ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」鏡貴也 先生 山本ヤマト先生 降矢大輔 先生 & アラカワシン 先生

《8》忙しくてもインプットの時間を!

アラカワ お2人が作品を作る際、インプットしてエネルギーを得ているものはありますか?

鏡 僕の場合は映画です!仕事がどんなに忙しくても、2日くらい休んで映画を観まくったら復活できるくらい。それこそ昔は、とんでもなく観ていましたね。というか僕の印象だと、この業界は作品にいっぱい触れているのは当たり前で、そうじゃないと生き残れない。

アラカワ 鏡先生の場合、特に映画から得るものはありますか?

鏡 物語の構造は映画で相当学んだと思っています。僕はライトノベルをほとんど読まず、映画と漫画だけで物語の作り方を身に着けてきました。そして現在、ちゃんと漫画原作として作品を作れているのであれば、映画の影響が特に大きいと思いますね。

アラカワ 絵作りというよりは、脚本の構成術、という感じでしょうか? 

鏡 僕は漫画家じゃないので、台詞と言い方と脚本とシーン選びが気になります。そのシーンがなぜそこに置かれて、どういう順番で見せたら映えて、どういう台詞が際立たせるのか…と。やはりテキスト屋なので、そればっかり観ていると思います。きっとネームを描かれる降矢さんも作画をされる山本さんも、多分同じ映画を観ても注目するポイントが違うのでしょうね。
降矢 僕の場合はインプットは映画、漫画、小説です。映画だと、人物の仕草でいいものはかなり覚えていると思います。つまらない作品でも、いい仕草があればそこだけは拾っていたり。それらは鏡さんの脚本を読んだ時「あの映画に、同じようないいシーンがあったなぁ」とか出てきます。逆にインプットがないと大変ですね。カッコいい仕草なんて、ゼロからだとそうそう出てこないですよ。だから鏡さんと同様に、時間を作って映画を観るようにしています。

鏡 あとは海外TVドラマが最近凄いです。あれこそ漫画的ですよね。オチで引いて次に繋げる…と、イメージが月刊漫画誌に似ている。今だと定額で映画やドラマが見放題のサービスもあって、昔の自分から見たらパラダイスです(笑)。でも、自分にとって「いい作品」を何十回も繰り返し観ることも重要だと思います。

アラカワ 良い作品を、反復して観た方が良いのですか?

鏡 同じものを何度も観ていると、常に新しい発見があるんですよ。そして反復することで、それが自分の武器になっていく。新人がそういったものを取りこぼすのは、凄くもったいない気がしますね。

アラカワ ところで『セラフ』は神話系の薀蓄など、色々な設定周りの知識が出てきますが、あれはその都度調べているのでしょうか?それとも元々鏡先生の中にある知識なのでしょうか?

鏡 脚本で必要になって調べる場合もありますが、僕は宗教に凄い興味を持っていた時期があるんです。幼稚園がカソリック系で、小・中・高がプロテスタント系の学校だったので、毎日礼拝があり、お祈りも諳で言えました。そして日本の普通の学生でもあるから、漫画やゲームに夢中になり、そこに出てきた北欧神話やギリシャ神話も調べるんです。あとプロテスタント系の学校に行っていたから気づいたのですが、僕の好きなハリウッド映画は、キリスト教を知らないと分からない表現が結構あるんですよ。それもあって、宗教系は作家になる前から自分の中にあり、そのまま使いたくないから、アレンジしたりずらしたりして作品に盛り込んでいます。

アラカワ それでは最後に、連載を目指している作家志望者にメッセージをお願いします。

降矢 作家を目指す際、多くの人にとって一番キツいのはボツですが、それで心が折れてしまうと普通の人になってしまう。そこで折れない、普通でない人が成功を手にできるのだと思います。ぜひ折れないだけのモチベーションを持って頑張って下さい!
鏡 僕は「SQ.」は凄く良い雑誌だと思っています。掲載作品のバリエーションが豊かだし、「少年誌」としての流れも入っている。エンターテインメントを志す人にとっては、とてもやりがいのある場です。僕自身もここで少年向けの作品に挑戦できて、はしゃいでいる面もあると思います(笑)。ぜひ一緒にここで頑張りましょう!

アラカワ ありがとうございました!

取材&マンガ アラカワシン
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