新人漫画賞SPARK 23年2月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

次回作への期待超絶高まる!!!!!審査員特別賞1本、編集部特別賞2本出る! !
[総評]近藤先生

キャラで見せる・ドラマで見せるという気概を持った作品が見て取れました。一方で、どちらか片方だけできているという状況だったので、両立できると良かったかなと思います。どの作品も説明しすぎないように注意を払う気遣いは見て取れましたが、必要な説明まで削ってしまっている部分が見て取れました。また、場面描写で作者の頭の中にはあるものの、読者に客観的に説明できてない部分も見て取れたので、作文と同じく「誰が」「いつ」「どこで」「どういう理由や気持ち(動機・因果)で」「何をし」「結果どうなったか(何を得たのか・失ったのか・人間関係や状況・情勢に変化があったのか)」を描けているか、プロット段階でチェックすると良いかと思います。少しの変化でもっとよくなると感じる作品ばかりだったので、今後も頑張ってください。

[総評]ジャンプSQ.編集部

まだまだ伸びしろを感じる作品が多く最終候補に残った回だった。ジャンルはバラバラだったが、それぞれの課題は共通していて「キャラクターが弱い」、「設定に既視感を感じる」といった感想が多かったと思う。特に突飛なものを描く必要はないが、自分しか描けない人物・世界を貪欲に追及する気持ちは忘れずに持とう。

月間TOP 審査員特別賞 賞金20万円
泣血35P
温琉19歳 大阪
あらすじ
若くして修道女として奉仕し、町の人々から好かれていたリサ。平穏な彼女の日常は、突如修道院を襲う異形の存在によって終わりを告げる。まるで病が感染するかのように、次々と変わり果てていく人々。逃げようとするも襲われるリサをかろうじて救ったのは、拳銃を手に、自らを「ミゼル」と名乗る一人の女性だった。
GOOD POINT
迫力のある絵力と、美意識高く細部までこだわりのある描き込みが作品の雰囲気を巧みに描きだしていた。キャラデザであったりクリーチャーのデザインにセンスを感じる。また、ミゼルが登場してからの演出をカッコ良く描けているのも加点ポイントだった。
NEXT STEP
描かれている情報やエピソードが少ないため、現状だと雰囲気だけになってしまっているのが残念。特に前半、主人公が全く出てこないので、主人公を中心としたキャラクターを魅せる物語作りを意識して身につけてほしい。次の作品に大いに期待したい…! !
近藤先生からのコメント

人物の顔など部分的な画力は高いと思います。一見して誰と誰がどこで何をしているか分かる構図にしたり、人物全身のデッサンを安定させる事、背景など細部にも力を入れる事に気を付けると作品の質が上がるでしょう。脚本に関しては主人公の技能だけでなく性格的な魅力を見せる事に尺を使い、見せ場ではない部分はあっさりモノローグなどで片付ける…など調整を効かせると同じページ数でも面白さの密度が上がると思います。年齢的に今後に期待します。

編集部特別賞 賞金15万円
しかばね君と部長37P
シバ兄弟32歳 徳島
あらすじ
「美術部の鬼部長」こと私のおつかいの途中で死んだ部員の鹿羽根君。作品の完成途中だった彼は、死後幽霊として美術部に現れた。そんな彼に私は成仏してほしくなくて…。
GOOD POINT
「美術部の幽霊部員」という企画を上手く消化しながら、コメディとして完成度高く仕上げた。とても読みやすく、ストレス無く最後まで読むことができたのも良かった。
NEXT STEP
主人公の部長と鹿羽根君の関係性をずっと見ていたいと思えるくらいの二人の魅力、可愛さがほしかったが少々パワー不足だった。何か一点突破できるキャラの魅力を考えてみてほしい。
近藤先生からのコメント

画面全体のにぎやかさのバランスがあり、キャラを見せる事を中心に話が組めていました。ラブコメや女の子の可愛さが大切になる作品では、線の丁寧さ・人物デッサンの安定性が大事なので重点的に強化するとより魅力的になると思います。メインストーリー的なところも大切ですが、ラブコメ的なドキドキしたり笑えるエピソードの配分を増やした方が商業的に受けると考えられるので、メインストーリーとコメディの配分比率の調整をしていくと良いでしょう。

編集部特別賞 賞金15万円
砂漠の救け55P
林テトラ22歳 京都
あらすじ
荒廃し砂漠が一面を覆うこの国に、唯一桜が咲くシェルターがあるという話を聞いて旅をしていたラへレ。彼は大型生物に襲われているところを、一人の男性に救われる。
GOOD POINT
ラへレとおじさん、二人のキャラを中心にドラマを展開できていた。物語後半の盛り上がりを意識しつつ、まっすぐで好感の持てるストーリーを最後まで描き切っている。
NEXT STEP
アクションの構図が分かりづらく迫力不足だった。全体的には絵柄が固く、デザインに古さを感じるのが惜しい。ネームにセンスを感じるが、さらにキャラで押し進める話が描けると◎。
近藤先生からのコメント

絵柄や構図など画面のにぎやかさは全体的にまとまっていると思いました。若干画風が90年代っぽいのでアップデートの必要性は感じます。絵で状況をわかりやすく見せるというのは今回の投稿作では一番できている印象です。話もまとまっていました。大きい虫が闊歩する世界観…というのは、1~2行で明文化したほうが読者に親切かと思います。脚本的にマイナスは少ないのですが、プラスもやや乏しいので、キャラや設定の独自性を発案できるとより良くなると思います。

最終候補 賞金10万円
改造人間44号44P
荒木麻弥21歳 茨城
あらすじ
悪の科学者の手で創られ、十年前に破壊事件を起こしてから、発見され次第処刑されている「改造人間」。教員の若林は自身が改造人間であることを隠していたが、生徒たちにバレて…!?
GOOD POINT
物語や各キャラクターが、主人公を立てるために機能している点で無駄がない。登場人物の好感度も低くなく、やさしい世界を描けていたのが良かった。描線はやや淡白だが読みやすい。
NEXT STEP
肝心の主人公のキャラクターの作り込みが甘いので、言動にツッコミどころが多い。同じく説得力にやや欠けるような設定・シーンが目立ったので、作中で描いていないような細かい部分も考えてみよう。
近藤先生からのコメント

キャラクターを見せ活躍を描く…という少年漫画の基本はできていたと思います。状況が絵で伝わりにくいので、わかりやすい構図をインプットするとよりよくなるでしょう。脚本的には改造人間の発覚の仕方・つい改造人間としてのスペックを発揮してしまうシーンなど、「バレないように隠してきた人の行動だろうか?」と説得力に欠ける点が散見されたので、見せ方・シーンの状況を工夫し、読者が納得するか? を常に気を付けつつ、一つ一つのエピソードを練ると作品の質が上がるかと思います。

最終候補 賞金10万円
テセウスの友人24P
おおあめ録20歳 大阪
あらすじ
下校の途中で雷に打たれたメグ。意識を取り戻すと、なんと今までと真逆の性格になってしまった。親友のしずくは、彼女を元の性格に戻すために、しばらく一緒に学校生活を送るが…。
GOOD POINT
可愛いキャラデザで、様々な表情を描けているところにセンスを感じた。よくある設定の物語ではあるが、導入も分かりやすく、作家が描こうとしているテーマも理解することができた。
NEXT STEP
今回は短いページ数の作品なので、二人のキャラや関係性が掴みづらく、シンプルなはずの目的・動機にいまひとつ入り込めなかった。長い物語の中で、分かりやすいキャラの感情を描いてみてほしい。
近藤先生からのコメント

作者の伝えたい事はドラマを通して伝えられていたと思いました。誰がどこにいて何しているかをシーン毎に絵で伝えられると、より状況が分かりやすくなるかと思います。具体的には足を踏み外すシーンは事前に背景で場所を伝えた方がわかりやすかったと思いました。絵柄はかわいいので、細部まで画風に合わせた丁寧さを心がけるとより魅力的になるかと思います。尖ったキャラは嫌われるリスクもありますが、弱点やかわいらしい一面もセットにすると好印象を与えられるので、二面性の設定をお勧めします。

最終候補まであと一歩 賞金1万円
【ショート部門】壁屋さんが見てくる12P
勝又らぎょー21歳 静岡
GOOD POINT
気になる女の子が自分のことをじっと見てくるのでドキドキする、というコンセプトはストレートなもので分かりやすい。テンポよく短いページ数でまとめられているのも良かった。
NEXT STEP
壁屋さんの主人公に対するアプローチが「見てくる」だけに終始してしまったのでドキドキ感が物足りない。主人公(=読者)が壁屋さんのことが気になってしまうのは一体どこなのか、魅力を在処を考えてみよう。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
Who are 幽?50P
塩野屋ごり21歳 千葉
GOOD POINT
ぶっきらぼうだが情に厚い主人公の魅力を中心に物語を描こうとしていた。若干分かりにくさにも繋がっているが、場面の切り替わりが多いのでテンポよく物語を展開させている。
NEXT STEP
全体的に企画、つまり誰の何のための物語なのかが伝わってこなかった。また予知や身体の入れ替わりなどの展開が出てくるが、特に中盤以降、今どうなっているのか状況が分かりにくい部分が多くあるのが残念。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
未来は僕等の手の中55P
牾寄ろうち27歳 岐阜
GOOD POINT
死後天使になった主人公が別のキャラの人生を観測するという非常にトリッキーな構成で、ラストまでまとめ上げた。全体的に描き込みも妥協なく、演出も物語の雰囲気を表現できている。
NEXT STEP
主人公の感情がかなり読者から遠く、また一貫して主張が続くので、やや説教くさくなってしまっている。特に人物の絵柄が不安定なので、作画を安定させつつ読者の好感度が高いキャラデザを模索してみてほしい。
最終候補まであと一歩 賞金1万円
オレと虫と42P
川上貫太郎27歳 大阪
GOOD POINT
輪廻の狭間にある幻のような世界を、細かな描き込みを駆使して雰囲気が伝わるように描けていた。演出やキャラのセリフで終盤に向けてしっかりと盛り上がりを作れていたのも良い。
NEXT STEP
お話のテーマとなるものが序盤と終盤で微妙にズレているのが惜しかった。また主人公の感情は読者が読んだときに遠くに感じるものだったので、次はもう少し読者にとって身近な感情を描くといいかもしれない。