ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」和月伸宏 先生 & 中田貴大 先生

《9》他メディア、他ジャンルへの興味

中田 和月先生が今、特に興味を持たれているものはありますか?

和月 気になっているという意味ではライトノベルです。今後どのように進化するのか、他人事ながら注目しています。そもそも会話文や文字描写だけで、あそこまでキャラクターを立てられるのは凄い才能だと思うんですよ。ただその反面、萌えに寄り過ぎて恐竜的な進化している印象もあって。本屋で表紙を見るたびに「ここまで女の子にしないといけないのか…」と。あくまで個人的な感想ですが、これだけ可能性があるのに女の子一辺倒はもったいない!

中田 和月先生は、他の作家の作品はチェックされていますか?

和月 ここ2、3年は話題になった作品は観るようにしています。ただ、仕事を忘れて楽しめるのは年に2、3作品あればいい方です。どうしても観ながら「自分だったらこうしたい!」と考え始めてしまって…。面白い上に、自分の波長とも合っていないと引き込まれないんですよ。

中田 では中学・高校の頃から、今まで変わらず好きなものはありますか?

和月 『ブラックジャック』(手塚治虫)『ドラえもん』『パーマン』(藤子・F・不二雄)『まんが道』(藤子不二雄A)は今でも読み返します。あとは『デビルマン』(永井豪)や『ゲッターロボ』(石川賢)も。特に石川先生は狂気がカラっとしていて気持ちいい。自分には描けないから憧れます。

中田 『剣心』はアニメ化や映画化などの展開がありましたが、ご自身の周りで変化はありましたか?

和月 自分は漫画畑の人間だから漫画が一番好きで、そのため過大評価しがちなのですが、アニメや映画で世界の広さを感じました。例えば漫画家になった時は近所の人たちが騒いでくれましたが、アニメになるとそれが町中の反響になり、映画になったら市から公演依頼が来て…。映像メディアの影響力にびっくりしました。

中田 ちなみに和月先生が、メディアの中で漫画が一番好きな理由は何ですか?

和月 単純に、子供の頃から慣れ親しんできたからです。自分の頃はまだゲームも少なく、アニメもビデオデッキが高かった。漫画が一番手に届きやすかったんです。何度も何度も楽しめるし、自分も真似して描いたりもできる。もし時代や環境が違ったら、ゲームやアニメが一番だったのかも知れませんね。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!