ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」小畑 健 先生 & 群千キリ 先生

《5》表情への意外な苦手意識!?

群千 小畑先生は、描いていて楽しいキャラの感情表現はありますか?

小畑 「感情がない顔」が楽しいです。無表情が好きなんですよ。

群千 ええ!?その理由はありますか?

小畑 無表情は顔の造形が整っているからです。逆に喜怒哀楽をつけると、どうしても造形が狂うじゃないですか。自分は元々、カッコいい顔を描くことが好きなんです。そして怒ったり笑ったりした顔は苦手だし、造形を狂わせて描くことがストレスでもあるんです。だから原稿でも、表情は何度も描き直してしまうんですよね。そういった意味で、『DEATH NOTE』で月(ライト)の表情は描いていて楽しかったです。無表情っぽいのに、凄く悪いことを考えていたりして。リュークたち死神も、人間のような表情がないので描きやすかった。

群千 では次に、背景などの画面作りですが、先ほど「余白があると描き込んでしまう」と仰っていました。どこまで描き込むか、何かルールはありますか?

小畑 多分あると思うのですが、これも先ほど言ったように、自分の癖を抑えたいので決めていません。自分自身は写真みたいな背景が好きですが、一方でそうならないようにも意識しています。

群千 背景を写実的にする場合、写真を撮影して加工するいう方法もありますが、そういった手法はいかがですか?

小畑 リアルは好きですが、やっぱり漫画なので写真そのままには描かないですね。どこかしら漫画っぽさを出すようにしています。線を抜いて、キャラの絵に合わせて情報量も減らしたりして。

群千 小畑先生が執筆で一番楽しい作業は何ですか?

小畑 作品によって変わりますが、今はネームが楽しいですね。週刊連載では限られたページ数に収めることに苦労していましたが、今作はある程度ページの融通が利くので、シーンを増やしたり間を入れたりと、演出を考えるのが楽しいです。思えば長い間漫画を描いていながら、実は見開き一枚絵をあまり描いていないんですよね。今作では、のびのびページを使えるので楽しみにしています。