ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」八木教広 先生 & 賀来ゆうじ 先生

《2》八木先生流のキャラクター設定術

賀来:『CLAYMORE』は重厚なファンタジーですが、よく読むと世界観設定的なものは意外とシンプルなんですよね。人間関係は複雑に変化していくのに、クレイモアの役割やその環境は分かりやすい。僕は漫画を描く際、どうしても設定を細部まで練り込み過ぎてしまうんです。八木先生の、読者に設定を伝えるための工夫を教えて下さい。

八木:これも先ほど言った通り、『CLAYMORE』はあまり長く続ける気はなかったんです。だから街や村などの舞台設定にはほとんど触れず、クレイモアという戦士に注目して終わろうと思っていたんです。逆に続くにつれて、説明しなければならない設定が増えた感じですね。

賀来:つまり5、6巻くらいのボリュームの物語を一貫して考えてきて、自然と設定の量も即した感じだったというわけでしょうか?

八木:そうですね。そして話が続いていくと、出てくるキャラクターが掘り下げられて世界が膨らんでいく感じです。それぞれの過去とか目的とか。

賀来:『CLAYMORE』はクレアとテレサ、そこに介入するプリシラ、そして読者の視点でもあるラキが核となるキャラクターたちだと思うのですが、それ以外のキャラクターに関しては、どのように作られたのですか?展開に必要なキャラとして設定するのか、使いたいキャラありきで登場させるのか…とか。

八木:両方です。でも、どちらかというとキャラクターはネームを作る過程でいきなり出てきて、それで動いたら「いいキャラクター」というか、そのまま使い続けるキャラになります。動かなかったら…考え直します(笑)。

賀来:まず最初にネームで入れてみて、そこで必要になるかということでしょうか?

八木:「キャラクターが勝手に動き始める」と言った方が近いですね。だから最初から「このキャラはこういう設定」と決め込んで作ることはまずありません。そしてキャラは、『エンジェル伝説』の主人公・北野みたいに「優しいのに顔が怖い」とか、欠点を作ると動かしやすくなりますね。欠点とはひいては個性なので、キャラに大切なものだと思っています。

賀来:他にキャラクターを考える際の方法論はありますか?僕は映画が好きで、俳優や登場人物に「この人物がこういう性格だったら面白いかも」とか、要素を繋げて思いつくことが多いのですが…。

八木:まず、モデルにしたいと思うものが特にないんですよ。本当に思いつくままにネームに出して、次に何を喋らせるかも決めずに描き進めて、そこで面白い台詞が出たら初めて性格が決まっていくとか。

賀来:本当にセンスなんですね!これはさすがにマネできない(笑)。

取材&マンガ 賀来ゆうじ
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