ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」矢吹健太朗 先生 & 御木本かなみ 先生

《6》「柔らかさ」こそ矢吹絵のこだわり!

御木本:矢吹先生はあの素晴らしい女の子の身体を、どのように修得されたのですか?

矢吹:自分は元々女の子の絵が苦手で、それを克服するために『とらぶる』を始めた側面もあって…。最初は上手い作家さんの絵とか、実写のグラビアとか、出来のいいフィギュアとか、色々なものを見てひたすら練習しました。中でもアニメは特に参考になりましたね。動きがありつつ、2次元で漫画とも親和性が高いので。そして描いていく内に自分の中に理想のラインができてきて、今では自分の中の材料で描き続けている感じです。

御木本:矢吹先生の理想のラインとはどのようなものですか?

矢吹:リアルとか整合性よりも、まず「よりエロく見えるライン」を重視しています。特に柔らかさが伝わる手触り感が重要!単にふわふわ描くのではなく、骨格も意識します。柔らかい中に鎖骨とか肘とか硬い物が感じられると、より肉感が強調されるんですよ。あとはヤミの脚に食い込んでいるベルトとか、身に着けるアイテムも工夫しています。あのベルトがあると、太もものむっちり感がいつでも表現できるので。

御木本:やっぱりあの柔らかさはこだわりの賜物ですね!

矢吹:自分の元々の絵柄はシャープな路線でした。『とらぶる』を始める頃に石恵先生の絵を見て「自分もこんな表現ができるようになりたい!」と思い、柔らかさを相当意識するようになりました。ちなみに石恵先生はガイドブック『とらぶまにあ』でコラボさせて頂きましたが、やっぱり上手かった!むしろ自分でも女の子を描くようになってから、ますますその上手さが分かるようになりました(笑)。

御木本:漫画のキメでもあるお色気シーンですが、より魅力的にするコツはありますか?

矢吹:その絵で一番描きたい部分が、どのアングルだとインパクトが強いか考え、そこに向けてパースを強くすることかなぁ…?例えばお尻を見せたいなら、下から見上げるような構図にしたり。さらにはそういった決めゴマを、ページをめくった最初に置くとかですね。

御木本:お色気シーンのアイデアは、常にストックを溜めているのでしょうか?

矢吹:いえいえ!ほとんどが原稿の最中に絞り出す感じです。引き出しがあったとしても、大抵のものはやり尽くしてしまっているので(笑)。もちろん『とらぶる』初期の頃は「今回はこんなお色気を描こう!」と決めていましたが、さすがにもう無理。ただ「お尻を見せる!」「ナース服!」「電車の中!」みたいにポイントだけは決めるようにしています。

御木本:お色気シーンでの股間の隠し方とか、かなり独創的なものがありますよね。あれはどのタイミングで考えられるのでしょうか?

矢吹:これもほとんどが原稿の最中です(笑)。コマに絵が入って前後を見返している内に、「あ、これを配置すれば…」とか、周囲の使えそうなものに気づくんです。つまり絵が入っていないと浮かばないので、結局ギリギリまで粘ることになります。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!