ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」助野嘉昭 先生 & 仲英俊 先生

《3》デジタル化で作業時間倍増!

仲:『陰陽師』になってカラーが一番変わりましたよね。

助野:デジタルになりました。最近、塗るのが楽しい!

仲:液晶タブレットはどんなものを使っていますか?

助野:20インチの特別高いものでもない型(笑)。設定とかは使いこなせなくて、ろくろの色設定とか実は毎回バラバラで…。まぁ、その場のパッションとライブ感ということで!

仲:ええ。助野先生がPCが苦手なことは知っています(笑)。デジタル導入を決めてから、実際にカラー原稿を描くまで練習はされましたか?

助野:全然!最初の『陰陽師』予告カットもぶっつけ本番(笑)。それにせっかくのデジタルなのに、未だにコピックの頃より倍の時間がかかっている。

仲:それはやっぱり、デジタルは何度もやり直せるから…?

助野:というよりキリがないから。アナログだと自分の技術や好みでできる範囲が見えるので、僕の中で「ここまで描けたら完成!」と、明確にゴールが決まっているんです。でもデジタルはゴールに到達しても、他の作家さんの上手いカラーを見るともっとすごい表現があって、しかも自分の環境でもそれができてしまう。そして少しでもそこに近づこうとすると、本当に終わりが見えない(笑)。

仲:カラー原稿にはどれくらいの時間を使いますか?

助野:今は見開きカラーで3日くらいかかるかも。ペン入れもデジタルになってから倍はかかっているはず。線の細部まで拡大できるから、気になってしまって…。でも実際に印刷されると、細部の差なんて分からない(笑)。なのでデジタルの工程はまだまだ模索中です。

仲:コピックとの違いで苦労された部分はありますか?

助野:実は僕のコピックの塗りって、あるデジタル塗りのイラストレーターさんを参考にしていたんですよ。いわばコピックでデジタル塗りを再現しようとしていた感じ。だからデジタルになっても、塗りの感覚はコピックの頃とそれほど変わっていないのかも。

仲:ちなみに1色原稿もデジタルに移行する予定はありますか?

助野:アナログには限界があるとずっと思っていたので、考えてはいるけど…全然時間がなくて準備できない(笑)。集中線とかトーンの削りとか、読者が見てそんなに違いが分からないのであれば、生産量の上がるデジタルもいいと思っています。もちろん、この辺は色んな考え方の作家さんがいるので、あくまで僕自身の話ですが。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!