ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」鏡貴也 先生 山本ヤマト先生 降矢大輔 先生 & アラカワシン 先生

《4》無から成長する漫画の主人公!

アラカワ ライトノベルと漫画原作で、一番変えた部分はありますか?

鏡 一番大きいのは主人公キャラの置き方です。ライトノベルは字が主体の媒体なので、読者には主人公の思想に入ってもらい、そこを軸に読み進めてもらうことになります。なので主人公の抱えている想いや葛藤など、内面を凄く書くことになります。そして漫画原作を書くとなった時、僕は今までとは違う、漫画に合わせた書き方に挑戦しなくてはならないと思っていました。

アラカワ その、漫画に合わせた書き方とは…?

鏡 主人公は最初「無」で、物語で誰かと触れ合うことによって、少しずつ色がついていくようにしたかった。『セラフ』の優ちゃんの場合だと、ミカに生きる理由を貰い、グレンにも生きる理由を貰い、シノアたちと出会ってまた…と。そして彼らからもらったものを信じ、誰かを救うことによってキャラクターとして完成していき、そこから世界を救って行けるようにしたいんです。もちろん優ちゃんにも個性はありますが、漫画の主人公の思想が強過ぎると、カッコ悪いという印象があるんです。グレンは小説版(『終わりのセラフ 一瀬グレン、16歳の破滅』講談社刊)の主人公なので、これまでのライトノベルの方法で作りましたが、優ちゃんは漫画の主人公らしく、できるだけ「無」に保つことに労力を割いて書いています。それは僕にとってなかなか難しく、つい脚本が長くなってしまったりすることもありましたが…(笑)。

アラカワ どんな部分で苦労されたのですか?

鏡 最初の頃は小説を書いている気持ちが残っていて、地の文がやたら長かった。でも連載が進むにつれ「僕の脚本は、降矢さんにだけ伝わればいい!」ということに気づき、そこで大分変わりましたね。その頃からチームとして上手く回り始めたのだと思います。

取材&マンガ アラカワシン
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