ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」和月伸宏 先生 & 中田貴大 先生

《2》漫画家は、放っておいても描く!

中田 和月先生から見て、今の新人作家の印象はいかがですか?

和月 印象強いのは「今の新人は絵が上手い!」です。インターネットの恩恵で、今は上手い絵を手軽にたくさん見ることができる。若い頃なら尚更、上手い作品から吸収するものが大きい。自分の頃は漫画や雑誌を買ったり、アニメを見たりして吸収していましたが、現在に比べると時間もお金もかかっていたし…。それもあってか画力では、昔の自分では今の新人に太刀打ちできない(笑)。

中田 和月先生の頃は、漫画を上手くなるためにどのような練習をされましたか?

和月 やはり描くしかないです。気に入った絵をチラシの裏に模写したりとか、毎日毎日絵を描いていましたね。ただ、練習とかノルマとかいった意識はありませんでした。そもそも漫画家になる人って、放っておいても何か描いてしまうんですよ。『るろうに剣心』(以下、『剣心』)を連載していた頃ですが、仕事場からデビューした人たちは、仕事のちょっとした合間でも何か描いていました。TVを見たり喋っている暇があったら、手を動かしている。結果、そういう人が漫画家になっていくのでしょうね。

中田 和月先生の仕事場からは、尾田栄一郎先生、武井宏之先生、いとうみきお先生、鈴木信也先生、山田和重先生、故・しんがぎん先生といったWJ作家陣がデビューされていますよね。

和月 彼らの共通点は、その「放っておいても絵を描いている」という点。そしてもう一つは「自分の漫画が一番面白い」と譲らないところ!あからさまに主張はしませんが、言動に「俺が一番!」という気持ちが透けて見えて(笑)。だから滅多なことでは『剣心』を褒めてくれなかった。

中田 では和月先生はアシスタントの皆さんに、何か特別なことを教えたりされましたか?

和月 全然ないです。尾田先生たちはきっと、どこにいても成功していたはず。それだけ凄いメンバーだった!一つだけあるとするなら、質問されたことは何でも答えるようにしていたことでしょうか。自分は漫画家になれて毎日が楽しい!寝ることができない時もあるけれど(笑)、何より夢がある!そして「皆にもこの楽しさを味わって欲しい!」と思い、技術にしろ心構えにしろ、とにかく聞かれたら全部答えていた。そして皆も、結構質問をしてくれて。

中田 きっと和月先生の仕事場は、相談しやすい空気があったのでしょうね。

和月 あとは単純に、その時のメンバーだと思うんです。尾田先生も武井先生も皆「自分は漫画家になる!」と主張して、お互いライバル視していて。それが良かったのかも知れない。あるいは『剣心』の仕事が凄くきつかったので「早く連載を決めてここを出たい!」という気持ちがあったのかも(笑)。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!