新人漫画賞SPARK 24年12月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

個性光る作品多数!佳作1本出る!!!!
[総評]三好 輝 先生

どの作品も物語としてしっかり纏まっていました。技術や個性が光る作品もあり、楽しく読ませて頂きました。画面構成がお上手な方が多く、総じてとても読みやすかったですが、全体的に絵に華やかさが足りないのが惜しい点。一目見ただけでページを捲りたくてワクワクする、キャラクターの人生を知りたくなる、そんな読者を惹き付ける〝漫画の一番の強み〟を忘れず追求していって欲しいです。また、読み終わった後に心に残り続ける様な作品は少なかった印象です。「ふーん」という感想で終わらせない為に、キャラクター同士の会話であっても、その向こうにいる読者に向けて訴えたい作者の想いを込めてみてください。外側に向けてエネルギーを放出するイメージで作品創りに取り組んでみましょう。

[総評]ジャンプSQ.編集部

それぞれ個性と長所を感じる作品が最終候補に残った印象だ。全体では画力的な面で勿体無い作品が多かった。キャラや話は当然重要だが、実際には見た目(絵)で判断される部分も大きい。自分の作品が誌面に掲載される可能性がある、という意識で次の作品に取り組んでみると細かい部分も気になって、より上達が早くなるはず。

月間TOP 佳作 賞金30万円
BEAUTÉ45P
増井赳彦23歳 東京
あらすじ
パリの凱旋門には不幸な女性の顔を綺麗に作り変え、その人生を変える魔法の鏡があると言われている。容姿に絶望し、追い詰められたマドレーヌは、そんな伝説に縋るように凱旋門を訪れる。すると、置かれた鏡の中からメイクアップアーティストのロマンと名乗る人物が現れた。彼を追って鏡の中へ入るとそこには…?
GOOD POINT
主人公のコンプレックスをどう生かすのか、どう勝負をするのか、メイクを題材にアイデアのある設定や、見せ場を考えられているのが素晴しい。ロマンのキャラも立たせられていて面白かった。独特なコマ割りだが、演出と読みやすさが同時に成り立っていた。
NEXT STEP
中盤の展開がやや中だるみしてしまったが、ラストに向けて話をまとめる力は高いと感じた。大枠の流れを決めた後ネームの段階でいろんな選択肢を考えてみると、より読者を楽しませることができると思う。絵柄は柔らかさとポップさが出てくると良さそう。
三好 輝先生からのコメント

独特なセンスに魅力がある作品でした。濃いキャラクター達を作家側でしっかりと制御できていて、ギャグシーンとシリアスシーンの抑揚、そして所々に入るキメのセリフも輝いていて良かったです。〝メイク〟がテーマですが、絵柄にも良い意味で強いクセがあるので、〝醜いヒロイン〟が本当にこの作中で醜い顔なのか、それとも本人がそう思い込んでいるだけなのか、中盤まで確信が持てませんでした。冒頭あたりで街に暮らす人々の顔をしっかり描いてヒロインと対比させ、美の基準を読者に親切に提示すると分かりやすかったでしょう。

審査員特別賞 賞金20万円
残月egg40P
森海克俊20歳 神奈川
あらすじ
自分しか見えない痣が体全体に広がってしまった亮。サークルの飲み会で訪れたお店で、店員から「残月egg」なる料理を注文すれば痣を取ってあげると持ち掛けられて…?
GOOD POINT
絵柄と演出が派手で圧倒される。舞台となるお店「残月楼」の設定だったり、痣を治癒するためのシステムの中に変わったアイデアが盛り込まれていて工夫を感じる作品。
NEXT STEP
漫画的に企画自体の派手さを考えることができると、より読者の興味を惹くことができる。能力だったり、キャラ自体のかっこよさやフック、納得感のアイデアをもう一捻りしてみよう。
三好 輝先生からのコメント

キャラクターの心理描写が丁寧で、事象の説明も過不足なく、とても読みやすかったです。何気ないコマやセリフにも意味が持たせてあり、物語全体を俯瞰して緻密に構成が考えられていると思います。痣を取るシーンでは一転して演出重視で力が込もっており、流動的な画面使いも格好良く、ギャップが効いていました。痣や過去と向き合い悩みから解放された主人公がこの先どうなっていくのか、〝残月〟に関する素敵なシーンを活かし、彼自身の夜明けを感じさせるラストにしてみても良かったと思います。

編集部特別賞 賞金15万円
想造力31P
ミートグラタン22歳 埼玉
あらすじ
想像した物が実体化する「想造力」が発現した社会。高校生の空は、幼馴染の麗華が失恋で泣いている姿を見かける。その失恋は空自身の想造したものと深く関係していて…?
GOOD POINT
よくある普通のお話かと思いきや、後半の展開に状況をひっくり返すような意外性があり面白い。キャラデザが魅力的で、重要な決めゴマで細かく作画ができていて良い。
NEXT STEP
状況が読者に適切に伝わっていない印象だったので、まずは時系列の整理と伝え方を工夫してみよう。また「想造力」という能力で何ができて何ができないのか、設定をさらに練れると良い。
三好 輝先生からのコメント

冒頭の主人公の登場シーンでギャグ漫画かと誤解しましたが、心温まるストーリーで良かったです。起承転結がちゃんと練られており、ラストの濁された真実も味わい深い読後感を残してくれました。作画の面でも背景までしっかり描こうという姿勢が見て取れ、好感が持てます。一方で、大事な〝想造力〟の設定が非常に甘いのが残念なところ。物凄い能力が人類に備わっているのに社会構造に影響が無さ過ぎるなど、無用な疑問点が湧いてしまうのが勿体なかったです。二人の心の交流を軸にするのであれば、現代日本の学生でなくても良かったのかもしれません。

最終候補 賞金10万円
Afreet-イフリート-55P
金井ひろあき22歳 大阪
あらすじ
世界では魔物が跋扈していたが、報復を恐れる人類にとって魔物の討伐は禁忌となっていた。西の村に訪れたアルバートは「魔物狩り」だとバレてしまい、投獄されるが…?
GOOD POINT
分かりやすく描こうという意識が随所に感じられ、構成・セリフ・絵と全て丁寧な作品だった。魔物の一枚絵に不気味さがあり、独創的な造形で迫力を感じることができた。
NEXT STEP
熱量高い絵で描かれているので、次回は重要なコマが目立つよう画面上の緩急を考えてみよう。キャラ同士で会話をさせて、登場人物に話を聞かせると、読者により響くようになると思う。
三好 輝先生からのコメント

細部までしっかり作画されており、コマの配置と大きさのバランスも絶妙で、画面作りの上手さが際立っています。魔物のデザインもとても凝っていて、後に再び見直してしまう程に精良でした。王道の討伐もので綺麗に纏まっている反面、少女の登場あたりで最後までの展開が予測できてしまったので、それを裏切る様な捻りともう一歩踏み込んだ設定が欲しかったです。ネーミングひとつにしても、「魔物狩り」や「西の村」といった当たり障りのないものではなく、ちゃんと設定する事で世界観を形取る一助になります。

最終候補 賞金10万円
太田さんと殺人鬼の僕31P
吉田カナタ25歳 群馬
あらすじ
文化祭のおばけ屋敷の中で殺人鬼役をやることになった僕は、変人の太田さんに目をつけられて、放課後に映画を見ながら役作りについて研究することになってしまい…?
GOOD POINT
殺人鬼役を研究するという突飛な題材や、心情の描写で現れる意表を突くようなシーンで驚いた。セリフ回しにも良い意味で引っかかる部分が多いことにもセンスを感じる。
NEXT STEP
なんとかして画力とキャラデザの向上を試みてほしいと思う。また、読者がより主人公に興味を持てるよう、キャラを立てることができれば、一気に物語に引き込めるような力があると思う。
三好 輝先生からのコメント

ヒロインのキャラクター性と熱さに引っ張られ、ページが進んでいく作品でした。等身大の高校生である主人公とのテンションの差も良かったです。〝演劇〟を扱うにしては、キャラの表情の硬さや表現の乏しさがマイナス点になってしまっています。主人公が演技に目覚めるシーンは、普段から舞台上にいるかの様な立ち振る舞いのヒロインを更に上回る熱量と演出を与える事が必須です。作家の技量が大きく問われる部分が多いテーマなので、ぜひ作品と共に今後も成長していってもらいたいです。

最終候補まであと一歩 賞金1万円
人間機55P
白川えいり21歳 新潟
GOOD POINT
背景や細かい絵まで丁寧に描かれていて、画力レベルの高い原稿として仕上がっている印象だった。キャラデザも魅力的。作中に登場する異能を、絵的に面白く表現しようという工夫がみられるのもとても良かった。
NEXT STEP
ストーリーの主軸と設定がバラバラになってしまったのが惜しい。この物語自体が「誰の何のための話」なのか、死神とAIという二つのファンタジーのどちらか一つだけに絞るなど、シンプルさを意識してみよう。