ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」和月伸宏 先生 & 中田貴大 先生

《10》漫画を楽しみ尽くす!

中田 体調管理については気にされていますか?

和月 人に自慢できるような身体はありませんが(笑)、体調が悪いと、一緒に気持ちも死んでしまうのがまずいですよね。面白い漫画は心が健康でないと描けない。だから特に、メンタルの管理を気にしています。気持ちが沈みそうだったら好きな漫画を読み返したり、お笑いの映像や好きな映画を観たりと、いつでも自分の気持ちを上げるようにしています。あとは…徹夜しても仕方ない(笑)。頭も正常に働かないし、体にも悪い。それと漫画家は必ず腰やお尻を痛めるので、椅子や座布団にも気を配りましょう(笑)。

中田 和月先生はインターネットでファンの声をご覧になりますか?

和月 ネットは広いので、敢えて自分の評判を調べたりはしません。基本は執筆のための調べものや、話題作を知るために使うくらいです。そこでたまに自分の作品について書かれていると、ついつい見てしまいますが…(笑)。

中田 新人作家はネットの評判を見た方がいいと思われますか?

和月 「自分は心を鍛えるんだ!これも修行だ!!」という強い意思があるなら(笑)。そこまでの決意があるなら、どんな意見も糧にできるはず。誰かに褒められたいだけなら、やめた方がいいと思います。

中田 僕は読者の書き込みを見てしまったりすると、結構心に来るものがあって…(笑)。

和月 そこは気にし過ぎても仕方ないです。特に一言二言のレビューとかは。…ただ、長文でたくさん書かれている場合は別です。その読者は、それだけの労力をかけて作品を語ってくれるわけですから。例え悪く書かれていても、その意見から得るものはあると思います。

中田 いよいよお時間もなくなってきましたが…新人作家へアドバイスをお願いします。

和月 まずは自分が楽しんで描いて下さい。そして読者が楽しめるように描いて下さい。どちらかだけだと漫画は面白くならない。いずれにせよ、漫画は楽しむことに尽きるかと思います。あとはくれぐれも体を大事に。

中田 新人作家は不安定な立場ですが、頑張り通す秘訣はありますか?

和月 新人の場合は、まず金銭面で不安があるかも知れません。そういう場合はアシスタントをお勧めします!人付き合いが大変かも知れませんが、お金以外にも技術や心構えや同志など、得るものはたくさんあります。次に将来の展望の不安もありますが……それは正直なところ、考えたって仕方ない。自分もどこまで漫画家でいられるのか、不安は常に付きまとっています。でも、「漫画家」という肩書でなくても、漫画を描いて楽しむことはできます。特に今はデジタルで一人で描くこともできるし、同人誌やネットという発表の場もある。昔に比べ、環境はずっと整っているんです。自分も商業漫画家として通用しなくなる時が来たとしても、何らかの形で描き続けていると思っています。

中田 それでは最後に、和月先生にとって「漫画」とは何でしょうか?

和月 「今生で楽しみ尽くすもの」。この一生は漫画の酸いも甘いも味わって、とにかく満喫したい。そして来世では絶対、漫画を描こうだなんて思いません!!(笑)

中田 憧れの先生のお話を伺えて、今日は夢のようです!本当にありがとうございました!!

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!