「これは面白くないかも…」と、全ボツにしてしまうこともあるんです。何日もかけて描いたネームでも、それがゼロになってしまうのは辛かった!『CLAYMORE』は多少引っかかるところがあっても、残せる部分もある。ネームでの選択の幅が広がりましたね。

取材&マンガ 賀来ゆうじ
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