ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」浅田弘幸 先生 & 濱岡幸真 先生

《2》異なる工程を重ねるネーム作業

濱岡 浅田先生のネームの描き方を教えて下さい。

浅田 時間がないと手順を飛ばすこともありますが…ベストは「プロットを作る」→「キーワードを作る」→「シナリオを文章で書く」です。そして「大体こんな感じ」と固まったら、それを元にコマを割ってネームを描いていきます。すると仕上がったネームは、シナリオと全然違う形になることがほとんど(笑)。僕の場合、異なる工程を何段階か経て、面白さを高めているのだと思います。手順を踏むことで精度が高まるというか、ネームの無駄がなくなる感じですね。そして原稿作業に入るのですが、そこでもネームを直します。

濱岡 各工程でどんどんブラッシュアップするのですね!

浅田 あくまで僕の場合ですが、月刊作品だと特に、手順を重ねる程良くなると思っています。丁寧に導入を描いていき、何度も検証してきちんとしたオチをつけていく、とか。逆に週刊連載の作家さんは、工程を踏む時間がない分、勢いで描く部分が多いのではないでしょうか。その勢いこそが週刊作品の面白さで、そのおかげで作品が、自分が考えもしないところに繋がって行くのかも知れません。

濱岡 シナリオを書かれている段階で、原稿の画面は頭にありますか?

浅田 「これを原稿で描くのは大変そう!」と思いながらシナリオを書くこともありますが、基本はあったりなかったりです。頭にある場合も完成形としては考えていません。僕のシナリオ作業は、自分の中から出てきた要素を文章で残すことが目的なんです。文章って、絵に比べてどんどん出てくるじゃないですか。そういったばら撒かれた思考から、いいところだけを拾って精査していくんです。

濱岡 脚本が上がってネームを始める際、コマ割りはスムーズに進むのでしょうか?

浅田 いえ、シナリオがしっかり固まっていても、実際にコマを割ってみると1ページ目から情報が溢れていたり、読んでいて入り込めなかったりと、上手くいかないことは多いです。何度も描き直して、できるまで根を詰めるのですが…それだけ頑張ったネームも、結局後でまた直したり「やっぱりここ、いらない」とカットすることも(笑)。自分でも無駄な時間が多いとは思ってはいるんですよね…。

取材&マンガ 濱岡幸真
手塚賞準入選「超人 馬場ババ子伝説」でSQ.19で掲載デビュー!