ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」浅田弘幸 先生 & 濱岡幸真 先生

《6》アナログ+デジタルのカラー執筆術

濱岡 浅田先生は一色原稿はアナログで作画されていますか?

浅田 全部アナログで描いています。トーンもかなり使っていますね。ただ、カラーだけはPCでフィニッシュしています。

濱岡 では、カラーはどのような手順で描かれるのでしょうか?

浅田 まずアナログでラフを描き、鉛筆でクリンナップして1本の線にします。鉛筆なので、汚しも入れたりします。それをコピーした紙に、『テガミバチ』だったらコピックで肌色などをちょっと下塗りします。それをPCに取り込んで、キャラや背景が分かれているものは合体させて、カラートーンみたいにレイヤーで色を加えます。そこで光の効果も入れたりします。

濱岡 浅田先生のカラーは光がキラキラしていて、凄い憧れているんです。何度も真似しているのにできなくて…。あのステンドグラスのような質感は、どうやって出すのでしょうか?

浅田 Photoshopがあれば(笑)。アナログだと光の表現があんなにキラキラにできないので、そこがPCのカラーの面白いところですね。

濱岡 カラーの執筆にどれくらいの時間をかけられますか?

浅田 線画が半日から1日くらいで、色塗りは大体1日かかります。でも、完成後の色見本(※)を出す時が一番時間がかかりますね。プリンターで出すとイメージと全然違う色になることがあるので、その調整に時間を取られたりして。 (※:印刷の際、カラーの再現の手本となる高解像度の出力紙)

濱岡 PCに取り込む前にコピックで肌色を下塗りするのは、イメージをつけやすいからですか?

浅田 そうですね。他にも水彩でテクスチャーを作ったり、色鉛筆で薄く色を入れたりとか、気分で色々変えることもあります。

濱岡 塗りにPhotoshopを使う理由はありますか?

浅田 アナログで塗ると、いつも大体決まった自分の好きな色になってしまうんですよ。絵としてはもっと濃くしたいけれど、それだと好きな色じゃないから、自然にブレーキがかかってしまったり。あと、カラーインクだと印刷で綺麗に出ないことも多く、アナログの問題点のストレスがずっとあったんです。たまたまPhotoshopのデモ版を使ったら結構良くて、そこでアナログで塗ったものを取り込んで彩度を調整し…やがて今の使い方になりました。

濱岡 浅田先生のカラーは、鉛筆と、コピックと、デジタル…と、色々な力を組み合わせて作っているのですね。

浅田 アナログの水彩でカラー原稿を作って、デジタルで取り込んで表現したいレベルまで持っていく…というのが理想ですが、現実にはそこまで時間が取れない。『I'll』の頃は水彩で描いていたけれど、今よりずっと時間をかけていましたね。あと、『テガミバチ』も最初は凄く速く描けていたのですが、5~6年経つと、どんどん時間がかかるようになってしまい…。

濱岡 それはどのような理由でしょうか?

浅田 過去に描いた絵と似てしまうのが嫌で、新しいものになるように、どうしても試行錯誤の時間が必要なので。特に『テガミバチ』は衣装や世界観が決まっているからますます難しく、ラフの段階で3日くらい考えてしまうこともあります。

濱岡 ところで浅田先生は、他の作家さんの執筆方法などはご覧になりますか?

浅田 見ませんね。その割にはPhotoshopを使いこなせているわけでもなく、実は知らない機能だらけです。「マスクって何?」とか(笑)。でも、使っていて自分がびっくりすることが面白いんですよ。例えば、レイヤーの順番を変えただけで印象が変わることに気づいたりとか。手探りで試したいので、他の方のメイキングは見ないようにしています。

取材&マンガ 濱岡幸真
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