ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」助野嘉昭 先生 & 仲英俊 先生

《5》詰まらない秘訣は「描きたいこと」!

仲:アイデアやネームに詰まる時、対処方法はありますか?

助野:え~!?こっちが教えて欲しい。でも、とにかくひたすら歩くとか、体を動かすことは大事かも。前に60ページ描いた時は、片道5分の仕事場を、すごい遠回りして30分かけて敢えて歩いたりしました。体力作りにもなりますし。

仲:ということは、体を動かせば詰まらないということなんでしょうか?

助野:いやいや多少は詰まりますよ(笑)。でもこの前のろくろと悠斗の対決は『陰陽師』の序盤で一番描きたいことだったので、そういう時は迷わない。逆に「このエピソードが終わったら、次を考えておかないと燃え尽きてしまうのでは…」と不安になったり。

仲:つまり描きたいことを持ち続けることが、詰まらない秘訣なんですね。

助野:あとはアンテナを広く張り巡らせておくこと。詰まっている時ほど「ここはこうでないといけない!」みたいに視野が狭くなっている気がする。苦しい時こそ他に色々な見方・考え方ができるようになると、打開策も浮かびやすいと思いますね。

仲:ちなみに助野先生は、連載の先の展開やアイデアは担当さん以外に話しますか?

助野:今はほとんどないです。『貧乏神』の時は仲くんやスタッフにも相談しましたが、みんなオッサンだから大人の意見になってしまう。『陰陽師』は子供の意見を知らないといけないし…。だからせいぜい「子供の頃、何が好きだった?」くらい。ただ時間がなくて、今の子供の流行をリサーチしきれていないのが悩みですね。

仲:では詰まることとは逆に、これまで描いた中で特に手応えがあった場面や絵はどこですか?

助野:『貧乏神』の最終回は描き切った感があった!向かい合って「じゃあね」のコマは、連載当初から頭にあった理想の終わり方で、描けた時の感慨はすごかった…っていうか君、その場にいたよね?

仲:はい(笑)。

助野:最初に決めていたゴールに辿り着けたのは、本当に幸運だった。でも感慨と一緒に喪失感もすごかった。これで市子たちとお別れなのかぁ…と。

仲:ところで『陰陽師』は最終的なゴールは決めていますか?

助野:ビジョンはいくつかあるけど、ライブ感というか、その時面白いものを描きたいので、敢えて決めずに進めています。自分の中では面白いと思える結末はいくつかあるけど、そこに至るまでの流れは固めないようにしています。

仲:理想の最終回が決まっていた『貧乏神』と違う作り方なんですね。ゴールがないことの不安感はありますか?

助野:確かに一つの章の結末が決まっていないと戦々恐々とするけど、『陰陽師』全体に関しては、そこまで不安はないですね。むしろこれからろくろと紅緒はどうなっていくのか、描く側としても楽しんでいるのかも。『貧乏神』の場合は結末が決まり切っていたから「市子と紅葉を別れさせるために描いている」という側面があって…。市子が成長していくたびに、僕は寂しくなっていましたね。

仲:市子と紅葉の距離が近づいて読者が微笑ましく感じる一方、助野先生は逆に別れを意識してしまって…。

助野:別れないという方法もあるんですよ。「二人のドタバタはまだまだ続くのであった。おしまい!」みたいな。でもそれだと、成長物語なのに成長せずに終わってしまうので。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!