ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」助野嘉昭 先生 & 仲英俊 先生

《7》漫画家・助野嘉昭の人生の岐路!

仲:助野先生が漫画家を目指したきっかけを教えて下さい。

助野:ええ~?…仲くん、ある?

仲:ないですね(笑)。

助野:ないよねー!ずっと絵を描いていて、気が付いたらこれしか残っていなかったという(笑)。でも「逃げ場はない」「ここで漫画家になるしかない」と気づくポイントはあったかも。僕の場合は『帰って下さい。』で手塚賞に入選した時かなぁ…。

仲:確かに漫画家志望って、学校を卒業して、周囲も就職したりして…段々と進路というものがリアルになってきますよね。

助野:定食屋のバイトでフライパン振っている場合じゃない…と思って頑張ったり、逆に自信が持てずに泣いて漫画をやめたいと苦しんだり。僕の場合は「いずれ就職活動するけど、もうちょっとだけ続けてみよう」と考えていた頃、『帰って下さい。』の受賞で少し自信になったんです。そしてその辺りから、もう自分の人生、後には引けないと感じるようになりましたね。

仲:好きでやっていて、気づくと漫画家になっていたという感じなんですね。

助野:やっぱり漫画家を目指すのも、諦めて他の仕事に就くのも、結局は自分次第だと思う。あと、池田晃久先生のアシスタントをできたことも大きかった。池田先生は「漫画家は、漫画を描かなくても誰も怒ってくれない」と仰っていて、それがすごい僕の中に刺さったんです。結局、自分の意思で動かないと漫画は描けないんですよね。あとその時、チーフの方が「辞めても潰しが利かないですしね…」とボソッと漏らしていたのも印象的でした(笑)。

仲:リアルすぎて怖い(笑)!

助野:そうそう。だから「辞めるなら今!」。歳を重ねるにつれて就職活動が不利になるだけだし。そして本当に漫画家を目指す人は、結局辞められずに続けてしまう(笑)。

仲:助野先生は漫画家として、特に影響を受けた方はいらっしゃいますか?

助野:作品としては、よく取材でも挙げている『ザ・モモタロウ』(にわのまこと)ですが、作家としては池田先生ですね。心構えというか、プロ意識を持って描いている作家にお会いしたのは池田先生が初めてでした。作家として活躍するには心構えが必要だし、心構えがあっても続けられないかもしれない。そして心構えがない人はたまたまデビューできても、やっぱり続けられない…。池田先生の仕事ぶりから、かなり大きなものを学んだと思います。

仲:漫画家は自分一人で描き続けなければならない、恐ろしい世界でもありますよね。

助野:ある意味スポーツと一緒で、常に自分の技術を磨き、面白いネタを準備して、アンテナも張り続けないといけない。一流のサッカー選手だって、普段から厳しい練習を重ね、それでも試合で結果を出せるかどうか…。何もしていない人が活躍できるわけがない。

仲:それは新人の頃から意識していたのですか?

助野:ええ。新人の頃は時間がたっぷりあったので、漫画も映画もたくさん観て、仕事でもないのに毎週16ページの短編ネームを描いたりして。あと『京都のパゴン』という染物屋さんのweb連載漫画も描かせてもらっていました。あれはかなり勉強になったはず!だから新人の方は、せめて4コマだけでも毎日描くといいんじゃないでしょうか?

仲:それは色んなパターンが身に着きそうですね。

助野:逆に、長いネームをひたすら描き続けるのは効率が悪い気がする。昔、他誌の編集さんに「ネームを描いて、原稿にして、完成させることで初めて力になる」と言われたことがあって。

仲:確かに、実際に完成させた本数は自信にもなりそうですね。原稿を描き上げるって、漫画家を目指す人にとっては一番最初の試練ですし。助野先生が一番最初に完成原稿を描かれたのは、いつ頃ですか?

助野:実は京都精華大学の課題で描いた漫画で…。それも進級のための課題だったので、結構ひどいものだったと反省しています。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!