ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」助野嘉昭 先生 & 仲英俊 先生

《2》サッカー漫画で空間把握

仲:助野先生は作画で詰まることはありますか?僕の中で、常に安定してスピードが速いという印象がありますが。

助野:作画に詰まるって、どういうところで詰まるものなの?

仲:よく聞くのがバトルシーンのアングルが決まらなかったり、キャラの表情がしっくりこなくて何度も描き直したり…。

助野:カメラアングルは、実はそんなに迷ったことがないです。というのも僕は中学・高校の頃、ずっとサッカー漫画のネームを描いていたんですよ。それもキャラ紹介や日常シーンをすっ飛ばして、ノート20冊くらいまるまる試合シーンで!サッカーって11人対11人で、広い場所で人物が動き続けているでしょう?自分では楽しんで描いていただけだけど、複数の人間の動きとか空間把握とか、すごい特訓になっていたのだと思う。

仲:『貧乏神』でも多人数の戦いがありましたよね。

助野:そこは前編集長に褒められました!「一度、助野さんには45ページまるまるバトルの作品を描いてもらっては」と言われたり。そして今『陰陽師』で、それに近いことをやりつつあります。

仲:空間把握能力が高いと、アングルで詰まることがないんですね。

助野:あとキャラの表情に関しては、描きこみ過ぎないように気を付けています。あくまで僕の感覚ですが、丁寧に描けば描く程、キャラの生々しさが薄れる感じがするので。もし表情が上手く描けないという人は、考え過ぎないで軽めに描いてみることも試して欲しいです。

仲:ある程度抜いて、読者が想像する余地を残す感じでしょうか?

助野:それもあるかも。僕が悩むのは打ち合わせと、最初のプロット。そこさえしっかり固めておけば、あとは悩まなくなるんです。

仲:作画面で、『貧乏神』から『陰陽師』で特に変わったことはありますか?

助野:『陰陽師』ではトーンをあまり使わなくなったことかなぁ…。あとはペンタッチも少年漫画を意識して太くしています。実は『貧乏神』の終盤から、それを試しているところもあって…。

仲:アシスタントをしていて気づきました!首の下に影があったり、鼻の描き方が普段と違ったり…。

助野:うわー、バレてる(笑)。あと集中戦も「ちょっと太目でお願い」とか言ってたしね。もちろんガラッと変えるつもりはないけれど、少年漫画らしい路線を考えているつもり。キャラのデザインも、本当はもっとシンプルにすべきなんだけど…こればかりは自分の好みもあるしね。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!