心温まる物語でとても良かったです。背景や小物もしっかりと描こうという姿勢が見えて好感が持てます。相手からの言葉を受けてのキャラクターの表情やちょっとした間の取り方、シリアスなシーンでの背景の大きな余白など、疎密のバランスがお上手だなと思いました。作品のあちこちに光るものを感じます。絵に関してはまだまだ伸び代がある（伸び代しかない）年齢なので、今後もどんどん作品を描いていって頂きたいなと思います。

終始テンポが良く、面白く読み進められる作品でした。絵柄もスッキリと見やすく、キャラの表情も豊かで良かったです。中盤までの勢いに比べ、ラストが小さく纏まってしまった感じがします。破天荒にブッ飛ぶか、読者を唸らせる捻りの効いた終わりが見てみたかったです。また、色んな小ネタがとっ散らかったまま進む構成なので、冒頭のネタ以外「三匹の子豚」を借りる必要性もあまり感じませんでした。ちょっとした１コマや１ネタを大事にすると、作品の芯も組み立てやすくなり、読み手側の「なんか面白かった」という感想から一歩抜き出る事が出来ると思います。

女の子がとても可愛らしく、終始クスッと笑えるストーリーでした。華やかな絵柄で、読者の目を引き読ませる力をお持ちです。特に冒頭の２枚は完璧な完成度の「起」でした。ラストをおじ様で締めるのであれば、おじ様にもう少しスポットが当たると良かったかなと思いました。短いページ数で収めるには、主軸からブレない様にネタやセリフの取捨選択が必要です。

好きな事を上手く表現出来ない二人が出会う事によって生まれる化学反応が、心の動きと共に綺麗に作品に落とし込まれていました。青春ドラマの様な爽やかさで、読後感も良かったです。物語上で大事な要素の一つであるスケートボードのプレー描写が甘く、少ない気がします。下手ながらもトリックに挑みボーディングを心から楽しんでいる主人公をしっかりと描く事で、馴染みの薄い読者にもその良さが伝わり、中盤までのフラストレーションとその後のカタルシスが活きると思います。読者が応援したくなる様なキャラ・展開にする為に、必要な描写を惜しまず組み込んでいってみて下さい。

しっかりとしたストーリーで設定や説明も過不足なく、とても読みやすい構成でした。特にセリフ回しや言葉のチョイス、場面転換にとてもセンスと魅力を感じます。あとはアクションの説得力や世界観の渋さを表現出来る程の画力が伴ってくれば、かなりレベルの高い作品が期待出来ると思います。今必要なのは本当に画力だけです。