ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」あらゐけいいち 先生 & 白無新木 先生

《3》連載〝1話〟の難しさ

――あらゐ先生はネタ作りはどうされていますか?

あらゐ 毎回違うんですよ。基本はネームからですが、最初の頃ははめくってオチ、めくってオチ…という形にしようと決めていました。でもそれだけだと飽きるのでオチを決めて作るとか、何も考えずに最初から描くとか…。その内「ギャグ漫画でギャグしかやっていないものは、ギャグじゃないよな」と考えるようになり、他の要素も挟むようにしたり。ギャグは描いているとどうしても飽きてくる上、この先どうなるのか分からないですよね。それが怖い!

――ネタ帳を作って書き溜めたりしますか?

あらゐ たまに思いついたものをノートに描き留めますが、2、3個書いたところで大抵どこかにやってしまいます(笑)。で、部屋を整理していると昔のノートが出てきて「あ、これ使えそう!」となったりとか。特にネタが何も浮かばない時、昔のノートが見つかると凄い助かるんですよ。

――読切と連載作品だと作り方は変わりますか?

あらゐ 僕は変わらなかったですね。というのも、1本目の読切を出して、それから半年間も読切が続いたのですが、これっていわば連載じゃないですか。でもいざ本当に連載が決まり、担当さんに「1話を描いて」と言われるとなかなか描けなかった。「〝1話〟って何だろう?」って悩んで。それってネタのことじゃないんですよね。爆発ネタしか浮かばない(笑)。できるなら6話あたりから描き始めたかった。

――1話の難しさというのは、ネタ以外にキャラや世界観の説明が必要だから、とか…?

あらゐ ええ。内容が説明だけで終わっちゃうのが怖い。読切の場合、最初に1つのネタを決め、それを元にタイトルを提示するじゃないですか。「今回は明智光秀の話だよ!」とか。そしてオチがつく。でも連載第1話となると、皆〝1話〟として読む。そこで基本を崩してネタを作っても、ただ読者が読みにくいだけ。1話とはどうすべきか、未だに答えは出ないですね。

――最近だとギャグでもストーリー作品と同じように、1話で主人公紹介をしていますよね。

あらゐ 読者に受け入れてもらうためには、それが分かりやすいですよね。キャラに人気が出た方がいいと思いますし。でも究極のことを言ってしまうと、描く側としては「何をやりたいか」です。とにかくまず「自分が面白いと思うものを皆に見て欲しい!」というのがあります。それで人気がついてくるのが一番いい(笑)。『日常』の初期、全話キャラを変えて描いていたら、担当さんに「主人公をゆっこにして、ずっと出していきましょう」と言われたんです。自分はキャラを描けないと言っても「描いている内にキャラになっていくからいい。でも同じキャラは出し続けて」と。

――確かに、作品に一定のファンがつくのはキャラの部分と言われますよね。

あらゐ 『日常』もそれでアンケートが割れたんですよ。ゆっこたち3人組だけやってくれという人と、東雲研究所だけやってくれという人と。