ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」小畑 健 先生 & 群千キリ 先生

《1》スケジュールは「ずっと描いている」

群千キリ(以下、群千) 今回は宜しくお願いします!まずは『プラチナエンド』の原稿ができるまでの執筆スケジュールを教えて下さい。

小畑健(以下、小畑) 今作で連載が月刊ペースになりましたが、基本的には週刊連載と同じ感覚で描いています。原稿を描かない日はないというか…スケジュールの切り替えがないので、どう言ったらいいものか(笑)。

群千 小畑先生は大場つぐみ(以下、大場)先生から原作ネームが到着したら、ご自分のネームに切り直すそうですが、ネーム期間やその後の原稿執筆期間はいかがでしょう?

小畑 明確に決まっていません。ネームは完成するまでやりますし、早く完成したらその分、原稿やカラーの作業時間になるだけです。実際は原稿中に次のネームが届き、ネームも少しずつ進める感じですね。例えば毎日の原稿作業を夜9時くらいに終えたら、家に戻ってネームを作り、眠くなったら途中でやめて…で、大体3、4日くらいでネームが上がります。

群千 原稿とネームを並行して描かれているのですね。

小畑 大場先生のネームは驚くような場面が多く、先の先まで入る絵を決めておきたいんです。例えば突然すごいキャラクター数の場面が出てきたり、スタジアムが出てきたり(笑)。そういう場合は少しでも早くネームを上げ、前倒しで作画を進めます。だから1話ずつ完成させていくというよりは「とにかく進める」としか言いようがないです(笑)。

群千 原作と作画が分かれているからこそ、1話終えるごとにネーム作業と原稿作業が切り替わるような、リセットするタイミングがないんですね。

小畑 極論すると自分は絵を描くことに尽きるので、原作がある限り作業が途切れることはないんです。だからずっと描き続けてしまうという(笑)。

群千 そうなると、作画資料を集めることも大変そうですね。

小畑 ええ。そのためにも先にネームを決めないといけないんです。どういう資料が必要になるか分からないので。あと、新キャラが突然出る時も苦労しますね。自分の中で固まらないままネームを進めることが多く、結局原稿を描きながら考えるんです。

群千 原稿でいきなりキャラデザインを作るのですか?

小畑 ええ。『プラチナエンド』の2話ではヒーロースーツ(メトロポリマン)が出ましたが、それも原稿のコマごとに試行錯誤して描きました。自分の場合、描きながらじゃないと絵が決まらないんです。そもそもネームでイメージを膨らませている時と、原稿で絵を描いている時って、頭のスイッチの入り方が違うんですよ。そして絵に関しては、原稿の方が色々とちゃんとできるんです。「ここで全部決めないと原稿が終わらない!」となるので。

群千 ちなみにキャラのデザインで、例えばメトロポリマンの案は何か資料を集めて作ったのですか?あるいは元々、小畑先生の中に既に材料があったとか…。

小畑 このスーツは最初『アイアンマン』をイメージしつつ、だんだん『バットマン』が入ってきて、描くにつれてまた別のものが入ってきて…と、今まで観てきてカッコいいと思ったものを、少しずつ組み合わせていく感じでしょうか。