新人漫画賞SPARK 25年5月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

無限の可能性に期待が高まる!佳作3本出る!!!!
[総評]葦原大介 先生

今回も楽しく審査させて頂きました。作家さんそれぞれに強みとこだわりが感じられて、クオリティー的には平均点が高い回だったように思います。一方で当然、それぞれに弱点もあるので、担当さんの力を借りて、自分の弱点を炙り出し、ちょっとずつ克服していってほしいと思います。(主にネーム部分)「苦手な部分は思い切って捨てて、得意なことで勝負しろ」という創作論もあるとは思いますが、漫画はいろんな要素が複雑に絡み合ってできあがるものなので、「何かを捨てたら他の部分が伸びた」ということは基本的にないです。現状で繁盛してないごはん屋さんが、「店の掃除と接客を捨てたら、料理の味がアップして繁盛した!」とは、普通はならないと思います。単に「店が汚くて接客が悪い、繁盛してないごはん屋さん」になってしまうだけです。なので、最低限商売が成立するレベルまでは、苦手なことやできてないこと、やりたくないことにきちんと向き合っておくと、連載まで辿り着きやすくなるし、その後がいろいろ楽になると思います。なお、少年漫画で「キャラクターが大事」とよく言われるのは、「魅力的なキャラクターは作品の欠点を見えにくくしてくれるから」という側面もあります。なんだかんだそこで救われることもあるので、キャラクター作りの鍛錬も並行してできるといいんじゃないかと思います。ガンガン鍛えましょう。ご応募ありがとうございました。

[総評]ジャンプSQ.編集部

最終的に佳作デビューを果たした作家が3人出る豊作回となった。画力の高く、個性が溢れる印象的な作品が多く集まったと思う。作家本人が描きたいものが見えにくかったのが少々勿体ない。読者への売りポイント、そこを活かすことを考えつつ、「この物語で何を一番描きたかったのか」という軸を大切に持っていてほしい。

月間TOP 佳作 賞金30万円
君の隣に宇宙人53P
城月かなた 26歳 兵庫
あらすじ
ルルタル星からやってきた宇宙人のミラ。特殊部隊の隊員でもある彼女は、王命を受けて地球人を滅ぼすべく人間社会に潜入中である。人類を滅亡させることについて大した感情を持っていないミラだったが、潜入中に偶然知り合った高校生・道長と関わっていくうちに、彼女自身の中に大きな迷いが生まれてしまいー。
GOOD POINT
設定を自然に描きながら、ストーリーの流れを予感させる導入が上手い。キャラデザはとても可愛く表情も豊かで、それだけでも楽しく読むことができた。細部まで描かれた原稿で、一見普通に思えるシーンも作中の雰囲気をよく醸し出すことができていた。
NEXT STEP
次回は物語の展開にもう一捻り加えてみてほしい。今回のお話の場合、道長の登場で読者の中である程度展開の予測がついてしまうので、何か一つハードルのある展開を設けられると良かった。また、線や表情の力強さで、派手な印象を足せるとさらに良い!
葦原大介 先生からのコメント

主人公(宇宙人)の能力が「地球人に擬態すること」なんですが、擬態したまま話が終わってしまうので、仲良くなった男の子に主人公の正体がバレそうになる(あるいはバレる)という展開は必要な気がしました。それがないなら「擬態」という設定がなくても話が成立してしまいそうなので。引きの構図がバランスよく入っていて、キャラの表情が自然で明るく、辛い境遇で育った主人公が恨みや憎しみに支配されずに前向きに生きているのが、個人的に読みやすくて良かったです。

佳作 賞金30万円
デスペレイトバスター43P
高瀬八朔 17歳 長野
あらすじ
高額日雇いバイトの求人につられ、連絡を取ったブラック会社員の一生。しかし、バイトの内容は人間を襲う「生骸」という怪物の駆除を行う、極めて危険な仕事だった…!?
GOOD POINT
力強い絵柄、アクションの格好良さを構図で表現していて素晴らしかった。キャラデザも魅力的で、登場人物の性格が表れるシーンで個性をつけようとしているのも良かった。
NEXT STEP
年齢を考えるとかなり高いレベル。バトル漫画を描く中でも、興味が持てるものが何なのか見つけてみよう。またなるべく幅広いキャラを登場させてみよう。描ける作品の幅も広がるはず!
葦原大介 先生からのコメント

後半現れる「擬態型の敵」が、すぐに擬態を解いてしまうのがもったいなく感じました。擬態した敵に主人公が奇襲されて、それをかばったヒロインがやられる、という流れのほうが、ベタですがピンチ展開の納得性が高いように思います。主人公の覚醒が、初回はダメで、2回目はいけたのはなぜか、理屈が欲しかった気もします。キャラの絵柄がシンプルで読みやすく、ヒロインのデザインもふつうにかわいいので、癖を抑えてこのまま進化していってほしいです。

佳作 賞金30万円
BiLLiE BBLACK36P
松元与輝 31歳 東京
あらすじ
魔女狩りの歴史が残る町セイラム。そこに暮らすビリィは祖母の言いつけを守り、他人と関わらず過ごしている。ビリィにはある能力があった。町には彼女を狙う影が…!?
GOOD POINT
キャラ、セリフ、設定、バトル、絵柄…と独特の世界観を演出することができている。特に今作はキャラを中心に展開していて、ストーリーにまとまりがあるのも良かった。
NEXT STEP
ストーリー上で乗り越える壁が何か、敵は一体どんな存在なのか設定して描けると、より物語のカタルシスを感じることができるようになる。作中の雰囲気を今風に洗練できるとなお良い。
葦原大介 先生からのコメント

絵にやや癖はあるものの、印象的な構図や、手触り感のある能力の表現など、作画にいい意味でのこだわりが感じられて良かったです。後半、主人公が魔女の能力を使って悪役を殺す、という場面が、作品トータルで見るとやや過剰な印象を受けたので、中盤悪役に殺されてしまう祖母のキャラをもっと印象的に描いたり、悪役にもっと「こいつを放っておくとやばい」と思えるエピソードを盛るなどして、読者が主人公の逆襲展開を気持ちよく読める工夫があるともっとよかったです。

審査員特別賞 賞金20万円
まだ間に合う!ふたりでできるドペ死対処法18P
キニハエキ 30歳 東京
あらすじ
街中で女性にナンパから助けてもらったマナ。しかし助けてくれた女性、みやびの顔は自分と全く同じで…!?ドッペルゲンガーに遭うと死ぬ迷信を信じるマナだったが…?
GOOD POINT
コメディ作品かと思いきや意外なオチが待っており、短編で面白く読むことができた。自然な会話の掛け合いを描きながらキャラを動かせていたのも素晴らしい点だった。
NEXT STEP
作品を読み手にどのように楽しんでほしいか、企画のコンセプトが明快になると良いと思う。細かい演技の描写が良いので、もう少し日常に即した題材でキャラを動かしてみると良いかも。
葦原大介 先生からのコメント

ムダな前置きがないのはいいことだと思うんですが、オカルト・伝承オタクとかじゃない限り、「自分と瓜二つの人間と出会う」→即「ドッペルゲンガーだ!」という発想にはならないように思うので、ドッペルゲンガーという本題に入るまでに、もう一手間かけてもよかったように思います。キャラの掛け合いにちゃんと性格が出ていてテンポがよく、ページ数の割に満足感があり、「ドッペルゲンガーって実は……」という流れもけっこう腑に落ちておもしろかったです。

編集部特別賞 賞金15万円
13階の神様50P
修 左刹 25歳 京都
あらすじ
無気力に生きる少年・慎は、父親の一存で大学の入学試験を受けることに。試験会場は13階と言われるが、13階への道が見つからない。怪しげな試験に困惑する慎だったが…。
GOOD POINT
縦横だけではなく奥行きを感じられる空間の描写で臨場感を感じた。作中で臨む試験の内容など、突飛な内容ながら普通ではないアイデアがあって読者を楽しませてくれる。
NEXT STEP
展開ではなくて、キャラを中心にストーリーを描いてみよう。キャラの抱えている事情を読者に説明しながら、個性を肉付けできるとより感情移入しやすくなるはず。次回作に期待したい。
葦原大介 先生からのコメント

小物や背景までしっかり描こうという意識があり、細かいイベントの密度が高く、展開を間延びさせない作りにサービス精神を感じました。しかし、作中のキャラと読み手のテンポに差があり、読者が情報を飲み込む前に主人公たちが先へ進んでしまうため、謎解きや展開に読者が参加できない印象もありました。読者と同じ速度で情報を処理する脇キャラを追加するなどして、用意したネタや展開が、読者にも飲み込みやすくなるように工夫してみましょう。

最終候補まであと一歩 賞金1万円
弾丸パラサイト48P
春夏四季 16歳 神奈川
GOOD POINT
キャラの絵が丁寧に描き込まれていたのがとても良かった。かなり突飛な行動をするものの、登場人物たちが生き生きとしていて、個性的に感じることができたのも良い点だった。
NEXT STEP
脈絡のない展開、話が連続してしまい、読者がついていけなくなってしまうのは勿体ない。まずは作品を読んだ読者が、どんな作品だと思って楽しもうとするか想定してみてほしい。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
見え透ける眼鏡46P
暗ノ吽 25歳 大阪
GOOD POINT
物語の導入で期待感を感じさせてくれた。予想外に暗い展開へと進むが、主人公の揺さぶられる感情の表現が面白く、不穏な様子が緊迫感とともにこちらに伝わってくるのが良かった。
NEXT STEP
たびたび挟まるコメディ的な描写がやや上滑りしている印象なのが勿体なかった。読者に対してキャラが置かれている状況の説明を適切にできると、より迫真に迫ることができるはず。