ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」鏡貴也 先生 山本ヤマト先生 降矢大輔 先生 & アラカワシン 先生

《3》エンターテインメントの矜持!

鏡 改めて新人さんに言いたいのは「やり直すことは、それだけの価値がある」です。僕は担当さんに修正を1箇所言われたら、なぜそこが不満に感じたのか、それを調べて直すのが仕事だと思っています。言われた場所だけを直せばいいというわけではない。だから大直しではない直しは、仕事をしていない感じがするんです。

アラカワ 鏡先生は小説であれだけキャリアがあるのに、すごい真摯に修正に向き合うんですね。新人の場合、直しが多いと心が折れてしまう人も多いのですが…。

鏡 まずは面白いものを書きたいんですよ。エンターテインメントって、衣食住に比べると必須なものではない。僕たちはそれを敢えて選んでいるのだから、手加減するくらいだったら最初からやらない方がいい。もちろん、手加減しても運で売れてしまうことはある。でも僕はこれまでの仕事で実感しているのですが、エンターテインメントは支えてくれる読者がいて成り立っている。1回当たったからといって、そこから先も支えてもらえるわけではないんですよね。それに子供にとっては、数百円の本は凄い価値があると思うんです。その価値に大人が応えないと、ただの搾取じゃないですか。逆に一生懸命読者と向き合って作ったなら、読者と僕らは仲間になれる。だから「この作品が作りたい」という気持ちだけで動いているのだと思います。

アラカワ なるほど。モチベーションからして作品に向かっているんですね。その時、読者のことはどう意識されていますか?

鏡 作品を作る時、常に読者を頭に置くようにしていますが、それは「皆と繋がりたい」と思っているからなんです。「僕が思う、この感情をもって、皆と繋がりたい」が1セット。「誰とも繋がらなくていい」のであれば、ただの自己満足です。そして「とにかく売れたい」もちょっと違いますね。それだと自分の感情を出す意味はなく、気持ちが続かない。僕が心が折れずに続けられるのは、「作りたい、繋がりたい、仲間とハイタッチしたい」という気持ちがあるからです。

アラカワ 新人の中では、自分のどの気持ちが読者と繋がるのか分からなくて、しまいには自分の漫画が面白いのかどうかすら分からない人も多いようですが…。

鏡 それは多分、「漫画家になりたい」だけじゃないでしょうか。「何かを伝えたい」「何かを描きたい」を持って、あとはワクワクしながら仕事をするべきです。僕は降矢さんからネームが来た時、山本さんの原稿を見た時、いつでもワクワクしてしまいます。

取材&マンガ アラカワシン
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