ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」内藤泰弘 先生 & 川崎 宙 先生

《6》アナログ延長のデジタル塗り!

川崎 内藤先生はフィギュアコレクターというお話も聞いておりますが、作中に出てくる武器やメカはフィギュアを参考にされますか?

内藤 それはあります。でも内部構造は勢いで作っているところもあるので、いわゆる「嘘武器」ですね。実在の武器の基本構造に、何とかギリギリ沿っていればOKみたいな(笑)。

川崎 武器を描く時、何を起点にデザインされますか?

内藤 見た目優先で入ります。その方がカッ飛んだビジュアルになるので。デザインはどんどん盛った方が面白いと思っています。それから武器として機能するように、ディテールで帳尻を合わせていく感じです。例えば銃の場合、撃鉄とバレルが一直線であることは外さないとか。

川崎 それら小道具は原稿の段階で作られるのですか?

内藤 そうですね。クラウスの武器とか、何度も出てくるものはあらかじめデザインすることもあります。ただクラウスの武器も、原稿のたびに細部が変わってきているらしいです(笑)。

川崎 ところで内藤先生はデジタル作画ですよね。いつ頃からデジタルで描かれていましたか?

内藤 相当昔で、『トライガンマキシマム』の終わり位から。カラーの塗りはもっと古くてトライガンの第一話の最初の数ページを除いてほぼ全て。「Macintosh Quadra700」(※1991年より発売されたシリーズ)がマイ・ファーストMacです。その頃って、出力センターに行かないとカラーイラストがプリントアウトできなかったんですよ(笑)。

川崎 私の周りでもデジタル作画が増えているのですが、私自身はフルデジタルはまだ少し抵抗があって…。内藤先生はデジタルへの切り替えに抵抗はありましたか?

内藤 ないですね。デジタルで描くこと自体が面白かったので。最初は漫画内のモニター画面をデジタルで作り、それを出力してアナログ原稿に貼ったりしていました。その内にペンのツールで実際のペンと遜色ない線が描けると感じて、そこで切り替えたんです。

川崎 私は『トライガン・マキシマム』のカラーを見た時、デジタルだけどパッと見アナログのような印象も受けました。

内藤 僕の場合、デジタル塗りでもアナログと同じ工程を踏んで描いています。同じレイヤーで延々と色を重ねたりして。もし明日コンピュータがなくなっても、同じように絵が描けるように…という気持ちで(笑)。ありがたいデジタルエフェクトもほとんど使いません。

川崎 『トライガン』はアメコミ風のカラーでしたが、『血界戦線』は新しめというか、最近のアニメのような印象もありますよね。流行の絵柄を意識されることはありますか?

内藤 どちらかというとアメコミなど海外の上手い作家さんの塗りに惹かれますね。だから読者の間で流行よりも、まずは自分が良いと思うものを意識していますね。

川崎 やはりそこも「自分にとっていいかどうか」なんですね。それが内藤先生のテーマになっているのでしょうね。

内藤 そうですね。自分が良いと思わないものは、無理に取り入れても仕方ないので(笑)。

取材&マンガ 川崎宙
『強欲家の天職』『林檎飴騒動』でSQ.19に掲載の俊英!