ジャンプSQ.若手作家が聞く「マンガの極意!」矢吹健太朗 先生 & 御木本かなみ 先生

《2》キャラを被らせないデザイン術!

御木本:『とらぶる』のキャラはあれだけ大勢いるのに、性格も個性的で被りが少ないですよね。被らせないコツはありますか?

矢吹:やはり既存キャラの逆算で作っているからだと思います。「ララや春菜と被らない」という前提で考えて、お堅くて強気な古手川が生まれたりとか。それ以降も、「既存のキャラにいないコンセプト」を基準に考えるようにしています。

御木本:ビジュアルの差別化はいかがでしょうか?

矢吹:実はかなり難しいです!全員が美少女で同年代という設定なので、描き分けにも限度があって(笑)。やはりシルエットでの差別化が重要ですね。まず全身をイメージして「輪郭だけで誰か分かるライン」を考えるんです。それさえ確立できれば大丈夫!…あとは白黒のバランスで印象を変えたりとか。例えば主人公のリトは髪にトーンを使い、どこにいても目立つようにしているんですよ。他には、一緒にいることが多いキャラは、意図的に対照的なビジュアルにしたり…とか。

御木本:例えばララと春菜とか…。

矢吹:そうそう!「この二人は絡みが多いから、髪形も色も正反対にしよう」と。

御木本:『とらぶる』は衣装のバリエーションも豊富ですよね。デザインで参考にされているものはありますか?

矢吹:ファッション誌を買ったり、ネットで検索して調べています。全体的に子供の服を参考にすることが多いですね。子供服って大人のものよりデザインが分かりやすくデフォルメされていて、漫画でアレンジする分には使いやすいので。あとは女性スタッフの意見も聞いています。

御木本:ララのドレスフォームやネメシスの和風ゴスのような、作品オリジナルの衣装はどのように考えられていますか?

矢吹:オリジナル衣装は逆に何も見ません。最初に考えたキャラのシルエットに合わせて、形が成立するようにパーツを考えて当てはめる感じでしょうか。ララだったら頭の上に丸い帽子をつけたり、羽根や尻尾をつけたりして、全体像から徐々に細部にピントを合わせて掘り下げるんです。

御木本:確かにララの衣装や尻尾って、輪郭から独特ですよね。

矢吹:実はララの尻尾って、あのシルエットにしたいがためにつけたものなんですよ。シルエットができてから「尻尾があるのは宇宙人だから」と設定を後付けしたんです(笑)。

取材&マンガ 仲英俊
『かなの一筆』『妹ひえらるきあ』でSQ.19掲載の俊英…!