ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」矢吹健太朗 先生 & 御木本かなみ 先生

《10》矢吹流モチベーションの上げ方!

御木本:矢吹先生のモチベーションの上げ方を教えて下さい。

矢吹:絵が上手い人の作品を見ることです。自分は負けず嫌いな性格で、上手い絵を見るとライバル心を刺激されて燃えるんですよ。あとは小さいことでいいから、修羅場のたびに自分にご褒美をあげること。それこそ「美味しい物を食べる」「1日だけ遊びに行く」くらいでいいので。そうすると「ちゃんと遊んだから、次の原稿もしっかりやらないと!」というテンションになれます。

御木本:他の作品を観たりとか、いわゆるインプット作業はされていますか?

矢吹:昔から日常的にしていて『とらぶる』からは特に意識しています。映画を観たら「台詞回しに無駄がないなぁ」と脚本をチェックしたり、アニメですごい動きがあったらスローで分析したり、作り手の目線で考えるようにしています。だから面白い作品も仕事意識が働いてしまって、純粋に楽しめない(笑)。

御木本:新しい連載漫画やアニメは逐一チェックされていますか?

矢吹:時間がないので全てを追いきれませんが、何が流行っているのかは常に気を付けています。内容もそうですが絵柄とかも。特に女の子の絵って、流行り廃りが激しいですし。『とらぶる』も鼻を小さくしたり目を大きくしたり、流行りを意識して少しずつ絵柄を変えているんです。

御木本:矢吹先生にとって、漫画家を目指すきっかけになった作品はありますか?

矢吹:強いて挙げるなら、アニメですが『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)かなぁ…。自分にとって、作り手を強く意識した最初の作品でした。全編から作家性が出ていて、深読みや妄想ですごい熱中させられて…。それまで漫画やアニメは受け取って楽しむものでした。でも『エヴァ』から、作品とは作り手が人を楽しませるために生み出したものだと実感し、自分も作る側になりたいと思うようになったんです。

御木本:ところで矢吹先生は、漫画を描くことに飽きたり、行き詰まることはありますか?

矢吹:実はないんですよ。休みの日でもつい絵を描いたり、新キャラを考えたりしてしまうんです。基本的に描くことが趣味でもあるんですよね。

御木本:では漫画を描くことに対して「仕事」という意識はどれくらいありますか?

矢吹:やはり趣味だと思っています(笑)。もちろん仕事として苦労する面はいっぱいありますが、漫画の中でキャラを動かしてストレス発散もしているので。ありがたいことに天職なのかも知れません。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!