新人漫画賞SPARK 25年2月期 結果発表

新人漫画賞 SPARK 結果発表

RISE新人漫画賞 結果発表

さらなる飛躍に期待!審査員特別賞1本 編集部特別賞1本出る!
[総評]近藤憲一 先生

ほとんどの方が40ページ超の長尺をクオリティを落とさず描き切っていて感心しました。また、いずれの作品も作画のレベルが高かったように思います。脚本については淡々とした作品が多く、削っても問題ないセリフが散見されたりなどが少し気になりました。商品としてお店に並ぶ漫画には、短く・内容を濃く…という難しい作業を技術的に求められるので、「脚本」について今以上により深く勉強される事をお勧めします。また、各々個性的な作品ではあったものの、パンチが強すぎる作品は少ない印象でした。「どういう話?」と聞かれて二言三言で説明でき、かつ「何それ面白そう」という反応をもらえる『あらすじ』を考えられるよう頑張ってください。「企画力」がそれに該当します。読む前から(面白そうだぞ…)と感じさせる事はとても重要です。本屋さんでジャケ買いしてもらえる確率が上がりますので、そういうところから気を使って、各々の持ち味を生かして漫画制作に励んでいただければと思います。今後を楽しみにしています。

[総評]ジャンプSQ.編集部

描きたいことは明確な作品が多く集まった点が非常に良かった。残念ながら佳作デビューが出ない回となったが、それは技術的に追いついていない部分と、「読者にどう楽しんでもらうか」という考えが足りていない部分の二つをいずれの作品でも感じたからだ。自分が面白いと思うものを伝えるための工夫を考えてみてほしい。

月間TOP 審査員特別賞 賞金20万円
君以外のプランがない33P
鈴間 隼27歳 神奈川
あらすじ
戦後復興の立役者となった天才研究者・白枝理人は、完全自律型の人間機械「タスク」を開発した。企業は新技術として目をつけ、サンプルとして提供を要求するも、ただ寂しさから友達を作りたいという一心でタスクを開発した理人にとって、到底受け入れることができなかった。理人はタスクと企業から逃亡を図るが…?
GOOD POINT
社会性のない主人公として理人のキャラが立っている。彼にとって大切なものが明確なので、理人とタスクの二人の関係性を描きたいという作家の意図が強く感じることができたのが良かった。設定が複雑になりがちなSFで、簡潔に説明できていたのも良い。
NEXT STEP
二人の関係性に興味がない読者が楽しみづらいのが勿体ないと感じた。さらに多くの読者が楽しむためには、誰の視点で、どんな目的で物語が進んでいくのかを分かりやすく示すことができると、より読み手が感情移入でき、物語に没入できるようになるはず。
近藤憲一先生からのコメント

面白いです。キャラで見せる事・世界観を見せる事・ページを短くまとめ、無駄をそぐ事を同時にやれているので非常に好印象です。絵がきれいですが、構図的に状況がわかりにくい部分などがあったので、そこは課題かと思います。女性向け色が(抑えてるようには感じますが)まだ少し強いので、作品のとがった部分を削らない範囲で、もう少し薄めた方が一般商業誌としてはよさそうに思います。とはいえ面白く読めたので頭の隅に置く程度で良いかと。各評も平均的に高くどこを一番評価すべきか迷いました。この調子でまんべんなくレベルを上げつつ、商業誌で多くの人に読んでもらうには…という視点を持ち、次回作以降も頑張ってください。期待しています。

編集部特別賞 賞金15万円
魔女の子46P
Kwon Soyoung27歳 韓国
あらすじ
魔女の身体が埋められた大森林には多くの魔物が発生し、立ち入ることが出来ない。魔物に捕まった娘を助けるため、男は「魔女殺し」とともに森の中へと入っていくが…?
GOOD POINT
画力、センスともに優れていて即戦力級。全体的にレベルが高いのだが、特に大ゴマで絵を見せる場面は単体でとても魅力的で、今後強い武器になると感じることができた。
NEXT STEP
物語をしっかりと伝えるという意識が持てると良い。今作だと魔女殺しが戦っている目的、物語の舞台となる大森林に潜む魔女の目的など、設定を簡潔に描くと読者が楽しみやすくなる。
近藤憲一先生からのコメント

絵が独創的で武器だと思いました。上手さもあります。キャラを見せることをメインに話作りができていた事も高評価です。ただ、序盤から盛り上がりの波の高低が乏しいので、2~4ページごとに面白い部分を作り、つなげていく…という事を意識するとより良くなると思います。また、重箱の隅をつつくポイントかもしれませんが、ところどころ左から右のフキダシ(またはコマ)に読ませる部分が散見されたので、右から左に読ませる順番を意識する方が読みやすさも上がるかと思います。とはいえ、ここまで描けるのは素晴らしいことなので、この調子で画力と脚本技術を伸ばしながら、いい漫画を生み出していってください。応援しています。

最終候補 賞金10万円
籠の鳥の少女55P
太田和希30歳 北海道
あらすじ
希望もなく一人で生きる少年・ウィルはトロールの少女・キアラに攫われる。母への供物として人を攫っていたキアラだが、境遇が近く、また誠実なウィルに心惹かれて…?
GOOD POINT
ウィルとキアラ、二人の境遇と感情をストレートにしっかり描かれていた。キャラの好感度が上がるシーンも描けているので、この二人の関係性の進展に興味を持てたのが良い。
NEXT STEP
物語の中で描かなければならない要素を絞れるとなお良かった。読者は二人が互いに抱く気持ちを解放していく展開に期待しているので、後半にカタルシスがあるとより満足できるはず。
近藤憲一先生からのコメント

絵柄やデザイン・世界観の独創性があって良いですね。デッサン力と仕上げの丁寧さをこのままさらにのばすと、強い武器になるかと思います。少し粗い絵柄ではあるもの、55ページをしっかり描き通した事は素晴らしいです。最後の方はバトルで盛り上げられており、そこは評価点でした。ただ、最初の方でミステリー・サスペンス、異種間恋愛ドラマ…と描写が移ったことで、どういうジャンルの漫画なのか統一性が持てず、(漫画が変わった…)という印象を後半で持たれてしまう懸念があるのが惜しい点だと思いました。ちょっとした事かもしれませんが、ジャンルを統一する意識で描く方が読み手に取って易しい物語になるかと思います。作風は良いのでぜひ挑戦してみてください。

最終候補 賞金10万円
ハロー、マーマレード49P
門田もん31歳 愛知
あらすじ
優秀だった姉の死後、姉の夢を叶えることを周囲から期待された柚李は、朝食中にマーマレードの精「マレイ」に出会う。彼女は柚李の願いを叶えるために現れたそうで…?
GOOD POINT
オーソドックスな物語をきちんと描き切り、終始主人公を話の中心にして描くことができていた。キャラデザの魅力が高く特にマレイのデザインが凝っていて印象に残る。
NEXT STEP
柚李の周りのキャラに共感できるポイントがほしい。柚李が置かれた辛い状況を描くための装置ではなく、その行動に説得力があると、さらにリアルな人間ドラマとして読めるようになる。
近藤憲一先生からのコメント

作画的には、デッサンは良い感じですがペン入れや仕上げがやや粗いので、もう少しきれいにしたほうが作風に合うかと思います。絵とセリフを組み合わせた感情描写ができていて好感触でした。主人公周りの境遇や人間関係などドラマを構成する部分ができていてこれも高評価です。一方、キャラの魅力はストーリーの都合上、主人公が優秀な姉の代わりを演じていたという事もあり濃い性格にしにくかった部分はあるかと思いますが、薄く感じてしまいました。ドラマとキャラ起てを両立することが課題かと思います。技術的にバランスが取れているので、まんべんなく向上させつつ、「どんな特徴的なキャラが」「何をしたか(成したか)」という部分を読者の予想を越えられる設定がつけられると、キャラの輝くより良い作品になるかと思います。

最終候補 賞金10万円
離忘館の魔女55P
カルベ22歳 埼玉
あらすじ
深い森の孤児院「離忘館」に移ったカイア。彼女はそこで離れ離れになってしまった姉のエリによく似た人物と出会う。どこか違和感のある離忘館には隠された秘密があり…。
GOOD POINT
離忘館の謎には突飛ながらもアイデアが込められていて、読者の興味を持続させることができていた。館の内観が丁寧に描かれていて、不穏な雰囲気をよく表現している。
NEXT STEP
もう少しページ数に対して描けることがあった印象。ミステリー的に楽しませるなら舞台設定のそもそもの目的を、ドラマとして楽しませるならキャラの内面を深掘りできるとさらに良い。
近藤憲一先生からのコメント

長いページ数を作画と密度の崩れなく安定して描き切った点は高印象です。やや粗くはありますが、物語に引き込むサスペンスの力も感じます。ただ、もう少し各エピソードを端的に表現できないか模索する余地はあるかと思いました。複数のフキダシのセリフを一つで済ませられる部分など、情報密度を詰められる部分がちらほらありました。短く話の密度を濃くするとより良くなるかと思います。基本的な話作りはできているので、次作はキャラの活躍や、あらすじを説明して(読んでみよう)と思わせられる企画力のある作品を意識してみてください。きっと商業誌としての在り方に近づくと思います。年齢的にも伸びしろはたくさんあると思いますので、ぜひ頑張ってください。

最終候補まであと一歩 賞金1万円
ゴッドギア36P
星村定25歳 埼玉
GOOD POINT
キャラクターの感情や事情に寄り添いながら物語を丁寧に展開しようとする意識を感じられた。よくある構成ながら、後半のバトルにもしっかりとページ数を割いて、アクションシーンを描いていたことも良かった。
NEXT STEP
物語の根幹となる重要な設定の「ゴッドギア」、そして「発掘屋」にもう少しオリジナリティがほしい。どんな特徴・脅威があって、なぜ人々はそれを狙っているのか、沢山アイデアを出してより具体的にしてみよう。