ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」矢吹健太朗 先生 & 御木本かなみ 先生

《9》気付いたら締切が存在していた…!

御木本:矢吹先生が漫画家になられるまでのいきさつを教えて下さい。

矢吹:子供の頃から絵をずっと描いていて、高校で進路を考える頃「自分が描いてきたものがどれほどのものか確かめたい」と、初めて道具を揃えて投稿作品を描いてみたんです。すると秋本治先生に審査員特別賞を頂けて…。それがなかったら別の進路に進んでいたと思います。

御木本:「漫画家になる!」と決意されたタイミングはありますか?

矢吹:最初がそんな感じなので、結構なし崩し的に今に至っているのかも(笑)。投稿したら編集部から電話がかかってきて、「次はネームを描いて」と言われて描いたら、いつの間にか原稿の締切が迫ってテンパっていて…。結局、腰を据えて作品を描けるようになったのは『BLACK CAT』が終わってからでした。

御木本:本当に、あっという間に漫画家になっていたんですね!

矢吹:なっていたというか、気付いたら締切が存在していたという(笑)。高校の年末のテストの時にすら読切の締切があったくらいで…。

御木本:まさに『バクマン。』(大場つぐみ・小畑健)みたいですね!

矢吹:以前、小畑先生は対談で、自分のことを「新妻エイジみたいに見えていた」と光栄なことを仰って下さいましたが…実際はただテンパっていただけで(笑)。エイジみたいな天才で、あれだけ描きまくれたら良かったのに…!

御木本:ところで矢吹先生は新人の頃、どのような修行をされましたか?

矢吹:デビューの1年後くらいには連載を獲得できたので、実はアシスタント経験がほとんどないんです。少しだけ小畑先生の仕事場でお世話になったくらいで。それは非常に運が良かったのですが、逆に漫画作業全般の経験が乏しく、後々苦労することになってしまって…。

御木本:では連載を始められて直面した、一番の苦労は何ですか?

矢吹:やはり「毎週、締切が来る」という恐ろしさです(笑)。そして原稿を上げることに精いっぱいで、読者を意識する余裕が全然なくて…。自分には漫画しかないと思い込んで、一人で追い詰められていましたね。今でこそ言えますが、適度に遊んで息抜きをした方がはかどったのかも。キツい時ほどリラックスするべきですね。

御木本:その境地に達したのはいつ頃ですか?

矢吹:それこそ『とらぶる』を始めた頃です。自分が楽しいものを漫画に入れようと意識し始めたのもそこから。『BLACK CAT』の頃、女の子を描くことが楽しかったので、それがずっと残っていたんです。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!