ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」助野嘉昭 先生 & 仲英俊 先生

《8》漫画を志す新人へ一言!

仲:漫画家志望や新人作家へのアドバイスはありますか?

助野:先ほども言いましたが、普段から技術を磨き、体力もつけて、スポーツ選手と同じように準備して欲しいです。そうしないと連載は取れないし、取れたとしても凄い実力の先輩作家や、才能溢れる新人との競争にさらされるので。

仲:助野先生は新人の頃、やっておけばよかったと思うことはありますか?

助野:時間がある内にデジタルをもっと勉強しておけばよかった。僕自身は読者が面白く読める漫画なら、デジタルでもアナログでもこだわりはありません。ゆくゆくは自分の漫画もフルデジタルになると思っています。

仲:デジタルは慣れたら速いという印象もありますよね。

助野:そう!デジタルで作画効率を上げたら、いっぱい作品が描けて、いっぱい読んでもらえる。それにストーリーを練る時間もできるだろうし。今は作画の時間が決まっていて、ネームや展開を考えるとなると、どうしても一定時間以上は取れない。考える時間がないといい漫画は作れないので、今はデジタルの効率に魅力を感じています。まだ使いこなせていないけれど(笑)。

仲:一ヵ月の執筆スケジュールは決まっていますか?

助野:まず、作画に10日くらい使います。徹夜は基本的にしないし、してもいいものができるとは思っていないので。ネームは…3日プロット、3日コマ割りに使って、全部で6日取れたらいい方かなぁ?ただ、それぞれ延びる場合も結構あって…。

仲:僕がアシスタントをしていた頃って、締切で追い詰められたことはほとんどなかったですよね。全員が体調を崩した時くらいで。

助野:ああ、スタッフが全員風邪で倒れた時!あの時は本当に焦った。

仲:漫画家はデスクワークといえど、実はかなり体力勝負ですよね。

助野:体は大事!「病は気から」というけれど、その気力を出すのだって体なんだし。整骨院にいる友人に聞いたことがあるけど、骨格が歪んでいると健全な精神状態を保てないとか。だからいい漫画を描くには、体作りも大事(笑)。姿勢も体調もしっかりしないとね。

仲:作画中の助野先生は、結構姿勢を気にされていましたよね。背筋を伸ばして、絶対に足を組まなかったり。

助野:姿勢が悪いと腰を痛めるし、何より線が曲がってしまう。それに机にかじりつくような姿勢だと、疲れちゃうじゃない。

仲:まさか漫画家先生から姿勢の話が出るとは…(笑)。

助野:ちょっと言い方が悪いけれど、僕は漫画を「芸術」だとは思っていないんです。僕自身が才能でやってきたわけではなく、自分で努力して、そこで身に着けた技術で漫画を描いてきたから。だからこそ、頑張ったら誰でもなれるものだと思っています。僕に何か特別なところがあるとしたら、せめて出会いに恵まれていたことでしょうか。池田先生しかり、大学の竹宮惠子先生しかり。

仲:決して、才能に恵まれた人しか漫画家になれないということではないのですね。

助野:もし才能が必要というのであれば、好きで漫画を描いて、気づいたら漫画家になっていた…という漫画を楽しむ才能でしょうね。そういった意味では、他に楽しいものがあったりすると、漫画が「仕事」になってちょっと辛いかも。

仲:助野先生は漫画に対して「仕事」という意識はないのですか?

助野:プロ意識は持っているつもりだけど、お仕着せの「仕事」みたいに、嫌々やっている面はまったくないです。でもそれはスポーツ選手でも、俳優でも、それこそ会社の勤め人でも一緒。自分がやりたくて頑張っている人が、いつの間にか成功するのだと思う。漫画家は大変だし、身に着ける技術も多いけれど、ポジティブに受け止めて頑張ればきっと結果も出るはず。これから漫画家を目指す方は、楽しんで努力して、そして面白い作品を描いて下さい。

仲:ありがとうございました!

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!