新人漫画賞SPARK 22年5月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

最終候補5作品中 佳作1本出る!!!!!
[総評]葦原大介先生

今回も楽しく審査させて頂きました。
マイナス点ばかり指摘していますが、原稿をきちんと完成させて最終候補に残っている時点で、「かなりえらい」と思うので、あまり気落ちせずがんばって下さい。
「最終候補」や「最終候補まであと一歩」で止まっている新人さんの中には「真剣に描いているのに、なかなか賞がもらえない」「賞をもらえる基準がわからない」という方もいるんじゃないかと思います。
募集要項に「佳作以上はSQ.本誌または増刊に掲載」とあるので、入賞(佳作以上)に選ばれる基準は「編集部が、この作品を雑誌に載せて大丈夫だと思えたかどうか」であると推測できます(私見)。これは言い換えれば、「この作品に値段をつけて売っても大丈夫かどうか」ということでもあるので、入賞を目指す新人さんは、「読者がお金を払ってでも読みたい作品とはどんなものなのか」「どうすれば自分の作品でお客さんからお金をとれるか」という、「プロの商品」としての作品作りを考えてみるといいんじゃないかと思います。
「最終候補」や「あと一歩」に残っている時点で、「作品を完成させる」という最初の壁は突破できていると思うので、もう一歩先の「作品を商品にする」という目標を攻略していきましょう。
ご応募ありがとうございました!

[総評]ジャンプSQ.編集部

最終候補に残った5作品全て、それぞれの作家自身が持つ魅力的な武器と強い個性を感じることができるものだった。一方で、共通して言えるのは「主人公がないがしろにされている」ということだ。将来的に連載するにあたり大事なのは主人公で、各々が思う「魅力的な主人公」とは何か考えて次の作品に取り組んでほしい。

SQ.orRISEに掲載決定!!
月間TOP 佳作 賞金30万円
祈 50P
M.A. 22歳 神奈川
あらすじ
2年振りに発売される小説家・東雲創一の新作を楽しみにしていた作井。無事に小説を手に入れた後、美大の課題をしながら寝落ちしてしまった彼女は、起き抜けに衝撃のニュースを目にしてしまう。
GOOD POINT
ふとした表情や背景から醸し出される、リアルさも兼ね備えた儚げな雰囲気がとても魅力的な作品だった。「死者を悼む」というテーマに集中して描かれており、情報も整理されているので読みやすい。全体的にはセリフ回しが上手く、そして印象に残るようなセリフを入れようとする、作家自身のこだわりを感じられたのも良かった。
NEXT STEP
「死者を悼む」というテーマならば、主人公と死者の双方向から内面の掘り下げができると、なお良かった。先生と作品に関する物語、主人公の内面と抱えている葛藤の描写など、見たいものが不足したまま終わってしまったのが勿体ない。読者が期待している展開とは一体何なのか、強く意識できるとさらにレベルアップできるはず。
葦原大介先生からのコメント

全体的に読みやすく、演出もシンプルながら目的がはっきりしていて良かったです。亡くなった作家の知人に話を聴きに行くパートは、元々主人公が作家に対して抱いていたイメージ以上の情報が出てこないので、取材前と取材後でなにも変わっていないのでは?と思ってしまいました。主人公と違う考えや価値観を持つ強キャラを置くと、主人公の独りよがりな話になりにくいのでおすすめです。

審査員特別賞 賞金20万円
遺産は吸血鬼でした 42P
倉本倖色 23歳 埼玉
あらすじ
富豪の父親の死後、莫大な遺産を相続することになった5歳の少女モミジ。彼女が受け継いだものの中には資産、権力のほかに彼女の血しか吸えない「吸血鬼」の姿があり…!?
GOOD POINT
文字通り「遺産は吸血鬼」というネタのインパクトの強さで、冒頭から読者を惹きつけた。ストレスなく読ませる展開の分かりやすさと、好感度の高いキャラと絵が強い武器。
NEXT STEP
展開が読み切れてしまうので、読者の想像を良い意味で裏切るような捻った展開がほしいところ。設定を詰めつつ、主人公をドラマの中で説得力を持って描くことを意識してみてほしい。
葦原大介先生からのコメント

主人公と女の子のコミュニケーションがほぼ成立していないため、会話シーンがキャラクターの描写に繋がっていなくてもったいない印象を持ちました。また、主人公が恩義を感じている「育ての親」のエピソードが、「それはどちらかというと恩より恨みが勝るのでは?」という内容だったため、主人公のがんばる理由にうまく感情移入できませんでした。線が綺麗で絵が見やすかったのは良かったです。

編集部特別賞 賞金15万円
御利益快速急行 55P
細川護仁 22歳 奈良
あらすじ
電車には様々な人が一緒に乗り合わせる。自殺を考える人、殺人を犯した人、夢と現実のギャップに悩む人、日々の生活に疲れた人。互いに交錯しながら、物語は進む…。
GOOD POINT
群像劇で始まり、やがてそれぞれの物語が繋がっていくという、投稿作品としては珍しい構成に挑戦し、描き切った。企みが読者に伝わる時点で、作者の高い力量を感じる。
NEXT STEP
繋ぎのシーンの演出が漫画表現としては話が飛んでいるように見えてしまい、分かりにくい。もっと画力と表現力、そしてそれぞれのキャラのことを考えられると、飛躍的な進化が望める。
葦原大介先生からのコメント

初読時は、特殊な演出に慣れるまで、ふつうに読み間違いをしてしまいました。おそらく意図的なミスリードではないと思うので、誤読を避ける工夫をしてみてください。作画が若干雑に見えるせいで特殊な演出法が悪目立ちしているように思えるので、画力を鍛えて全体のバランスをとってみてほしいです。なんだかんだほとんどのキャラが良いほうに変化しているので、個人的に読後感は良かったです。

最終候補 賞金10万円
GIFTERS 49P
細見壮一朗 19歳 京都
あらすじ
この世のあらゆる天才には神が宿り、神はやがて人間に牙を向ける。天才ピアニスト・五寸釘嗄に宿る神を回収しに来た万は、彼の内に巣食う神と対峙することになるが…。
GOOD POINT
静かに世界観を説明する冒頭から、キャラの感情が暴れ出す後半にかけて、しっかり盛り上がりを作れた。短くまとまったセンスのあるセリフ回しで読者を上手く乗せている。
NEXT STEP
物語におけるファンタジーの説明や、特に主人公の出自や能力など、状況を理解するために必要な情報が欠けていたのが惜しい。画力を含め、自分の作品を読む読者の存在を意識しよう。
葦原大介先生からのコメント

「天才に取り憑いた『神』を回収する仕事」の情報が足りないような印象を持ちました。「報酬は誰が払うのか?」「誰かに仕事を依頼されるのか?」「回収した『神』を再利用して利益を出すのか?」はっきりしたシステムでなくとも、「主人公たちがこの仕事に従事している事情」が、ある程度明示されたほうがいいように思いました。そこに主人公たちのキャラの手がかりがありそうだったので。

最終候補 賞金10万円
禁漁区のエルメィ 47P
尾堂太朗 20歳 埼玉
あらすじ
溺れたところを人魚に救われた十悟一。彼は父親が、辺りの海を「禁漁区」に制定したことを人魚たちに伝える。情報のお礼に、人魚たちから泳ぎを教わることになるが…。
GOOD POINT
人魚との交流の中で満たされていく主人公を中心にして、過去が明らかになっていく展開を丁寧に描けている。要素を絞りながら、物語を最後まで導いている点が上手い。
NEXT STEP
クライマックスで主人公が感情を出せるような決断を描けると、物語自体の意味を感じることができて、なお良かったはず。また、謎を回収しないまま終わってしまったのがとても惜しい。
葦原大介先生からのコメント

「人魚」という非現実的要素に対して、起きていることが小さすぎて、事件が「主人公が解決できる範囲」に抑えられてしまっているように感じました。また、「主人公の母親はなぜ行方不明になったのか?実際に母親失踪と人魚に関係はあるのか?」という、割と気になる謎に最後まで答えが出ないので、物語に消化不良な印象が残ってしまいました。謎で引っ張るなら最低限の答えが欲しいです。

最終候補まであと一歩の作品 賞金1万円
未練薬 49P
イトウ 23歳 鳥取
GOOD POINT
読みやすい物語構成の中で、主人公が抱える後悔を中心に、それを乗り越えるクライマックスを盛り上がりを作って描けていたのが良かった。
NEXT STEP
せっかく盛り上がった先にある結末が、読者にとって旨みの少ないものだったのが勿体ない。結局「妄想の世界の話に過ぎない」と読めてしまうので、読者の捉え方を少し気にしてみよう。
最終候補まであと一歩の作品 賞金1万円
チャイムと羊 31P
稲城千秋 25歳 埼玉
GOOD POINT
強い個性を感じる登場人物たちの会話を面白く見せることができていた。また主人公の魅力が発揮されるシーンを終盤に持って来れている。
NEXT STEP
ファンタジーの中で独自の社会構造を描いており読切題材として難しかった。読者が終盤の逼迫感を感じるためには、この世界にリアリティがないと厳しい。題材の選び方を考えてみよう。
最終候補まであと一歩の作品 賞金1万円
アネモネ 46P
高橋隼太 33歳 東京
GOOD POINT
主人公とヒロインの感情や関わり合いを、それぞれのバックボーンとともに丁寧に描こうとしている。全体の展開もテンポ良く進んでいる。
NEXT STEP
「空から物が降ってくる世界」という若干ありがちに感じてしまう設定に、その後の展開の中でも意外性を感じられなかったのが残念。またファンタジーの設定が少々分かりにくかった。