ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」大場つぐみ 先生 & 群千キリ 先生

《2》物語は、こうして生まれた!

群千 次に原作の一番の要である物語作りについてお聞かせ下さい!今までの作品の誕生秘話を教えて下さい。影響を受けたものは何かありますか?

大場 『DEATH NOTE』は映画の『ロイ・ビーン』や黒澤明監督の『天国と地獄』という作品の影響を受けていると思います。『バクマン。』は純粋に「週刊少年ジャンプの中で、ジャンプを題材にした漫画が連載されていたら面白いな」っていう思いつきだったような?『プラチナエンド』は第1話の冒頭のセリフ、「人は誰しも幸せになるために生まれ、人は誰しもより幸せになるために生きている」を漫画に描きたくて、がスタートです。

群千 最初から天使のお話で「人の幸せ」がテーマだったのですか?

大場 そうですね。セリフの他に、ビルから飛び降り自殺をはかる明日(ミライ)を天使のナッセが助ける場面が頭の中にあって。天使が生きる希望を与えて、天使の翼とか矢もアイテムとして作品内で使えるかな、と。ただ最初は今のような展開にするつもりはなく、もっと「幸せとは?生きるとは?」みたいな普遍的なテーマを突き詰める予定だったんです。でも考えれば考えるほど結論なんて出せなくて。幸せの形は個人の感じ方次第で変わりますからね。それにそのままだと、漫画としてあまり面白くなかったんです。ならば天使同士の代理戦争を描こうと。でも最初の「幸せ」に関するエッセンスは、今後も散りばめていく予定です。

群千 そういった物語の作り込みは、連載前にどこまでされているのですか?最初からキッチリと結末が見えているのですか?

大場 担当さんと相談しながら物語を作るケースが多いので、先のことはあまり詰めていないのかも。『DEATH NOTE』も最初は主人公の月(ライト)がノートを使って、ひたすら人を裁く話として考えていました。でも担当さんと話していくうちに、ライバルとなるLをもっと際立たせて、W主人公的に物語を転がした方が面白いと気づいて調整していきました。『バクマン。』はいわば漫画家のサクセスストーリーですから、先の展開が読みやすかったです。漫画家のライバルが現れることも容易に予想できますし。ハッピーエンドも決まっていました。

群千 ちなみに物語を考える上で、気をつけていることは何ですか?

大場 話のつじつまが合うことは勿論、尚且つできるだけ違和感なくスムーズに読めるようにしたいです。物語が急転する時も、いきなり変わった感じにならないように。別々の話を繋げるのは物語の面白さでもありますが、それが強引に見えないようにするのは、けっこう苦労しますね。

群千 『DEATH NOTE』ではリュークの動きなど、本筋には直接関係のないギャグシーンが入っていることもあります。あれはバランスを考えて入れているのですか?

大場 自分が入れたいだけで、許される範囲の限界まで入れています。ただカットされることも多いです…(笑)。担当さんに喜んでもらうために入れているところもあるので、削られること前提ですね。『DEATH NOTE』だと松田のギャグは大体削られていました(笑)。

群千 作品タイトルはいつもどのタイミングで考えられますか?

大場 大体はネームができて、それが連載会議に通ってからですね。『DEATH NOTE』は最初からそのままでした。『バクマン。』と『プラチナエンド』は担当さんと小畑先生と一緒に名付けました。ちなみに『プラチナエンド』は最初に担当さんがタイトル候補を何個か挙げてくれたんですよね。それを元に二人で話し合って一度『ホワイトエンド』になったんです。ただ、そのタイトルだと曖昧な感じがして、小畑先生もしっくりこなかったようで。そこから三人で再度考え直して『プラチナエンド』になりました。