新人漫画賞SPARK 24年8月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

新たな才能の芽吹き!編集部特別賞2本出る!!
[総評]アミュー 先生

今回は一つ一つのエピソードが「何となくの繋ぎ」で描かれている作品が多かったように思います。よく見るようなエピソードを繋ぎ合わせているので、全体的に「読んだことあるな…」という印象でした。たとえ設定やテーマ、エピソードがよくあるものであっても、そこにひとつ「自分ならでは」があれば作品として一気に光るので、そこはなんとかがんばって「自分の強み」を見つけて欲しいです。見つけられるまでは、せめてめちゃくちゃ丁寧に描くとか、細部までこだわるとか、今の自分にできる最大限を続けていくといいと思います。それらは必ず画面に反映され、誰かの目にとまりますから。まずは出来ることから、着実に!

[総評]ジャンプSQ.編集部

今回は全体を通して描きたいポイントはしっかり描いている一方で、それ以外の要素や細部を疎かにしている作品が多かったのがもったいなかった。自分の描きたいことを読者に伝えるには、それを支えるストーリー構成、キャラクター、丁寧な作画の力が不可欠なので今回足りなかった部分を補って次回作に取り組んでほしい。

月間TOP 編集部特別賞 賞金15万円
新宿家賃13000円お祓い生活37P
星村 定25歳 埼玉
あらすじ
上京してきた結城玲太は、新宿で家賃13000円という破格の物件に住み始めたが、そこは魑魅魍魎が巣くう事故物件であった。悪霊に襲われる寸前のところを妖精のような姿をした巫女の幽霊に助けられ、二人は協力して悪霊を倒す奇妙な共同生活をスタートさせる。
GOOD POINT
読みやすいシンプルなコマ割で構成されており、テンポよく進むストーリー展開にできていた。「こんな巫女が自分の部屋にいたらいいな」と思えるキャラクター作りもできており狙いがはっきりしていた。ラストもしっかりとプラス方向で終わっており読後感が良い。
NEXT STEP
キャラクターの見た目や悪霊たちのデザインなどに工夫がなく、ステレオタイプで記号的な描き方になっているので自分自身の漫画の世界観を絵で表現する気持ちで描いてほしい。読者にその漫画のどこをどう楽しんでほしいのかを常に意識して描くことを心がけよう。
アミュー先生からのコメント

導入は簡潔で分かりやすく良かったです。このテンポ感のまま進めて欲しかったのですが、起承転結の承の部分がダレてやや冗長気味になってしまった印象です。承はとても大事な部分で、ここを面白く描けていないと転結も盛り上がりません。本当にこのエピソードがキャラの魅力を伝えるベストなものなのか、関係性の変化を表現するよりよい描き方はないか、試行錯誤してみて下さい。

編集部特別賞 賞金15万円
青を翔ける翼37P
小島朝日19歳 香川
あらすじ
カラス帝国から祖国を守るために戦う鷲軍の一員である鳶は、戦果を上げるために焦り、単独行動をとっては隊長の狗鷲に叱られていた。ある日、カラス帝国と衝突した鳶はようやく一騎の撃墜に成功する。しかしその矢先、狗鷲が撃たれて負傷してしまう。狗鷲から代理の隊長を任された鳶は再びカラス帝国に立ち向かう。
GOOD POINT
センスあふれる絵柄で魅力的に描けているキャラクターの表情がいくつもあった。上官の狗鷲と部下の主人公の関係性を描きたいという目的がはっきりとしていて、その一点に絞ったストーリー構成は潔く、自分の強みを最大限に活かしていたのが良かった。
NEXT STEP
壮大なファンタジーの舞台設定を用意したにしては描写と説明不足でその世界観が十分に伝わるように描けていなかった。どこまで描けば読者に伝わる形になるかはよく精査してほしい。キャラの描き分けも不十分で、これでは見分けがつかないので注意を。
アミュー先生からのコメント

万人受けしそうな魅力的な絵柄です。ただお話は、描きたいシーンだけを繋げて描いているような印象です。主人公たちの置かれている状況やキャラの関係性など、読者の想像に頼る部分が多いのでもう少し丁寧に見せられるようになるといいなと思います。また、オリジナルの世界観にもかかわらず、背景を疎かにし過ぎているのは残念でした。キャラ絵やシーンの魅せ方などは上手いので、この作者さんならもっと上のレベルのものが描けるはず。期待しています。

最終候補 賞金10万円
心象スケッチ55P
星埜いろ29歳 福島
あらすじ
美術の才能がある雨は、子供の頃からコンクールでいつも一番をとっていた。しかし次第に周囲の人間が雨の才能により挫折をしていく中で絵を辞めたいと思いはじめ…?
GOOD POINT
綺麗な絵柄でキャラクターのアップの顔が特に良く描けていた。主人公が抱えている問題を冒頭で明確に示した上で、それを解消する物語の流れに淀みがなく読みやすい。
NEXT STEP
抽象画という題材が難しすぎたのも問題だが、主人公の何がすごいのかを絵で表現しないとセリフだけでは伝わらない。ストーリー展開も55pある割りには話が進まないので冗長に感じる。
アミュー先生からのコメント

可愛くて綺麗な絵柄です。目の表情もいいですね!見せ場の絵を逃げずにしっかり描いていることや、キャラを中心に据えていることも好感が持てます。ただこのテーマは、すでに沢山の作家が描いてきたものでもあるので、自分ならではの特別な部分がないと「何回か同じような作品読んだことあるな」という印象で終わってしまいます。キャラの掘り下げ、展開や演出のエ夫など、もう一歩踏み込んで描いてみて下さい。

最終候補 賞金10万円
こぼれびさま34P
物語ゴーレム26歳 福岡
あらすじ
山奥の村の洞穴に守り神としてこぼれびさまが祀られていた。その世話役の巫女である凛子は、決して見られてはいけないこぼれびさまの姿を遭難者に見られてしまい…?
GOOD POINT
閉鎖的な村の奇妙な風習というホラーの定番の設定を冒頭の描写で丁寧に表現できていた。こぼれびさまが実は宇宙生命体という定番からのずらしも上手く機能していた。
NEXT STEP
ストーリー先行すぎて主人公が何をしたくてどう感じているキャラクターなのかを描けていなかった。絵が雑に見えるので、線の太さやデジタル作画のトーンの設定も見直してみてほしい。
アミュー先生からのコメント

基本的なことは出来ています。話もそつなく進められていますが、よく見かける題材でもあるのでさらっと読み終えてしまいました。キャラではなく展開で読ませていくスタイルは、その分構成や魅せ方など、技術や工夫が相当必要になってきます。どう描いたら、どういう展開にすれば他の作品と差別化できるか、色々模索してみて下さい。

最終候補 賞金10万円
「死神」の子孫40P
鴨野ハシ27歳 千葉
あらすじ
会社をクビになり自暴自棄になっていた忍田の前に古典落語「死神」のように一人の死神が現れる。死神は忍田に、死期の近い人間を救うために死神を消す呪文を授けるが?
GOOD POINT
古典落語を題材にしようという企画の着眼点は面白い。緊迫した状況の追い詰められた表情や、死神の不気味で怖いキャラクター性の表現の仕方にフェチを感じられて良い。
NEXT STEP
ストーリーは古典落語「死神」をなぞっているだけになってしまっているので構成力は評価できない。舞台を現代に置き換える以上の独創性で自分なりの「死神」を表現できればよかった。
アミュー先生からのコメント

古典落語の「死神」をほぼそのまま漫画にしているので、コミカライズ作画としての評価になりますが、雰囲気はよく出せていると思います。オリジナル要素として死神の話の子孫という設定になっていますが、落語を知らないと「???」というまとめ方なので、もっと別な部分でのオリジナリティを見られたら良かったなと思います。