ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」和月伸宏 先生 & 中田貴大 先生

《8》目の前の担当を楽しませる!

中田 和月先生にとって連載中の打ち合わせは重要とのことですが、読切や新作の場合は打ち合わせをされますか?

和月 自分の中でまとまっていないものを見せることに抵抗があるので、回数自体は少ないです。ただ、見せる時はそれなりの形になっているので、打ち合わせからの大直しはほとんどありません。全ボツはあったけれど(笑)。形になったものを2、3回打ち合わせをして…で、それ以上かかるものはボツにしていました。打ち合わせの時間も短く、30分くらいです。たまに表現が少年誌の規制に引っ掛かり、長引くこともありましたが…(笑)。

中田 そういった、表現規制に引っ掛かる場合はどうされましたか?

和月 規制自体は大してこだわる部分ではありません。その表現は本当に、漫画家人生を賭けてまで描きたいことなのか?…と。作品の主軸でなければ、他に面白い方法を考える方が建設的だし、時間も有効に使えると思うんです。『剣心』で1回だけ、シリーズの主軸に関わるので担当を説得したことがあるくらいです。こだわりはあくまで対象が大事で、「こだわること」にこだわっても意味がない。

中田 では規制とは別に、自分が描きたいと思ったネームが担当にボツにされた場合、どうされますか?

和月 ボツの理由をちゃんと聞いて、意見として受け入れます。それを踏まえた上で通るものを考えるか、別の面白いものを目指しますね。担当がダメを出すレベルのものは、そもそも読者に通用しません。そして担当の言いなりになったものも通用しない(笑)。過去に担当に言われたことがあります。「ネームを直す時、言われた通りに描いて漫画家になれた新人はいなかった。そこにさらに一手加えるか、全く別の面白いものを描いた人だけが漫画家になっていた」と。

中田 なるほど。意見があったら、常にそれを上回るものを考えるべきなんですね。

和月 作家はまず、目の前にいる担当を面白がらせないと!しかもその人は、多分自分のことをしっかり理解してくれている。そんな人にすら通用しないなら、もっと離れた場所の読者を楽しませるなんて無理です。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!